政府が北方領土交渉を諦めたらしいという話

G20が迫ってきた。各国首脳が集まる絶好の機会であり、参議院議員選挙を控える安倍首相としてはなんらかの成果を出したいことだろう。その中で一番大きそうなのが「対露経済協力の促進」である。準備作業は着々と進んでいる。




河野太郎外相は31日、日ロ平和条約締結に向け、ロシアのラブロフ外相と東京都内で会談した。北方領土での共同経済活動に関し、6月11日に東京で局長級作業部会を開くことで合意。同29日に大阪で首脳会談を行う方向で最終調整することを確認した。

日ロ首脳、6月29日に会談=両外相、共同経済活動へ協議促進

ところがここに書かれていないことがある。北方領土交渉の進展だ。産経新聞は自分たちの読者をフォローしている。

ロシアのラブロフ外相が31日の日露外相会談後、「(日露の)国境画定の問題は平和条約の締結後に検討する」と発言し、北方領土問題の解決を棚上げする姿勢を鮮明にした。日本政府は「北方四島の帰属問題を解決して平和条約を結ぶ」としてきた。「平和条約」をめぐる双方の立場は正反対で、安倍晋三首相が目指してきた早期の条約締結は難しい情勢だ。

北方領土、棚上げ鮮明 露外相、日本と立場正反対

意地悪なロシアが安倍首相を妨害している。それでも安倍首相は持ち前の忍耐力を発揮して粘り強く成果を求め続けている。こういうお話になっている。産経新聞の読者は大喜びだろうが、これとは全く別の見方がある。そしてそれをなぜか日刊ゲンダイが扱っている。

北方領土返還を巡るロシアとの平和条約締結交渉は遅々として進まない。河野外相とラブロフ外相が31日、平和条約締結に向けた交渉責任者として4回目の会談に臨んだが、成果なし。共同記者発表で河野は「乗り越えるべき課題の輪郭はだいぶ明確になってきている」と強調したが、平和条約交渉の打ち切りで合意したという衝撃情報が流れている。

遠のく北方領土…平和条約交渉「打ち切り合意」の衝撃情報

日刊ゲンダイの見立てだと安倍首相は平和条約交渉を打ち切り経済協力だけを行おうとしているということになる。これでは時事ドットコムとは意味合いが全く違ってくる。「北方領土回復」の棚上げか放棄だからだ。

書いているのはロシア問題の専門家なので嘘をついているとは思わないのだが、一応5月27日のイズベスチヤの記事を探してみた。この記事をGoogle翻訳するといくつかのことが見えてくる。

記事によると、当初日本は「二島であれば返ってくる」と思っていたらしい。ところがロシア側は一貫して「アメリカがロシアを敵視しない」という保証を求めていたようだ。ところが日本側はこれに曖昧にしか答えなかった。心ここに在らずで自分の選挙のことばかりを考えているトランプ大統領にそんな話ができたとも思えない。ちなみにGoogleで色丹は「四国」と翻訳されてしまう。

そこで、安倍政権は「とりあえず前進させられる経済から進めよう」として難しい問題を切り離すことを決めたとロシアは見ているようだ。そのうち最も簡単に実現できるのはサハリン州と北海道のビザなし交流である。時事ドットコムにも「投資協定」と一緒にビザなし交流の話が語られている。つまり、意味合いや背景の説明は異なるがやろうとしていることはどの媒体も同じなのである。

ここにも安倍政権の外交の行き詰まりがっ!と書きたくなるのだが、冷静に考えると「北方領土が返ってくる」と思っている人はそう多くないはずだ。当事者である旧島民も墓参などが許された方が気持ちが休まるはずである。なので、安倍首相が「現実路線に転じた」ことを非難する人が多いとは思えない。

逆に変に隠し立てをしたり「忘れてもらおう」とすると返って「後ろ暗いことがあるのではないか?」というようなことになりかねない。特に国民の支持が得られない野党は攻撃材料を探しているはずで、北方領土交渉の失敗というように言いたい人が多いはずなのだ。

安倍政権は本当に国民への説明が下手だと思う。

この一連のお話からもう一つのことが見えてくる。それは丸山穂高議員と維新の一連の騒動の意味づけである。

維新はG20成功に協力して中央・自民党に貸しを作りたかったはずだ。今にして思うと、丸山議員を北方領土に派遣したのもその一つの表れだったのではないだろうか。ところが丸山さんは酔っ払って「戦争でもしないと取り返せないですよね」などと口走ってしまい、交渉失敗のリスクを作ってしまった。維新は今関係者に平謝りしているようだ。かつて派閥がある頃の自民党なら、ボスが鉄砲玉に「ここは跳ねるタイミングではないよ」と言い聞かせたのだろう。今はどの政党にもそういう人がいない。

いずれにせよ、6月の末頃から7月の初旬にかけては「日露経済交流が推進される」というニュースでいっぱいになるはずで、この勢いのまま参議院選挙に突入するのではないかと思われる。その陰で北方領土交渉は忘れられてゆくのかもしれない。