河野外務大臣というピエロの存在で俄然面白くなった北方領土交渉

河野外務大臣が外交的に醜態といってもよい失敗をして帰ってきたので北方領土交渉が俄然面白くなってきた。マスコミは安倍政権の成果とやらを伝えるだろうが、これを本気にするまともな人はもう誰もいないだろう。見世物としては面白いので、劇場を楽しむために経緯をおさらいしておきたい。




話は2018年9月にプーチン大統領が「前提抜きで北方領土問題について話し合おう」と提案してきたところから始まる。(毎日新聞社)安倍首相らは意図を読めなかったのだが、内政では嘘つき呼ばわりされていたうえに、憲法改正を前に外交成果を欲していた時期だったのでこれに乗ってしまった。それがそもそもの失敗だった。批判的な新聞社は当初から「領土問題の棚上げを意図したものである」と疑っていたが、支持者たちは「そうはいってもなんらかの勝算があるに違いない」と思っていたかもしれない。

毎日新聞社が書いているように、これが領土問題の棚上げになるのは、これまでの線が2島返還となるので事実上の後退になってしまうからである。記憶している限りでは「国後・択捉の問題が棚上げになるのでは?」という議論が多かったように思える。

ところがここで安倍首相のお得意の「嘘戦略」が始まる。実際には何も前進していないのに自分の願望をあたかも本当のように述べてしまう。ただ、これは内政ではずっと成功してきた。国民は政治的諸問題をみなかったことにしたいし、自己保身に走る官僚は安倍首相の嘘から逆算して資料を隠したり改竄したりしてくれる。だからすっかりそれに慣れてしまったのであろう。

2019年の年頭所感では「所属が変わるのだからロシア人に納得してもらわないと」と発言したようだというニュースがTwitterで流れてきた。一部の人は騒いでいたようだが多くの人はこれをスルーした。内政では言ったことが「本当」になる安倍首相だが、ロシアはこれを「カード」に使ったというところにしたたかさがある。彼らが本当に「世論を歪めて問題を有利に運ぼうとしている」と怒っているのかはわからないと思う。ただ、そういうフリはできる。ハフィントンポストでは外務次官が怒って大使を呼び出したとしている。アメリカ人のディールといいロシア人の怒ったフリといい喧嘩慣れしている人たちのやることは怖い。

国民民主党の玉木代表はこの発言を別のところから批判している。つまり帰属が変更になるということは北方領土がロシア領であることをみとめたことになってしまうというのだ。国民民主党らしい細かな視点だが、まあ言われてみればその通りであるが、やはりテクニカルなことにこだわり喧嘩慣れしていない日本人のひ弱さ富田方がよいのではないだろうか。喧嘩慣れしていないのは旧民主党系も同じなので彼らも自民党政治には勝てない。

いずれにせよ、日本が勝手に領土問題について誤った印象を与えると拳を振り上げた上で「そっちがその気なら」と強気に出てきた。北方領土がロシアの主権下にあることを認めた上で、北方領土という「間違った呼び名」を使うべきではないと問題をエスカレートしてきた。ロイター通信朝日新聞社がそれについて書いている。朝日新聞社は嬉々として「ロシアは日露関係を正常化したいと思っているが、どうも日本がねえ」と言っているロシア側の言い分を伝えている。それとは別に飴玉も出している。ビザなし交流を拡大する用意があるというのだ。合意形成型で煮え切らない上に軍隊については何も決めれらない日本人と違って、トップダウンで物事が決められるロシア人はそういうことが言えるわけである。

これだけでも十分に面白い見世物だったが、河野外務大臣の無能ぶりが加わりさらに面白くなった。ロシアは「南クリルはロシアの領土だと主張したことについて河野大臣は何も言わず、共同会見からも逃げてしまいましたよ」と暴露して「顔を潰してみせた」のである。利用価値があると考えたならそんなことをはやらなないだろうから、河野さんにたいするロシア側の期待のなさがうかがえる。彼は使いっ走りと思われているのだろう。その様子を今度は早速東京新聞が嬉しげに伝えている。一方で政府広報となっている読売新聞は何も書くことがなかったので「次回に続く」とやっているだけである。さすがに読売新聞も何も書けなかったのだろう。

ロシアの喧嘩に使われた「帰属が変わる発言」だが東京新聞の質問に答えたものであるようだ。官邸が出しているビデオでは22分あたりで聞くことができる。官邸としては政権批判で売っている東京新聞には警戒していたはずだが「うっかりあんな原稿」を書いてしまったところから、ロシア側の状況がうまく読めていなかった様子がうかがえる。いかにも歴史改竄しそうな官邸がいつこの発言を「編集」するのかが気になるが、そのまま残れば歴史的交渉失敗の端緒として記念品になりそうだ。ただ、原稿を書いた人が処罰されないかがちょっと心配になる。