経常収支黒字国 – 日本の歴史的ラッキー

これまで「日本はうまくいっていない」というような文章を多く書いてきたのだが、「必ずしもそうでない」ということを書いてみたい。




韓国の経済がうまくいっていないのだという。ダイヤモンドオンラインが韓国「ウォン」の下落が示す、文政権の失策と韓国経済の厳しい現実という記事を出している。韓国を引き合いに出すと「メシウマ感情だろう」と思われるかもしれないのだが、隣国の経済を見ると日本の経済がよくわかる。ラッキーだったということもわかるし、その幸運がいつまでも続かないであろうということもわかるのだ。

ダイヤモンドオンラインの記事は主に文在寅政権の失策という観点で書かれている。もちろん、それだけでもないとは思う。韓国は後発先進国なので資本面で不利な立場に置かれ続けてしまうのだ。貿易に依存している韓国では国際貿易が滞ると収支が赤字になる。外国からの投資を受けているので利払いをしなければならないからである。そしてこの「貸し手と借り手」というポジションがなかなか消えてなくならないし、何かあった時の余剰貯蓄がない。

なお、経常赤字転落の背景には、海外への配当金支払いという要因もある。例年4月に韓国企業は海外投資家に配当金を支払い、所得収支の落ち込みから韓国の経常収支は他の月よりも少なくなる傾向にある。

韓国「ウォン」の下落が示す、文政権の失策と韓国経済の厳しい現実

米中貿易戦争が激化すればこの状況は長引くだろう。そうすると政府が財政支出を増やして乗り切らなければならない。かといって国内企業に潤沢な資金はない。だから、企業から国家への貸付もできない。後発先進国の取れるオプションは日本以上に少ない。このため、とりあえずなんとかしようと急激に最低賃金を上げてしまったために足元の経済さえも冷え込ませてしまっている。こうなると「リベラル政権はやはりだめだ」ということになってしまうのだ。

こうなってしまったのは何も韓国がダメな国だからではない。韓国が後発先進国だからである。先発先進国はすでにインフラ投資が終わり、資金を貸す側に回っている。その代表がドイツと日本だ。日本では企業が大きな貸し手になっていて、海外企業と日本政府に国債という形で貸し付けている。(ダイヤモンドオンライン

日本は単に黒字というだけでなく、ドイツについで二番目に経常収支の黒字額が高い国なのだ。日経新聞は国際収支発展段階説というコンセプトでこれを説明している。日経は5段階目と言っておりこの後取り崩し段階に入る(コトバンク)はずだ。しかし、少なくともあと一世代くらいは余裕がありそうである。

実は日本の課題は、貸付で得た余剰資金をなんらかの形で国内市場に還元して余裕があるうちに次世代型の人材と市場を育てることなのである。先発先進国にはモデルがないので自分たちでモデルを作って行かなければならない。これはこれで大変なことなのだ。

韓国はこのまま「先進債権国」に利子を支払うために働かなければならない。つまり自分が得意なものを伸ばして行こうなどというような贅沢は許されず、海外に売れるものを作り続けなければならない。K-POPでいうと海外で受けそうなものをいち早く見つけて歌って踊り続けなければならない。だが、日本はそこを先に抜けてしまったために、その気になれば「自分たちが得意なものを伸ばそう」と考えられる余裕がある。にもかかわらず日本人はなぜか後発先進国(韓国)や中進国(中国)と張り合ってばかりいる。一度染み付いたマインドセットからなかなか抜け出せないのだろう。

MMTのように「いくらでも国債を印刷していい」というのは国債の裏打ちが徴税権であることを考えると戯言だとは思うのだが、そんな戯言が成り立つのは日本が債権国だからなのだ。

こうした状況を冷静に把握するためには他国の事情について冷静に観察すべきである。妙に侮ってはいけないし、逆にあまり悲観的になりすぎてもいけないわけである。