カジノ法案は日本をギャンブル依存大国にするのか

安倍首相が「災害対応もやらないでカジノ法案にうつつを抜かしている」という情報があったので、参議院の内閣委員会の議論を一部聞いてみた。聞いたのは和田政宗参議院議員の質問で、答弁しているのは官僚のようだった。普段のツイッターでの言動に比べると真面目なトーンだったのが少し意外だった。Twitterでも実は忠実に原稿を読んでいるだけなのかもしないとさえ思った。

和田議員は「カジノなしでも構わないという声があるのですが、なぜカジノが必要なのか」と質問した。だが、官僚からは「そのような声があることは承知しているが政府としてはカジノありでの審議をお願いしている」というわけのわからない答えが返ってきた。さらに「日本のIRにはどのような優位性があるのか」と質問したところ次のような意味の答弁があった。

シンガポールなどと違い日本には素晴らしい観光資源があるのでこれとカジノを組み合わせると優位性があると思う。

和田議員はしきりに「IRを成功させるためには、政府のトップなどがきちんと宣伝したほうがよいのではないか」などと聞いていたのだが、それについては明確な対応はなかった。つまり、官僚はカジノが成功するのかにはあまり興味がないように聞こえたのである。

これはある意味当然だ。カジノはもともと地方の要望である。自民党は財政事情が厳しいためにあまり地方にばらまけない。そこでカジノを解禁することでバラマキを行おうとしているのだろう。カジノは規制改革だけで誘致できる上に場所を選ばないからだ。砂漠のど真ん中にあるラスベガスには大きな観光地はないが多くの人が集まってくる。同じような期待をしている地域は多いのではないかと思われる。と、いうより他に思いつかないのだろう。

監督権益といういみでも官僚には「他人事」だ。国内の企業であれば監督と引き換えに天下り人材を引き受けてもらうなどの旨味があるが、外国企業だとそうも行かないだろう。

カジノは出島のように厳格に管理するようだ。日本政府はカジノが地方経済の毒になる可能性がわかっているのだ。あるいは競馬やパチンコのような既存のギャンブルと同一視して嫌っているのかもしれない。カジノでは出入りをコントロールすることで問題を「外に持ち出さないように」しようしている。だが、これは日本のカジノリゾートを息苦しいものにするだろう。

ラスベガスやマカオにはそれほど厳格な入場制限はない。つまり、普通の観光客がふらっと入ってスロットマシーンなど気軽なギャンブルを楽しむことができる。マカオの場合香港からのフェリー乗り場から30分程度歩くとカジノのあるホテルに行くことができ、スロットマシーンのエリアなどには特に入場制限などはない。ポルトガルの雰囲気を残した広場や教会の跡なども1時間程度の中にすっぽり収まっており、全体が公園のようになっている。

つまり、議論をしている人たちのほとんどが「他人事」と考えて議論しているのである。もちろんギャンブルの危険性について他人事であることはいうまでもないのだが、地域振興にもあまり興味がないことが見て取れる。日本はカジノに頼らざるをえないほど追い込まれているにもかかわらず、当事者意識がない。多分導入する側の地方の人たちも「カジノさえ誘致できれば地元がラスベガスみたいに反映する」と考えているはずである。地方は自分たちで稼ぐための知恵を出そうとは考えていない。国が規制緩和してくれて、民間がノウハウとお金を自分たちに供出してくれることを期待しているように見える。

だが、外国企業は儲かればい続けるだろうが儲からなければ撤退してしまうだろう。

最近の失敗事例として思いうかぶのがレゴランドだ。レゴランドはヨーロッパと物価水準が全く違っているのを考慮しないで法外な入場料を設定して失敗した。周辺の施設は「トリクルダウン」を期待したのだが結局撤退が始まっている。朝日新聞の説明によると年間パスポートを持っていないと途中退場ができない点が響いたという。

外資の撤退といってもっとピンとくるのはスーパーマーケットだ。カルフールは1999年に参入し2005年に日本から撤退した。ウォルマートも否定はしているが西友の身売りを検討しているようだ。ウォルマートはアメリカで成功したエブリデイロープライス戦略を日本に押し付けたがうまく行かなかった。テスコも8年で撤退し、跡地にイオン系のミニスーパーが入った。

コストコのようにうまくいった事例もある。だが、外資は失敗だと思えばあっさりと撤退してしまう可能性があるということになる。彼らは儲けるために日本にいるのであって、地域貢献などを目指しているわけではないし、地元の政治家に義理があるわけでもない。

このように考えると、IRの本当の危機は鳴り物入りで施設を作っても10年程度で撤退し後に巨大な廃墟だけが残ることなのではないかと思う。かつて日本には「「総合保養地域整備法」という法律があり、それに基づいて各地にリゾート施設が作られた。法律さえ整えれば地方にディズニーランドができると期待した人が多かったのである。

だが、現在では地方にあるリゾート施設は軒並み撤退するか苦戦している。シーガイアのように一度撤退した施設もあるし、施設を親会社に買い取ってもらうなどして縮小しながら経営を続けている志摩スペイン村のようなところもある。

シーガイアなどの「総合保養地域整備法」は東京の資本に頼りさえすれば、地方も東京のようになることができるだろうという甘い見通しのもとに作られた。日本弁護士連合会は政策は破綻したと糾弾している。今回のカジノリゾートは「リゾート」を「ギャンブル」に置き換え、中央資本を外国資本に置き換えただ毛であるということに気がつく。

基本的に地方が全く何も学ぶつもりがなく、かつ自分たちで真剣に地方創成について考えてこなかったことを意味している。このままで行くとカジノリゾートも失敗が予想されるわけだが、次に出てくるのは大麻の解禁あたりになるのではないかとさえ思える。つまり「真面目にやっても稼げないからルールを緩くしてくれ」と言っているのである。

ただ、今回の議論を聞いていても地方の窮状は見えてこない。もしかしたら本当にギャンブルに頼らなければ地方経済は成り立たないのかもしれない。Fランクの大学を誘致するのに地元があれだけなりふり構わない行動を取ったところをみると、行き詰った地域は実は多いのかもしれない。もしそうだとすると、単に「ギャンブルは卑しいから嫌だ」と言っている野党の側にも問題はある。もうギャンブルで行くしかないなら真摯にその現実を認めるべきであろう。人に投資をすることで経済を再活性化などいうのだろうが、本当にそんな格好の良いことだけ言っていればよいのか一度話し合うべきなのではないかと思える。