セブンイレブンが行うべき遵法闘争

セブンイレブンが揺れている。フランチャイズ店のオーナーが団体で「24時間営業をやめさせて欲しい」と申し入れたのだが、本部側がこれを断ってきたというのだ。セブンイレブンのフランチャイズは団結して「受動攻撃」すべきではないかと思う。




受動攻撃という耳慣れない言葉を聞くと「それは何だ?」と思われる可能性があるのだが、実は日本人はこれまでも管理された組織的な受動攻撃を行ってきている。それがサボとか遵法闘争である。サボるという言葉の語源になったサボタージュは大正時代から行われているそうだ。また、遵法闘争は、戦後になっても公務員の間で行われていた。国鉄がマニュアルを律儀に守りダイヤを遅らせるという手法がとられた。

こうした受動攻撃の怒りを沈めるために、私たちの社会は終身雇用と家族的労使関係という「温情的」な労使関係を作ってきた。が、それも高度経済成長期が終わると簡単に忘れ去られてしまった。つまり、私たちは新しい時代を迎えているわけではなく過去の「本来の形」に戻りつつある。それは「村の外は全員敵」という社会である。

本来、こうした闘争は資本主義社会では必要がない。セブンイレブンフランチャイズオーナーは契約形態が気に入らないのなら別の系列と契約を結べばいいだけの話だからだ。それができないのは、新しいアイディアを手に入れられなくなった各コンビニ系列がフランチャイズを搾取する構造に依存せざるをえなくなっているからだろう。つまり、閉鎖的な経済空間ゆえに、トもできなければ自由主義的な市場経済メカニズムも働かないという不思議な「失敗した市場」が生まれているということになる。

コンビニエンスストアはマニュアル労働なのですべてのことはマニュアルに書かれている。これを杓子定規に守ることで営業成績を落とすことができる。すべてサボタージュしてしまうと売り上げにも響くのだから「本部が政策的にやっている」ものだけを止めてしまえばいい。例えば(どうせ売れ残る)恵方巻きを大量に仕入れるというようなことはやめても良いだろう。コンプライアンス流行りなので「食料廃棄は減らせ」というようなルールもあるはずなのでそれを守ればいい。

24時間営業にしても、お客と協力して「夜中は開店休業にします」と宣言してしまえばいい。形式的に開けておいて何もしなければいいのである。本部のいう通りにするためにはバイトをたくさん雇う必要があるのならそれもやめればいい。問題なのは、本部に言われたことを全部やってしまうことなのである。この辺り「決められたことはきちんと守り顔を立てたい」という高度経済成長期の美風がかえって仇になっている様子がわかる。だがこれは労働が長期的に報われていた時代の文化であり、残念ながら過去の遺物だ。

もちろん、こうした受働攻撃性には問題がある。社会のすべてが「ちょっとずつ」頑張れば社会は少しづつよくなる。が、社会のすべてが「ちょっとずつ」反抗すれば、社会は少しずつ悪くなってゆく。だが、社会は問題を認めようとしないし、その環境から逃げ出せもしないという環境では他にやりようがない。

Twitterを10分くらい巡回すれば、今の日本社会には選択肢が少なく受動攻撃性とその怒りで溢れている様子が観察できる。安倍首相も厚生労働省も虚偽を認めながら決して反省はしない。小池百合子東京都知事は築地は守るが市場は作らないと言っている。アイヌ民族は存在せずあれはアイヌ風文化だ主張したマンガを載せた雑誌が売られる。また、女性がセクハラ被害を訴えるのは気持ちに余裕がないからであり、子育てをママが一人でやるのは昔からやってきた当たり前だと言われる。村に守られなくなった日本は慢性的な受動攻撃社会になり、その怒りが新しい炎上を生む。

いったん受働攻撃性が溢れ出すと怒り出すことはとても虚しくなる。この怒りそのものが「受働攻撃者の餌」になってしまうからである。他人が怒っているのをみて「気分がスッとした」経験をしたことがある人は意外と多いのではないか。「あなたは私が問題を指摘した時にはいうことを聞いてくれなかった」だから「今回は私たちの番なのだ」ということであり、これは報復合戦である。こうして管理されない受動攻撃性は社会を徐々に蝕みSNSに乗って拡散する。

今回ほのめかした「受働攻撃性」は行き場のなくなった怒りが自覚のないまま漏れ出てくるという悪性の報復合戦になり得る。例えば今流行っている「バイトテロ」は仲間内だけに見せる反抗が悪意の第三者によって拡散したものなので、これは悪性の受働攻撃性と言えるだろう。自分たちのワンクリックで社会が混乱する様子が面白い人たちが大勢いるのだ。

これを防ぐためにはもう「合理的なサボタージュ」くらいしか道が残っていないのである。選択肢のない閉鎖された社会で我々に残された選択肢は管理された受動攻撃性と管理されない受動攻撃性の二つしかないのかもしれない。