日本を理不尽にいじめて内政の矛盾を隠蔽しようとするアメリカ

トランプ大統領が安倍首相と面会した。アメリカのメディアの論調は「北朝鮮問題で安倍首相が顔を潰されまいとアメリカにご挨拶にいった」というようなものになっている。驚くべきことは日本での数々のスキャンダルが冷静に伝わっていることだ。日本のメディアのような忖度がないのでその書きぶりにも容赦がない。

焦点は北朝鮮問題であって日本はその中のサブキャラの位置付けであり、落ち目の先進国と受け止められている。さらにニヤニヤと笑っている安倍首相とそっぽを向くトランプ大統領の写真を使ったメディアもあり「長年アメリカを利用してきたこずるい日本」というステレオタイプも見られる。メデイアの論調は昔ながらのSly JapanかJapan Passingだ。さらにトランプ大統領はゴルフを断る安倍首相をしつこくゴルフに誘ったらしい。これもたんに休みたかったというような話ではなく自分のゴルフ場の宣伝に使いたかったからのようである。ゴルフ場の中でだけ作り笑顔を浮かべていたそうだ。ここまで露骨に安倍首相の外交の失敗がわかるのは逆に珍しいのではないかとすら思えるほど見事な外交敗北だった。

しかし、今回の話は落ち目の安倍首相に関する話ではない。トランプ大統領がなぜ貿易収支の問題に熱心になるのかがよくわからないので考えてみることにしたという話である。結論としてはアメリカというのはNTTや国鉄などの独占企業だというものになった。ではアメリカは何を独占的に提供しているのかということになる。

まず、アメリカ人に聞いてみたのだが今の状態が持続可能だと思っている人は少ないのかもしれないと思った。アメリカは外国からお金を借りて国債を発行しそれをドルに変えて経済収支を成り立たせているという理解があるようだ。確かに、政府の借金は問題視されているようだが、トランプ大統領が全体のサステナビリティを問題にしているようにも思えない。トランプ大統領はそんな「ちまちましたこと」には興味がない。

アメリカ全体で見ると、アメリカは貿易収支にこだわる必要はない。ドルは国際決済通貨なので、アメリカの経済に必要なドルに加えて国際的な決済に必要なドルの分の需要があり、大量のお金を発行してもインフレに結びつく可能性は低い。基軸通貨としての恩恵がある。だから財政的にも実は余裕がある。単にキャップがあるからこれ以上謝金ができないだけである。

確かに貿易では赤字なのだがそれ以外のところでお金が調達できている。基軸通貨の恩恵に加えて、アメリカ人は金利の安いドルを借りて金利の高い投資をすることで経常収支を黒字にできるとのことだ。だから必ずしも貿易にこだわる必要もない。利子で食べて行ける国だしそれでも足りなければ政府が借金して国民にばら撒けばよいのである。

つまり総和ではバランスが取れているわけで、貿易戦争が起こるようなリスクをとって貿易赤字の解消にこだわる必要はないはずだ。

ただこれはアメリカ全体の話である。実は庶民の暮らしは貧しくなっているらしい。東洋経済のこの記事ではその理由を次のように説明している。

アメリカでは原油と食料の価格が値上がりしているのだが、日用品や機械などの価格は値上がりしていないそうだ。つまりデフレとインフレが同時に進んだような状態になっていることになる。生活に必要な物資は値上がりしているのにものを作って売るような人たちは儲けられないという状態になっていることになる。以前からこうだったようだが、住宅の転売価格まで借金ができるという独特の仕組みがあった。だから、住宅価格が値上がりしている間は経済不調が露呈することはなかった。住宅バブルが崩壊した結果、この窮乏が顕在化してきているという。だから中間層の不満を解消するために政治家は何かしなければならないという圧力が働く。

インフレが起こるのは、金融セクターなど一部が富を吸い上げているからだ。中間層に所得が回らなくなっている。だがトランプ政権としては金融セクターは敵に回したくないし、法人税なども下げたい。そこで、日本を仮想敵にして「君たちの生活が貧しいのは日本や中国のせいだ」と言っている。構造としては中国や韓国を名指しして「反日勢力が日本をダメにする」と叫んでいる日本とそう変わらない。日本では国内的に騒ぐだけだが、アメリカは実際に貿易戦争のリスクを取ってでも実行に移そうとしている。

