自民党青年将校たちの転戦

先日、QuoraでMMTの質問をしたのだがどうも反応が良くなかった。MMTというのは西田昌司さんが国会で質問して有名になった理論だ。国が借金を引き受ければいくら引き受けても大丈夫だという夢のような話なのである。だが、西田さんの話を聞くとアベノミクスというのがそもそも撤退の結果生まれ、また別の撤退をしようとしているということがわかる。




東洋経済の「あ、またか」というニュアンスがあまり伝わっていないようだ。経緯を忘れている人が多いからだろう。だが、これについて調べるとそもそもアベノミクスの失敗を証明しようとした野党の戦略がなぜ不毛だったのかがわかる。そもそも撤退戦なので「最初から失敗している」のである。

この議論は消費税増税派と上げ潮派のせめぎ合いが源流だ。もともと構造改革をして経済成長をさせるという小泉・竹中路線があり、それを継承したのが「経済成長を優先させろ」という上げ潮派だ。このときに勝利したのは財務省側の麻生さんである。つまり上げ潮派は一度負けている。

ところが麻生内閣は惨めに瓦解し民主党政権も失敗する。敵が潰れてしまったので結果的に「悪夢の民主党政権」の時にささやかれるようになったリフレ理論が生き残った。この集大成がアベノミクスであった。経済成長を諦めて「財政出動を金融エンジニアリングでファイナンスする」という理論である。リフレ(リフレーション)派など言っているが実は経済成長させられなかったから金融政策で時間を稼ぐという撤退の主張だったのだ。

しかしこのアベノミクスもうまく行かなかった。つまり経済成長は起こらず、その結果としてのインフレも起こっていない。6年成長がなかったので失敗した(あるいは成長させるつもりはなかった)のだが、安倍政権はこれを認めていない。麻生さんの消費税増税は消費市場を冷やすことがわかっているし、もう一つの選択肢である民主党も経済成長させられなかったことがわかっている。だから国民はもうリフレ派を信じるしかなくなっているのである。

今回のMMTが「またか」というのは実はこれを踏まえてのことだ。東洋経済は議論が20年続いていると言っている。自民党で麻生政権になった時「結果的に財務省側が勝った」のだが、自民党自体が政権を失った。そこで財務省側は負けたことになってしまい2年かけて野田佳彦を教育(あるいは洗脳)する。すると民主党が政権を失ってしまった。このあと増税延期が2回あったのだが、財務省は粘り強く既成事実を積み重ねてきたのだろう。彼らは負けつづけたがあきらめなかった。しかしこの粘り強さは国内市場を絞め殺すことになるだろう。

このように経済成長派は負け続けているので政府によるファイナンスを正当化し続ける必要がある。ところが金融政策も行き詰っている。金利をゼロ近傍に抑えているために銀行経営が悪化し始めているのである。ついにスルガ銀行が詐欺的スキームに手を出してしまい、次に潰れるのはどこなのかということになっている。ついには公的資金を注入しなければと言い出す人が出てきた。

戦争でいうとあれもダメこれもダメというレポートが各地から上がってきているという状態だ。Twitterを見るだけでも伝わってくるのだから政府が知らないわけはない。

しかし政府・自民党は反省しないし負けを認めない。今度は、アメリカからまた新しい理論を持ってきて国債をばんばん発行して新幹線をガンガン作りましょうと言い始めている。議論をずっと見てきた人が「ああ、またか」と思ってもなんら不思議ではない。

自民党にせよ民主党にせよ「経済停滞」という敵に負け続けている。そこで撤退を余儀なくされているわけだが、大本営はそんなことは言えない。言えば負けが確定してしまう。ブルームバーグは藤巻参議院議員のコメントとしてすでにMMTの実験室になっておりやがて破綻するという予言を掲載している。ロイターの解説によると安倍政権はこれを否定しているようだ。そして今度はBloombergの地銀の政府資金注入の可能性をささやき出している。

先日来「インパール作戦だ」と言っているのだが、これは例えではない。日本は敗戦を認められず「撤退」を「転戦」といい続けている。その足元では補給なく戦わされている人がいる。賃金は減り、非正規雇用は増え、外国人労働者の「輸入」が始まり、教育機関は予算を減らされ続け、年金の受給年齢を後退させる検討も始まった。そして最後の砦だった大企業さえも終身雇用は守れないと言い始めている。そして地銀の不調も伝わってくる。

日本人の多くは真面目にやっていればいつかは勝てると思う健気さを持っているのだが、これを俯瞰で見るとビルマで竹槍を持たされて「食料は自分で確保して持ちこたえてくれ」と言われているようなものだということが良くわかるだろう。これを「自己責任社会」という。そのうち本当に餓死する人がでてくるかもしれない。

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