国内政治と連動して複雑化するEU議会

EU議会の投票結果が開いた。当初の予想より極右・EU懐疑派の影響は少なくて済んだ(BloombergReuter)ようだ。だがその内容からは複雑な状況が透けて見える。




イギリスでは保守党が敗北しBrexitを主張する人たちが躍進(Bloomberg)した。表面上は進まないBrexitを加速させたいという意思表示なのだろうが、背景にあるのは保守党に反発する勢力の押さえ込みから数年間も続いている内政の混乱である。EUの連携を加速したいマクロン大統領も国民に離反され、結果的に極右と表現されるルペン氏が躍進(Reuter)した。マクロン大統領は国内では政府の赤字解消・年金改革などを控えているという。また、イタリアはすでに五つ星・同盟が既存政党から政権を奪ってしまっているのだが、同盟が躍進した(日経新聞)そうだ。

どの国も内政への不満が高まっており、それがEU議会選挙に反映した形になっている。共通するのは「緊縮財政」という起点と「悪者探し」という結果である。他罰感情をより刺激したほうが選挙に勝てるという傾向がある。

同盟は反EU・反緊縮を訴えて躍進した。かつては北部をイタリアから分離させようという運動だったそうだ。五つ星運動も同じような政策を掲げていたのだが、イタリアでは「生ぬるい」と思われ離反された(朝日新聞)ようだ。

ギリシャでもチプラス首相がEU議会選挙敗北の責任を取る形で総選挙を前倒しすることを決めた(Reuter)そうである。こちらは極左(急進左派)などと言われることがある。Reuterの記事には「対マケドニアの弱腰」が非難されたとなっている。急進左派にナショナリズムを求めるのはどうかとは思うのだが、国民は実は右でも左でもどちらでも良いと思っているのかもしれない。

ナショナリストたちは極右と呼ばれる反移民政策をとる人たちを支援するのだが、移民の人たちは極左・急進左派と呼ばれる人たちを支持(日本には存在しない欧州の新極左とは。(3) EUの本質や極右等、欧州の今はどうなっているか)しているということらしい。だが、結果的にそれらは同じように見えてしまうのだ。

ところがこうしたポピュリズム的な政権は持続可能性に欠ける。その行く末を示す事例も出てきている。

日経新聞によるとオーストリアでは極右同盟が連立政権を作ったものの分裂し、クルツ首相は不信任決議を可決されてしまった。クルツ氏は汚職などに手を染めた連立相手の自由党シュトラッヘ副首相を切り離して支持を得た。しかしこれに怒った自由党が連立を離脱した。これで野党が騒ぎ出し結局不信任案を提出されてしまったのだという。野党はクルツ批判を支持に繋げたいのだが、EU議会選挙で躍進したところを見ると、人々は却って自由党支持を強めるかもしれない。

民主主義国の国民は根本的な問題解決よりは手近な敵を攻撃する政治リーダーを好むことがわかる。そしてその怒りの原因は「今まで受けられた恩恵を取り上げられる」ことである。ヨーロッパの場合、リーマンショックに端を発した経済不安の後に移民が入ってきたのでこれが混同されているようだ。極右・極左ともに財政規律を強めるEUを批判しているが、財政規律が弱まればギリシャのように破綻する国が出てくる。結局、同じところをくるくると回っているだけなのである。

日本では国債を発行して緊縮財政を避けているのでこうした動きが「怒り」のレベルまでは至らない。野党側は安倍首相のやり方を攻撃するだけで、それよりも敵を作り出してポピュリズム的に有権者の獲得を目指すまでには至っていない。このポピュリストに一番近いところにいるのが政治部外者であった山本太郎だが、東京などの一部地域を越えた支持は広がっていないのではないかと思える。日本にはヨーロッパレベルの「本物の困窮」がないのだろう。

さらに面白いのはアメリカの共和党だ。ヨーロッパなら極右を支持しかねないような人たちをトランプ大統領が取り込んでしまった。共和党はあたかも大衆ポピュリスト的な政党になってはいるが形式的には二大政党のままである。だが、アメリカもポピュリズムを組み入れなければ政権は取れない国になっているのではないだろうか。民主党は急進左派的な人たちを取り込み損ねていて、決め手に欠ける大統領候補しかいない。

ポピュリズムは否定的な含みのある言葉であり、本来は「理性的に克服すべきだ」と書きたくなる。だが、現実を見るとどこもそうなってはいない。99%にやさしい資本主義・議会制民主主義が見つかるまで当面の間、先進国の政治はしばらくポピュリズムからは抜けられないのではないかと思う。