政権は選挙目当てに国際的緊張を作り出そうとしたがどこかこじんまりしている

日本が韓国に対しての制裁措置を発表した。安全保障を理由にして半導体関連製品の審査を厳しくするという。いったん優遇国になっているのにそれを取り下げるのは異例だ。




表向きは単なる適正化だが、実際には徴用工問題に関する報復なのだろうと言われているそうである。日本が自主的にやっていたことなのでWTOの規制には引っかからないだろうといわれているという見込みがあるようだが、報復だと見なされればもちろんなんらかの判断が下る可能性はある。

今回は「韓国側の半導体産業に過失があるわけではない」ので合別の理由があるのではということが疑われる。ここに疑義があると日本も公平公正な国ではなく政治家の思惑で貿易ルールを歪めるという評判がつく可能性が高い。するとその他の裁定でも「日本はそういう国だから」となり結果的に損をする。

それを知っている元官僚の細川昌彦さんが「きっといろいろあったんだろうが政府は言えないんだよ」と説明してあげている記事を見つけた。細川さんの優しさなのかもしれないが、これを読むと「やっぱり選挙前だからなあ」と思ってしまう。

そこまでしてでも今回の措置に乗り出したのはこれが「溜飲を下げる」効果があるからだろう。つまり、相手が苦しがっているのを見て楽しいと思う人がいるということになる。いわゆるメシウマという感情だ。有権者の中には合理的判断ではなく非合理的判断で動く人がいるのだ。

朝鮮日報にも「報復で困るのでは」という記事が出ている。彼らも文在寅政権を叩きたいので「敵の敵は友」という感じなのだろうし、日本のメシウマメンタリティを理解していることになる。その意味では日本的というより東洋的な感覚なのかもしれない。なぜか朝鮮日報は漫画まで作って、心なしか嬉しそうに見える。

だが、実際にはWTO提訴の危険がある上に、日本の企業にも影響はある。さらにエスカレートすれば地方の観光産業などに打撃が出るかもしれない。観光客の減少につながるからだ。つまり、トランプ関税と同じように熱烈に支持している人たちを苦しめる可能性が高い。こうなると非合理ではなく不合理だ。

加えて、菅官房長官が「徴用工問題の報復」を仄めかし世耕経産大臣も同様のことを言っているようである。安倍政権のネトウヨ系支持者たちの中には消費税増税で不満をためている。憲法改正問題も進まない。つまりなんら勝ち点がないわけである。そこで日本人は誰かをいじめてそれを乗り切ろうとするわけだ。ここに不合理性がある。

いじめで徴用工問題は解決しないしWTOで提訴されるリスクも生まれる。しかしそうした損をかぶってでも相手にいたい思いをさせたいという「スパイト(嫌がらせ)行動」が日本人には見られる。絶対に相手をギャフンと言わせてやるという、そのスパイトさが内輪に向くのだ。

観光業が被害を被ると「うるさいだまれ反日が」という声が飛ぶ。もともと韓国と楽しくやっている人たちに嫉妬心がある上に、普段抑圧されている感情を半匿名で解放しようとする。そして問題の解決が遅れれば遅れるほど、その苛立ちは外ではなく内に向かうことになるだろう。

ここから安倍支持者の中のネトウヨと呼ばれる人たちが合理性とは別の世界に生きていることがわかる。うまくいっていない学級がいじめに走るような感じである。

これは様相としては戦中時に似ている。戦争という究極の閉塞感が打開できないと感じた人々は周囲を抑圧する側に回った。楽しみを見つけようとしている人たちを非国民と呼ぶ空気が蔓延した。つまり閉塞感がティッピングポイントを越えるとそれは戦中のような閉塞感を作り出すはずなのだ。

もちろん同じような姿勢はトランプ政権にも見られる。一番の違いは彼らが「具体的な成果」を求める点である。常に前進している感じがアメリカ人は好きなのだ。一方で日本人は具体的な前進がなくても構わない。相手が苦しんでいるだけで満足してしまい、自分たちが失点し始めてもそれが気にならなくなってしまう。潰し合いと牽制は外部に解放されるまで続く。解放されたら解放されたで、今度は口々に「あの空気は息苦しかった」と言い出す。

韓国の徴用工問題に端を発したこの日韓の意地の張り合いにはこのようないいようのない器の小ささを感じる。トランプ大統領は鳴り物入りのキャンペーンで大々的に「中国は困っている」と主張して拍手を浴びるのだが、日本では官房長官が薄ら笑いを浮かべて「まあ影響がなかったわけでもないですよね」と仄めかしてみせるのだ。