遅れてやってくる経済実感と消費税増税。そして何も提案しない野党の作戦。

いろいろな人の質問を見ていると「消費税増税を延期して景気を浮揚させたほうがいいのでは?」という感想が多く出てくる。これを見て「今は景気が悪い」とみんなが思っているんだなと気がついた。




まず、日経新聞に税収のグラフが出ている。2009年ごろを境に上昇に転じている。所得税は右肩上がりになっている一方で消費税でフラットになっていて税率が上がることで引きあがっている。つまり消費は伸びていないが所得税は上がっているようだ。ここで総賃金について見たくなる。所得が上がれば税金が上がっても構わない。

ところが「統計偽装」の影響がありこれがどうなっているのかがよくわからない。一応政府統計を信じるとこれも上がっている。政府を信頼すればなんとなくバランスは取れていることになるが、今度は「わざわざ消費税を上げなくてもよかったのでは」と思えてくる。実はこの辺りに偽装の動機があるのかもしれない。

いずれにせよ「経済はそれほど悪くなっている」という証拠はない。

実は大企業の景気判断もそれほど悪くなかった。こちらは時事通信が日銀短観をまとめている。これも2009年ごろに深刻に落ち込んでいて、そこから急速に回復している。この記事は都度都度に書き換わるようだが2019年7月現在それほど落ち込んでいるというわけではないということがわかる。

これを総合的に見ると、日本の景気は2009年ごろが底になっていてそこから回復しているといえそうだ。この落ち込みはリーマンショックによるものであって麻生政権が引き起こしたものではない。

しかし、実際に不景気になると政権に攻撃の矛先が向かう。「なんとかしろ」ということになるのだがどうにもできない。すると選挙区で突き上げられてそれが政党を動揺させるのである。回復期は民主党政権の最初の時期に重なるのだが、民主党政権が政権運営に不慣れであり地震や原発事故も起こった。そこで人々の記憶に「経済が混乱していた」という印象がついてしまったのだろう。広報の失敗だが経済政策の失敗ではない。

では、民主党政権が景気をよくしたのかと問われるとそれも違うように思える。つまり混乱が収まると自然に景気が回復に向かった可能性が高い。ここから言えるのは「人々は景気変化を遅れて実感する」ということと因果関係を「目の前にある政権と勝手に結びつけてしまう」ということである。人間は動いている事象について因果関係を正しく判断できないのだ。特に選挙運動が始まってしまうと「落ち着いて過去を見直してみましょう」などという悠長なことをいう人は誰もいなくなる。

ここで注目すべきなのは日銀短観が2019年に入って下がってきていることである。下がっているのは製造業であり、サービス業も追随して下がり始めている。これは外国の状況とリンクしている可能性が高い。トランプ大統領が「利上げ批判」していたのだが、FRBも利下げを仄めかしているそうだ。貿易戦争から景気が下振れする可能性もある。確実に経済が下がるとまでは言えないが、不確実性は増している。

ただ後から見ればこの開始時期のズレは小さなものとして無視されるだろう。消費税増税が10月にある。ここで経済の下振れが顕在化すれば人々は消費税と経済下降をリンクさせるはずだ。

前回の民主党の<失敗>は景気の底で政権を引き継いでしまったことだった。いろいろアイディアは出していたが実現可能性が低いものも多かった。ということは安倍政権が景気の底にぶつかるのを待ちながら「自分は何も提案しない」方が得なのである。そして消費税の増税と景気の底が重なれば「それを消費税のせい」にすることもできる。

それはもしかしたら消費税増税とは関係がない景気の悪化かもしれないのだが、あとは「悪夢の自民党政権」とほのめかすだけで良いことになる。やられたらやり返せだ。何も提案しないことは国民にとってはかなりのマイナスだが、国民が冷静に政党の実力を判断してこなかったのもまた事実である。

今回の参議院選挙に目立った争点がないのは実はそのせいかもしれない。みんな景気が悪くなるのを実は待っているのかもしれないのである。