日本のリベラルが崩壊し、安倍政権のやりたい放題が続く理由

野党の書き起こしで技能実習生が174名亡くなっていた(日経新聞)ということがわかった。さすがにこれはひどいと思ったのだが、かといって個人でできることには限界がある。この問題を提起したのは立憲民主党の有田芳生さんなので党としても今後の対応を考えているのではないかと思った。自分では何もできなくても彼らの主張を伝えることくらいはできるだろう。だが、ちょっと動いてわかったのは立憲民主党は騒ぐだけ騒いでもそれ以上何もしないだろうということだった。よくマスコミが何も伝えてくれないと大騒ぎしている人がいるが、マスコミを批判するのは多分筋違いだ。リベラルという人たちは何もやっていないし、何かをするつもりもないと思う。だから有権者が離反してしまったのだ。




最初に見たのは有田さんの一連のツイートのリツイートだったと思う。自分も留学した経験がありいい思いも悪い思いもしているので、他人事ではないという気持ちがある。何もできないかもしれないが、少しくらい手伝えることがあるのでは?と地元の接触先を調べ始めた。

ところが調べてみたところ意外なことがわかった。そもそも千葉県には立憲民主党がないのである。県連合というのがあるので連絡してみたのだが電話とファックスがあるだけだという。電話で「この件について応援したいので何ができるのか教えて欲しい」と簡単に依頼したのだが、電話だとあなたが何を言っているのかわからないのでファックスで文章にして送って欲しいと言われた。せめてメールがないかというとそんなものはないという。実際に出かけていっても良いと提案してみたのだがそれは難しいといわれた。狭いところでやっているから対応できないそうだ。一応担当者につないでくれるようにと携帯電話番号を渡したが二日経っても連絡はなかった。

ここから、有田さんが組織対応を考えずに「とりあえず場当たり的に情報を出した」ことがわかる。世間の注目を集めて「騒ぎになること」だけを狙ったのだろう。そもそも問い合わせの主体を作るつもりすらなく、民進党が場当たり的に党を割ったこともわかる。県のレベルでも党組織を維持するお金を準備していなかったということだ。だから、立憲民主党は最初から党としては何かするつもりはなかったことになる。

日本のリベラルがなぜダメになったのかがよくわかる。政治理念とか文化風土とかそういう難しい問題ではない。単に計画性がなく、協力して横の連携を取ろうとせず、選挙の時だけ体裁を整えようとするから、国民から見放されてしまったということだ。そうした彼らができるのは扇情的に国民世論を煽ることだけであり、それを知った人たちがますますリベラルから距離を置くという悪循環が生まれている。これを安倍政権やマスコミの陰謀論に仕立ててみたところで、彼らが組織運営ができないという事実は変わらない。党が運営できない人たちが政府を動かせるはずもない。

だから技能実習生がこれから先何人亡くなり、それが日本という国への印象がどれだけ悪くなっても、国民は見て見ぬ振りをする以外に道がない。悲しいことだが、私たちはまずこれを受けとめなければならない。

国民民主党系の地方議員事務所も開店休業状態になっているので、例によって市民団体系の事務所に話を聞きに行った。監査をやっているらしく珍しく3名がいた。ここでは「ネットでは技能実習生の問題について心を痛めている人がいて、何かできないかを考えている。そこでリベラル系の団体で何か運動を起こしている人はいないか取材している」と言ってみたのだが、そもそもこの段階で理解してもらえなかった。

一人(監査を受ける会計係)は黙って話を聞いており、もう一人(お留守番役)はこれまでの活動議事録を引っ張り出してそこに答えが書いていないかを探しはじめた。そして監査に来ていた人は「自分たちは一生懸命活動しているが誰も話を聞いてくれない」と自分の話を始めた。そのあと30分ほど彼女の苦労話を聞いた。他人の話には興味がないが自分がいかに理解されていないかということは話たくて仕方がなかったようだ。被害者意識でいっぱいになっているが、普段からお勉強会友達としか話をしていないせいで相手が言っていることが理解できないのだろう。この監査の女性は「80歳代のお年寄りが政治のことなんか理解できるはずがない」からリベラルの素晴らしい活動が理解されないのだということを言っていた。

