韓国ファッションの文化侵略

最近WEARで韓国ファッションとかKーPOPファッションというトレンドが出てきた。人によって解釈は様々なのだが、黒いスキニーとタイトなシルエットが目立つほか、スポーツブランドをミックスしたようなものもある。よくミュージックビデオで出てくるスタイルである。他には奇抜な色で染められた髪色というのもある。ステージ映えを意識した華やかな色と程よく鍛えた体を協調するスリム目のシルエットが特徴だ。




この傾向はなかなか面白いと思う。もともと韓国は自国文化が日本に侵略されることを恐れ、長年日本のポップカルチャーを封印してきた。日本文化が解放されてもしばらくはモノマネが続いており、今でもアメリカのポップカルチャーの強い影響を受けている。本来ならオリジナルとは呼べそうもないが現在のK-POPを見ていると「それでも他のどこにもない韓国風」としかいいようがない。また韓国ファッションというとアメリカブランドの偽物というような印象があり、現在でも韓国のブランドが日本で流行するようなことはない。こうした一見不利な状況にもかかわらず「韓国ファッションがおしゃれだ」とか「真似をしたい」という人がいる。

そればかりか日本の音楽チャートでもK-POPは常連化しており、ドームの動員数も増えている。現在は第三次ブームと呼ばれるそうだが、新大久保のような文化集積地もできており「文化侵略だ」などと言い出す人まで出てきている。

ところがこの動きに全く追随できていない人たちもいる。未だに韓流ブームを説明するときにヨン様やBTSなどという人がいる。彼らにはYouTubeもドームツアーも全く見えておらず、NHKと政治ニュースの一環としてしか韓流ブームが見えていないのだろう。新大久保に韓流好きが集まるのを快く思わない人たちはこういう時代に遅れているのにメインストリームにいると思っている人たちなのだが、ファンたちは全く別のメディアから情報をえているので、そもそも「けしからん」という声さえ聞こえていないだろう。

東方神起とTWICEで「知った気になっている」のも危険だ。紅白歌合戦を見るような人たちもコアではない。ドームツアーのリストにはEXOやSHINeeなどが出てきているが、さらに新しいグループが続々と続いており、彼らですら旧世代になりつつある。

2004年から2008年頃、日韓では、ブーツカットジーンズやミリタリーやグランジの要素を取り入れた「男らしい格好」が流行していた。このころの日韓のスタイルはほぼ同期していたのではないかと思う。

ところがリーマンショック後に日本と韓国は全く別の道を歩み始めたようだ。K-POPの男性アイドルはどんどん「こぎれいに」なっていった。と同時にスリムフィット化が進む。とはいえ男性アイドルも腹筋を見せびらかすなど男性らしい体つきが良いとされているので、ある程度体を鍛えてスリムパンツなどでタイトフィットに仕上げるのが良いとされているようだ。メンバー分裂前の東方神起・2PM・スーパージュニアなどはデビューしたてのときにはロック調の荒々しい服装だったが徐々にスーツ化が進みこぎれいになっていった。その後発のEXOなどは最初からこぎれいなスリムスーツスタイルが多く、時代がきちんと動いていることがわかる。

この間に日本でも大きな変化があった。シルエットがどんどん大きくなっていった。Men’s Non-Noはハーフモデルを細めの日本人に入れ替えた。細いモデルにたくさんの洋服を着せて体の線を隠すようになっていったのである。最初はボトムだけが太くなり、次に全身が太くなり、最近ではほどほどの太さのものの方が良いということになっているようだ。

30歳代以降の男性ファッション誌はこの一連の動きに追随しなかった。しばらくは市場の要求にしたがってゆったり楽なスタイルがよいとされていたようである。ただゆったりしたスタイルを成り立たせるためにはモデルが鍛えられている必要がある。中年太りの人がゆったりとした服を着ると単にだらしなくなってしまうのだ。人気があったのはアメリカを真似して普通のシルエットにこだわったSAFARIだった。アメリカ人の洋服の選び方はシルエットの面では保守的でありあまり変化がない。日本人が着物を着崩さないのと同じなのかもしれない。GQなどのファッション情報でもシルエットを変えようという提案はなく「ルーズなものはだらしない」という指南が載っている。

日本のファッション雑誌はある程度のスタイルができるとそれが固着する傾向があるように思える。ファンが大きな変化を好まず、そのときのトレンドにあったモデルが選ばれ、そのモデルが似合う服を着せるようになるからである。すると服ではなくモデルにファンが付くのでますますスタイルが変えられなくなるのだろう。

Men’s Non-Noは業界の意見を反映しつつ、同時にアイドル誌になっている。これではファッションは学べないので巷ではユニクロのファッションを使ってきれいにまとめましょうというようなガイドブックが出ている。MBという人がこうした指南書をたくさん書いている。

ファッションについて勉強し始めたときには「どうもファッション雑誌を見てもよくわからないなあ」と思っていたのだがWEARをフォローしたり参加したりするようになってからようやく「実際に流行しているものとMen’s Non-Noなどの業界人が流行させたいものは違うんだな」ということが理解できるようになった。これを補うために各誌ともストリート特集を組むのだがどうしても「自分たちが見せたいものを見せる」ことになってしまう。各新聞が自分たちの主張に合わせて世論調査の質問項目を操作するのと同じようなことが起こる。永田町や霞ヶ関に記者クラブがあるように、東京のファッション誌にも狭いコミュニティのつながりがあるのかもしれない。

村が強固になると過疎化が起こるというのはこれまで見てきた通りである。日本人は不満を表明して離反したりしない。自然とついてこなくなってしまうのである。そして村はそれに気がつかず、知らず知らずのうちに少子高齢化が進む。

新しいトレンドが出てきても、固定ファンがついたMen’s Non-Noは既存客を捨てて新しい流行には移れないだろう。ジャニーズも小柄で中性的な男性がセンターになるので、ある程度の筋肉量を要求するK-POPファッションには追随できないだろう。

現在のファッションは全く違ったところから入っている。それがYouTubeやインスタグラムだ。韓国のテレビ局はケーブルが入って競争が激しくなった。そのため各テレビ局がYouTubeにビデオを流しており言葉はわからなくても韓国の生の状態がわかるようになっている。そこに出てくるK-POPスターのファッションがダイレクトに入ってくるようになった。韓国のトレンドは明らかにタイトフィットなのでそれがWEARなどに乗って拡散するという「紙媒体を全く通らない」拡散方法が出てきている。

政治の世界で「過疎化」を見てきた。ある程度成功を収めたコミュニティが成功に閉じ込められて衰退してゆくという姿である。日本ではこれが政治以外でも見られるのだが、ファッションにはある程度の自由度があり、政治のように閉じ込めが起こらない。

小選挙区制で選択肢がなくなった日本の政治は「政治そのものからの離反」が起こっている。小選挙区の場合二つのうちどちらかを選ぶのだが、日本人は、自分が勝ってほしい政党ではなく勝てる正解に乗る傾向が強いので選択肢がなくなってしまうのである。政治にも固定層である人たちがついていて、彼らに最適化された時代遅れの政治が行われるようになってきている。

しかしほとんどの人たちは選択肢のない政治からは離反している。こうなると政治への貢献はなくなり、嫌なことがあったときだけアレルギー反応を起こして決定を拒絶するということになってしまうはずだ。