自衛隊が国の軍隊になって何が悪いのか

今回のお話は小林節先生の指摘から考えたい。

小林先生が「警察、消防、海上保安庁などの役所の名前が憲法には出てこないのに自衛隊を憲法に書き込むのはおかしい」という趣旨の発言をされたというツイートを見かけた。しかし、文章は「自衛隊を国軍にしたら大変なことになる」と結ばれており、おやおやと思った。

面白いことに出典元がない記事が多い。検索してみるとどうやら出典は赤旗らしいのだがどうもはっきりしない。共産党の人たちは自分たちが嫌われていることを知っているのだろう。それで出典を隠したかったのかもしれない。いずれにせよ共産党支持の読者層には受けそうな発言なので、それなりの合理性はあるのだが「国軍」を作るのがどうして悪いことなのだろうかと思った。

確かに、憲法解釈に矛盾があるからといっていちいちいろいろな役所を書き出していてはキリがない。だから自衛隊を憲法に書くのではなく条文を見直して明確に合憲であるとするか、あるいは軍隊的な組織をなくしてしまえばよいということになる。

海上保安庁などに問題がないのに自衛隊が問題になるのは、日本国憲法を作る時に日本が独自で軍隊を持つことが想定されていなかったからだろう。だが、軍隊がなくても国が成り立つという意味合いではなく、集団的な体制で敗戦国を監視するという意味合いが強かったのではないだろうか。例えばドイツはヨーロッパの軍事組織に組み込まれており、独自展開はできなくなっているはずである。

日本は当時このような集団的自衛体制がなく、アメリカは関係当事国(フィリピン、大韓民国、日本、オーストラリア・ニュージーランドなど)とそれぞれ防衛の枠組みを作った。記憶によるとオーストラリアは日米豪の同盟に反対したというような話があり、のちに核武装に関する意見の違いからニュージーランドが日米豪ニの枠組みから離脱し、アメリカをハブとしてそれぞれの国が防衛体制を作るというスキームが定着した。

赤旗の読者の方には申し訳ないのだが自衛隊は国軍化すべきだと思う。「お前も戦争がしたいのか」という人もいるかもしれないが、実際は逆である。

前回書いたように日本は北朝鮮と戦争をしたがっているようだ。主語を日本としたが実際に戦争を従っているのは安倍首相とその仲間たちとするべきかもしれない。安倍首相にはアメリカのような強い国が後ろ盾にあれば必ず北朝鮮に勝てるはずだという見込みがあり、「先制攻撃した方が有利である」と考えているようだ。これがさほど騒ぎにならないのは「その通りだな」と思っている人が多く、手を汚すのはアメリカ軍だという認識が日本人の中にあるからだろう。

高度経済成長期にウルトラマンを見たことがある人は知っていると思うのだが、この状態はウルトラマンが来て解決してくれるから我々は何もしなくてよいと科学特捜隊が考えるのに似ている。科学特捜隊の時代にはまだ戦争の記憶があり「本当にそれでよいのか」という悩みが度々語られ、最後はウルトラマンが地球を離脱することで「これからは科学特捜隊が地球を守る」という決意が語られる。しかし、現在の科学特捜隊はそのことを忘れてしまったようだ。怪獣はウルトラマンがなんとかしてくれるから我々は何もしなくて良いのだという楽観的な見込みがある一方で「ウルトラマンが光の国に帰ってしまったらどうしよう」という不安を抱えている。

とても皮肉なことなのだが「軍隊を持たない」ということは気の持ちようによって全く逆の二つのマインドセットを生み出す。軍隊がないから外交によってなんとかするしかないと必死になる人たちもいれば、他の国が全部面倒を見てくれるから自分たちは無責任に状況を煽って良いと考える人が出てくる。実は安倍政権というのは平和憲法が生み出した化け物のような存在なのかもしれない。だが、首相の言動を容認したり賛同したりする人が多いところを見ると、安倍首相が特殊というわけではなさそうだ。

加えて沖縄の問題もある。アメリカ軍のヘリコプターが沖縄に墜落しても我々が罪悪感を感じないのは「所詮アメリカのヘリコプターなのだから沖縄とアメリカがなんとかやりとりをすればよいのだ」と思っているからだ。つまりアメリカというブラックボックスを間に挟むことで責任を回避することができる。これも実は平和憲法が生み出した無責任なマインドセットと言えるだろう。

その意味では安倍首相は非常に良い役割を果たしている。憲法改正の機運を作っただけでなく、悪い見本として「日本が今軍隊を持ったら大変なことになる」ということを教えてくれているのだ。多分、安倍首相が軍隊を手渡されたら無責任に状況を煽り<事実>をでっち上げ、交渉の結果を国民に知らせないで戦争に突入するだろう。こうした無責任極まりない首相が今後出てこないとは限らない。

このことから、自衛隊を国軍として位置付けた上で、行政にチェックさせる仕組みを作るのはもちろんのこと、立法府が判断して「その都度予算調達する」仕組みを作り、執行についても定期的に監査しなければならない。そして、記録がない場合には(数の上でどんなに有利であっても)予算の執行を即時停止するくらいの強い権限を国会に与えなければならないということになる。つまり、野党が強力に監視する体制を作らない限り、自衛隊であろうが国軍であろうが極めて危険だということになる。

確かに理論上は不要不急の問題も出てくるはずなので、首相に強い権限を持たせた方がよさそうに思える。強力な議会が不利に働くことも出てくるだろう。しかし、今の制度とマインドセットだと何の準備もなく「先制攻撃した方が有利だ」などと考える首相が「相手に手の内がばれると困るので」というめちゃくちゃな理由で国会に何も告げずに開戦してしまう可能性が強い。国会でも度々「事後承諾でも構わないわけですが」と思い出したように答弁することが多い。安倍首相は「可能性としてできる」ということと「やっても良い」という区別がついていないようなので、極めて危険性が高く、後に続く首相のマインドも保障できない。

憲法を改正するとしたら、自衛隊を国軍化した上で国会の権限を強めるべきだということになるだろう。

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