一方、活動議事録を探している人を見ていて面白いなと思ったことがある。実は彼女はうまく言語化できないだけで外国人技能実習生が介護に関わっているという認識は持っている。彼女は高齢者なので介護に関心がある。そして海外から来た人を安く使わないと制度が維持できない(つまり技能実習生を止めると損をする)という認識も持っている。しかし、技能実習生が劣悪な環境で働くのが良いとも言えない。それは<共生主義的>には間違った思想だからだ。そこで、一生懸命公式の答えを探そうと答えが書いていない議事録を漁り始めたということだ。彼女は言語化できないだけで、この問題の本質にある難しさには気がついている。ところがリーダー格の人たちは「こうした人たちは単なるお手伝いでみんな無知蒙昧なバカだ」と感じているためこうした違和感を持ったまま黙っている人たちのことが理解できないということになる。

市民系の団体はもともと地域の交通安全や給食の問題を扱っているので地域のお母さんの中にも子育て中は参加してくれる人がいるらしい。彼女たちが居つかないのは多分押しが強い人たちが嫌になるからなのではないかと思った。押しが強い人たちは相手のいうことを聞かず、相手がバカであると感じるのだろう。だから、普通のお母さんたちはバカ扱いされた上によくわからない護憲・反原発活動や各種のお勉強会に動員されることに違和感を覚えるのではないだろうか。

日本ではよくインテリゲンチャ発の社会主義が失敗したと言われる。普通の日本人は自分が持っている違和感を言語化できないので、インテリから見ると言語化できない人たちが単なるバカに見えてしまうのだろう。だが、言語化できないということと認識していないということは実は全く別の問題なのだ。

技能実習生や海外移民の問題は新しい問題なのでそもそも答えがない。何かを選べば何かを諦めることになるので、みんなで協力して新しい答えを探して行かなければならない。立憲民主党のお留守番の人もそうだったのだが、彼女たちは言われたことを暗記して人に伝えることはできるのだが、新しい概念を理解して答えを模索したり、相手がどんなニーズを持っているのかを汲み取ったりするということが全くできない。正解をひたすら暗記させる教育のせいもあるだろうが、指導層の人たちが一般の担い手を啓蒙されていない暗愚な集団としてしか扱わないという日本独特の村落構造もあるように思える。

自民党は経済政党なので出資と情報がボトムアップで上がって行く。ところがリベラルの人たちにはそれもないので「党の偉い人たちが決めたこと」を伝達することしかできなくなる。だから、なんらかの形で協力を申し出る人がいてもそれが有機的に結びついて行かない。党の中央部はアイディアが吸い取れなくなり思い込みで動いてますます離反が強まるという「意図しない引きこもり」が起きているのだと思う。

この上意下達が成功しているのはリベラルでは共産党だけである。共産党は日本に来て独自の宗教になったうえに信仰に支えられた赤旗という経済的な基盤がある。彼らの宗教の経典は憲法第9条である。経典があるので党本部の主張を下に伝達することはできる。共産党支持者はとにかく朝に憲法第9条を唱えれば極楽に行けると信じており、そうでない人は安倍に騙されているか可哀想なバカだという立場なので精神的には救済されている。しかし、その他のリベラルはこうした経典すら持たず、経済基盤もなく、組織運営にも興味がない。だからあとは消えてゆくしかないのである。

立憲民主党と国民民主党が分裂した当時の状況を見てみると、議員たちが地方組織に一切相談することなく永田町の村の中で全てを決めてしまったことがわかる。地方組織は後からついてくるだろうと思ったのだろう。だが、自分の頭で考える能力もなければ他人の言っていることも理解できない地方組織は基本的に自律的に動けない。

今回話を聞いた市民団体はかなり焦っていた。来年4月の市議会議員選挙の準備をしているが全く支持が集まっていないようなのだ。参議院議員選挙のことを聞いてみたがそこまで考えが及ばないらしく「党の方で考えたら協力するところは協力する」と言っていた。しかし、ここまで何もできなかったのだから、これから何かができるということはないのではないかと思った。

先生が答えを押し付けて生徒の自主性を信頼しないというのも、生徒が自分で考えずに教科書を暗記するというのは典型的な日本の教育の弊害だ。保守系のように嘘でも神話でもいいから信じられる答えを見つけた人や、共産党のように憲法を宗教にしてしまった人はそれでも幸せになれる。しかし、そうでない人は政治を単なる苦しみだと捉え離反してしまうことになる。多くの学生は「何のために勉強するのかわからない」と感じるがそれと同じなのではないかと思う。だから、日本からは保守もリベラルも消えさり、政治から経済的な恩恵だけを受けようとする人たちだけが生き残ったのだろう。