アングロサクソンとディールと島国根性

Brexitが面白い展開を迎えている。特権はそのまま享受したいがEUには縛られたくないというのである。だから何も決められずいつどんな形でEUから脱退できるかがわからない。




ルールは自分たちで作りたいというイギリスの島国根性が混乱をもたらしているように見えるのと同時にあれが彼らの考える「自由」なのだということがわかる。英語の自由はfree fromという使い方をされることがある。つまり束縛されないとうことが自由なのだ。日本人が表現の自由と言って相手を縛りたがるのと比べると180度反対の考え方である。

英国議会の現在の問題はどんな提案をしても気に入らないという点である。自分たちに都合が良いルールを作って相手にも押し付けたい。だが、他人が決めたルールは守りたくないのである。BBCによると3つのアイディアが否決されたそうだ。

  • メイ首相の離脱協定案
  • 再び国民投票をやる
  • EUは離脱するが単一市場には残る

BBCによるとメイ首相の離脱協定案が反対されるのは、北アイルランドとアイルランドの国境について協議がまとまらなければ「北アイルランドがEUのルールに従う」というバックストップ案を含んでいるからだと言われている。つまり、このままでは「足かせが残る」のを嫌がっていることになる。だがイギリスはEUが納得する案を自分たちからは出せない。イギリスの提案を通してしまうとアイルランドが抜け穴になってしまうのだが、イギリスはEUの事情は気にしない。よく今までもやってこれたものである。

多分、イギリス人は自分が作ったルールに相手が従うのは好きだが、相手が作ったルールに従わさせられるのが嫌なのだろう。そして自分たちの言い分を主張し続けることが正義なのだ。相手の事情を気にせずに自分たちの理屈だけを押し通す。これを島国根性という。

イギリスには標準英語がない。あるのは許容発音という発音だけである。大陸国家が標準語を作って民族意識を高めてきたのと違い、島国ではそれをやる必要がなかった。このため内部で意見集約が難しい。島国で好きにやってこれたから他人の作ったルールに従わされるのが嫌だという気分が残ったのかもしれない。この島国気質が和をもって尊しとなすといいながら全くまとまれない日本にどことなく似ている。

日本人と違っているのは、ルール作りを自分たちから仕掛けてくるというところだ。ヨーロッパはローコンテクストの文化なのでルールという決まった規範が必要なのである。これがハイコンテクストで関係性を積み重ねる日本人と決定的に違っている。内輪の論理を押し付けるという点では似ているが乗り物が違うということになる。

アングロサクソン系の人たちは自分たちが絶対的に有利な条件を含んだディールが整うまでなんども「ルール作り」を仕掛けてくる傾向がある。

これがよくわかるのがアメリカの日本に対する通商交渉だ。トランプ大統領が好むのは一対一の交渉だが、これは自分たちに有利な交渉が進められるからだろう。異質な人たちに結託されることを彼らは嫌うのでTPPからは離脱した。イギリスから独立したアメリカもまた巨大な島国なのだ。

アメリカにはトランプ大統領に期待する人たちが多い。Newsweekによると現在ターゲットになっているのは中国だ。実力では中国に負けてしまうのでディールの力によってそれを覆したい。当然中国はそれに応じないわけだが、応じないとなるとあれこれとプレッシャーをかけてくる。

だが、これが成り立つのは基本的に「自分も押すのだが相手も主張してくるであろう」という見込みがあるからである。さらにヨーロッパの大陸諸国は集団で交渉するので、イギリスのわがままが成り立つ。一方で日本は近隣諸国の間で孤立しており、英米からルールを押し付けられた時に対応できない。

日本はうちわで決まった価値観を周辺国に押し付け続けるという同じ共通点は持っており、韓国・中国・ロシアといった国々との関係に悪影響を与え続けてる。自分たちの明文化されない価値観にこだわり続けるので、信頼を勝ち取ることができず、ディールも結べないという意味ではイギリスに似ている。

Brexitのニュースを見ていると「なぜイギリスはいつまでも交渉をまとめられないのだろう」などと思うわけだが、実は日本も同じように「なぜ日本は周辺国と仲良くできないのだろう」と思われているのかもしれない。イギリスの状況を見ていると全く理解できないように思えるが実は似た者同士なのだ。