崩れゆく政党政治

2019年の統一地方選挙の前半戦が終わった。道府県知事選挙と県議会議員・市議会議員選挙が行われたのだがなかなか面白い動きがあった。日本でも都市と地方の分離が起きているのだが、二大政党制にならず分裂してしまったのが特徴と言えるだろう。




まず、野党共闘は失敗した。北海道では立憲民主党・国民民主党・自由党・共産党が推した候補が敗北した。これは統合の動きの失敗を象徴している。日本の政党政治は分裂に向かっておりこれが話し合いによって修復されることはないだろう。(産経新聞)立憲民主党は形としては乗ったが距離を置いていたようである。

一方、千葉市議会選挙を見ると立憲民主党の候補者が結構通っている。選挙期間中積極的な選挙戦を行ったわけでもアピールをしていたわけでもないので、国政に不満を持ち民主党系に期待を寄せる人たちの指示が立憲民主党に集まったものと思われる。国民民主党は野田佳彦の応援や国会議員の応援を得た人がちらほらいたのだが振るわなかった。中央区では女性議員が落選している。つまり、民主党系は政策野党としては全く期待されていないが、反安倍層にはアピールしたということのように見える。不満を持った勢力は消えないから立憲民主党はこのニッチに単独ではまり込むことになるだろうということだ。これは、社会党がかつて担っていたポジションである。

では自民党が大勝したのかと言われるとそうでもなさそうだ。議会選挙レベルでは自民党が勝ったようだ。立憲民主党もそれなりに躍進したが国民民主党は支持を得られなかった。(共同通信)現状維持を望む人と不満を持っている人たちの動向と考えればわかりやすい。国民民主党はこのどちらにも関与できなかったということになるだろう。

大阪では維新が「政権」を維持した。大阪都構想にそれほど中身があるとは思えないうえに、二階幹事長も入ってテコ入れをしたのだが、現職には及ばなかった。(時事通信社)維新なら何か面白いことをしてくれるのではないか、誰がやっても同じなのではないかというような空気があるのではないかと思われる。

しかし、大阪市民が都構想を全面的に支持しているわけではなさそうだ。市議会では維新は過半数を得られず、また公明党の支持が必要ということになっているのだそうである。コメンテータたちは「都構想には興味がないが維新には頑張ってほしいという人が多いのではないか」と分析していた。つまり東京とサシでやりあえる大阪という図式がほしいのだろうということになる。この辺りから日本の政治が何で動いているのかがわかる。政策ではなく人間関係で政治が理解されているのだ。

このことは統一地方選挙の前半戦の総括によく表れていた。主にTBSを見ていたのだが、ドラマの相関図のような図表が出てきて「人間関係」が解説されていた。そしてその人間関係を説明するのに使われる単語は「好き」と「嫌い」なのだ。あれほどマニフェスト選挙という言葉が喧伝されていたのが嘘のように、内部の好き嫌いで選挙情勢が変わってしまうという世界を我々は生きている。松井さんは東京と対等にやって行ける、鈴木さんは菅さんの後ろ盾がある、そして麻生さんは小川さんが嫌いというような話が延々と続いていた。政策の話は一切でない。つまり「小川さんが何を訴えて当選した」というようなことはそもそも政治課題ではないのである。

福岡県でも保守分裂選挙を制したのは地元連合だった。もともと現職の小川洋知事は麻生派だったのだが次第に離反し、それに不快感を示した麻生氏が介入した。麻生さんは「予算をつけるのは誰かわかってますね」と塚田一郎国交副大臣を通して地元を恫喝したのだが効果はなかった。(産経新聞)利権よりも人間関係なのだ。

島根県でも国会議員主導の県知事候補が離反された。(産経新聞)産経新聞者は「竹下・青木王国」崩壊と面白おかしく伝えている。産経新聞は自民党支持ではなく安倍支持なので、麻生さんは「横暴」であり、竹下・青木王国は崩壊と書いた。島根では自分たちで決めたいという気分があり、有権者も島根の現状が変わらないことを支持した。つまり自民党が支持されているわけではなく、現状を変えたくないという気持ちが地方政治を動かしているということになる。

東京都も都民ファーストが第1党になっているので、都市部は確実な自民党離れが起きている。一方で衰退してゆく地方は自民党に頼って中央からの資金を流してもらう意外生き残れる見込みがない。かといって中央から指図されるのは嫌なのである。求心力のある政党は現れず、各地がそれぞれ独自に判断するという図式が生まれている。

こうして概観を見ていると、中央自民党への不満はくすぶっているが、かといって立憲民主党がその不満の受け皿にはなりきっていないということがわかる。自民党も野党系も分裂の兆しがあるが、それぞれが消滅するほどの危機にはなっておらず、なおかつ地方選挙への関心そのものはとても低かった。

全体としてうっすらとした不満はあるのだがそれが大きな勢力にはまとまらないため、国政レベルでは自民党を脅かす政党は出てきていない。かといって自民党が全体をまとめ切れているわけでもない。二大政党制を目指して小選挙区による選挙が行われたのは1996年だそうだが、結局二大政党制もマニフェストによる選挙も根付かず、それぞれがバラバラに現状維持と利権確保を目指して分裂し始めたように見える。それを動かしているのは人間関係である。政党政治は崩壊しつつあるように見えるのだが、そのあとの具体的な姿が全く見えてこない。