だが、トランプ大統領には総合的な戦略はないようだ。手の内のバラバラのカードが別のディールに見えているのだろう。貿易の問題では貿易ゲームを有利に勝ち進めようとしており、別のゲームではまたそれぞれの戦略を考えている。これは面倒なことを考えず目の前のお金儲けのことだけを考えるビジネスマンとしては合理的な態度だといえる。常に相手を利用できないかと考えており「安倍首相=ゴルフ場の宣伝」だと思ったのだろう。日本のメディアは自分たちが利用されているとは考えたくないので「トランプ大統領は重要な話は親密なところでしかやりたがらないのだ」と解釈しているということになる。

さらにトランプ大統領が持っている世界観はかなり古びている。日米の貿易不均衡の理由を日本の閉鎖性のせいだと思っているようだが、これは1980年代の見立てである。日本がアメリカの言う通りに市場を解放したからといってアメリカの鉄鋼や車が売れるようにはならないだろうし、そもそも日本市場は縮小している。軽自動車をなくしたら日本の市場は混乱するだろうが、かといって馬鹿でかいアメ車を買おうという気にはならないだろう。だが、日本が抵抗を続ける限りアメリカは納得しないのかもしれない。アメリカ人にはそういうところがある。だが構うことはない。トランプ大統領はそれぞれの件を別物と考えているからだ。多分担当者がクビになって終わるだけである。そして相手との交渉は続けなければならないので「一つ断ったら全ての関係が悪くなる」ということはない。

いずれにせよ相手がこのように単純明快な思考を持っていると考えると、トランプ大統領が理解がしやすくなる。トランプ大統領の得体がしれないのは「何を考えているのかよくわからない」からだ。そこでなんだか不気味に思えてしまうわけだが、過去に得た知見をもとに目の前のディールに集中している人なのだということがわかれば、怖さは幾分薄れる。トランプ大統領がわからないと思うのは、日本がアメリカに見放されているという事実に直面したくないからだろう。色々な解釈をしているうちに頭が混乱してしまうのではないだろうか。

今、問題なのはトランプ大統領が「アメリカの軍事力は売り物になる」ということを理解してしまったということだろう。シリアなどの泥沼化した地域では単にコストがかさむだけなので撤退したがっているが、日本の駐留費用は日本がほとんど持ってくれる上にたいした事件も起こらない。複雑な問題のない沖縄の基地などはリゾート扱いだ。にもかかわらず基地があるおかげで日本と韓国はアメリカに依存せざるをえない。韓国との間には不平等なFTAが結べた。次は日本だというわけである。

日本人は軍事的に自立するつもりはないようなのでアメリカは独占的地位にいるということになる。つまりアメリカは東京電力とかNTTと同じような立場で日本に軍事力という「安全」を提供する企業の位置付けなのだ。日本人ならある程度サステイナビリティを考慮して出過ぎないようにするだろうが、アメリカ人のビジネスマンは独占的な地位があるのならそれをできるだけ高く売ろうとするはずである。それが株主への貢献だからだ。さらに、アメリカの白人有権者はアジア人を一等下に見ている。だから不利に扱ってもそれほど非難はされないだろう。色々な意味で日本はおあつらえ向きのカモになっているのではないだろうか。

安倍政権は国内の失点を海外で解消しようとしていることは誰の目にも明らかなので、自信を有能なビジネスマンだと信じているトランプ大統領がこのビジネスチャンスを逃すはずはない。日本はトランプ大統領を変えることはできない。我々にできるのはまずは危ないメンタリティを持っている安倍首相の首をすげ替えることだけだろう。

実際にアメリカ人有権者の富を奪っているのはアメリカの高額所得者である。しかし、彼らを敵にするのは得策ではないので人種が違っていて潜在的な蔑視感情がある中国や日本を標的にしているのだろう。実に厄介な時代に突入した。しかし、一番厄介なのは日本がこのことに気がついていないということなのかもしれない。

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