イスラエルの総選挙と日本への影響

先日、トランプ大統領がゴラン高原のイスラエル支配を認める声明を出してちょっとした騒ぎになった。もともと安定している地域のようで、これを追認しても大した問題にはならないだろうという観測をどこか(Quora、Twitter、ブログ)でお伝えしたように思う。が、今にして考えてみると「イスラエルの選挙対策だったんだな」とわかる。読み返してみたら選挙についても書かれていた記事もあった。




イスラエルで総選挙が行われ、現与党のリクードと野党連合「青と白」がどちらも勝利宣言を出したそうだ。リクードが政権をとれば史上初の長期政権になるのだが、ネタニヤフ首相は検察当局から「狙われて」もおり、選挙情勢は微妙だった。

ここまではイスラエルの中の話なのだが、これが回り回って日米同盟にもちょっとした影響を与えている。

イスラエルは一院制の比例代表制で、一党が過半数を取りにくい仕組みになっているそうだ。今まで一度も一つの政党が過半数をとったことはないのだという。リクードを率いるネタニヤフ首相は裁判を抱えており司法の出方によっては政権を維持できない可能性もある。娘婿がユダヤ人であるトランプ大統領にはネタニヤフ首相を応援する理由があった。このほかにもネタニヤフ首相はガザ地区を空爆してハマスへの攻撃姿勢を示しており、日本とは比べ物にならない「選挙対策」の苛烈さがある。経済的に安定してはいるが、黙っていると消えてしまう国家である。

この突然の領有権支持宣言を見ると、アメリカが必ずしも国益ではなく大統領の個人的なつながりによる選挙対策を優先した外交を展開しつつあることがわかる。これにお付き合いすると国益を損なう可能性があるということである。安倍首相としてはじわじわと実績を積んで集団的自衛権の名の下に太平洋に君臨する輝かしい日本を作りたいのだろうが、その場の瞬発力で動くトランプ大統領はパートナーとしてはふさわしくない。

人間はわからない現象を見ると合理的に解釈してしまうという悪癖がある。前回ご紹介した記事では「シリアのISが撤退してしまったので、アメリカが関与し続けるためにはなんらかの揉め事が必要なのでは」という見解が紹介されていた。しかし、若干無理があると思ったのか「これをトランプ大統領が理解しているかはわからないが……」という但し書をつけていた。結局、このようなロングレンジの構想があるわけではなく、次の選挙にどう有利かくらいのレンジで動いているということになるのだと思う。

これをめぐって日本では複雑な対応があった。日本はシナイ半島への多国籍軍(MFO)に参加するのだが、これは国連とは関係のない枠組みである。安倍政権は、集団的自衛権の実績を増やして、国連とは関係のない集団的自衛の枠組みを日本が主導できるようになる日を夢見ているのだろう。これが、いわゆるリベラルがいう「日本を戦争ができる国にする」の正体である。日本はこれを支援するというポジションは崩さなかった。

一方で、外務省はゴラン高原でのイスラエルの実効支配を認めなかった。なんでもアメリカに追随するはずの日本としては珍しい対応だ。これを認めてしまうとロシアの北方領土の実効支配も認めなければならなくなる。日本はこれだけは認められないという立場なのだろう。これも長期的な視点に立っているが過去に縛られている。面白いのは北方領土が帰ってこない理由も日米同盟の過去の約束に日本が縛られているからだという点だ。アメリカはあまりにも短期的に動いているし、日本は長期的に縛られすぎているということがよくわかる。

このように一つのニュースをみるといろいろな疑問がするすると解けてゆくことがある。だが、テレビや新聞でこうした一連の流れをみることがほとんどできなくなっているように思う。断片的な情報が流れては消えてゆくのである。こうした一連の情報をかろうじてつないでくれるのがいくつかのTwitterアカウントなどである。国会議員とか国際政治学者などのアカウントがイスラエルに興味を示すTweetをしており、これを読み解くといろいろなことが見えてくるのだ。

リベラルの人たちは今回のニュースにほとんど反応しなかった。多分野党が攻撃材料として使っていないからなのだと思う。代わりに彼らが夢中になっているのが桜田元オリンピック担当大臣の辞任である。安倍首相の任命責任を追求して困らせる方が彼らにとっては重要なのだろう。「くだらないなあ」とは思うのが、安倍批判だけである程度票は取れるようなのでここから抜け出すのはなかなか大変なのかもしれない。