権益とthe interests




中東に関して面白いニュースを見つけた。ペンス副大統領が「中東権益を守る」と宣言したというのである。共同通信が伝えている。

ここでアメリカがイラン関連でどんな権益を持っているのかが気になった。アメリカの基地があるという話は聞かないし、国内で石油が取れるのだから中東はそれほど重要地域ではないはずである。

ところが英語の記事を見て驚いた。「Pence: U.S. ready to protect its interests as Iran makes nuclear threats」となっている。its interestsである。興味・関心というような意味である。辞書で調べてみたが「権益」という言葉はits interestsの訳語としては流通しているようで、間違いとはいえないようだ。

権益というと「既得権益」というようにすでに持っている権利というような含みを感じる一方、intesrestsは興味関心なので「あの子の持っているお菓子が欲しいな」というようなものにも使える。つまり、日本人はこの記事をみると「すでに持っている過去の権益」を想起するがアメリカ人にとってはそうではないのではないかと感じたのである。

質問を出してみたのだが、英語が正確かどうかわからない上にこの言葉のズレが伝わることはないのかもしれないなあと思った。閲覧はされたが回答はつかなかったので多分アメリカ人もよくわかっていないのではないかと思う。

ロイターの記事を読むとペンス副大統領が言っているのは「あの地域には大勢のアメリカ人が住んでいるので彼らを保護しなければならない」というようなことなのだが、それはどの地域にも言えることである。さらにイランが勝手に緊張を高めているわけではない。アメリカも当事者である。ただ、演説の場所は福音派の集会だ。アメリカ人は正しいんだからどこにいっても好きなことをやるぞ!と言っているだけなのかもしれない。

例えて言えば日本が韓国との間の緊張関係を高めておいて、神道右派(あえて名前は出さないが)の集会で「日本は正しいんだから攻撃するぞ」と言っているようなものである。

実際にそういう質問を出す一般国民もいる。この質問は韓国をきっかけに憲法9条改憲まで持って行けるのではないかと真剣に質問している。コメントで理由を聞いてみたのだが口調自体は極めて落ち着いていたし、多分ニュースもよく読んでいる人なのではないかと思う。そしてその動機は極めて切実である。ただ、なぜかアメリカは信頼できるが韓国は北朝鮮と組むという前提を持っているようだ。彼は多分そのことを「よく知っている」のであろう。

ベトナム戦争のころは「共産主義者が生活を破壊してしまうかもしれない」という漠然とした恐怖心が戦争へのドライバーになっていた。だが現在もそのような状況はあまり変わっていないのかもしれない。我々はそれほど賢くなっていないのだ。

この疑問の起点は憲法第9条だ。憲法第9条は軍隊を無理やり軍隊でないといっているのだから、それを変えるべきであろうという意見を持った上で、しかしそのためにはアメリカの戦争への巻き込まれ不安を解消しなければならないというところまで来た。

そこでアメリカの戦争というのは何なのだろうか?と考えたわけだ。今あるイランとの関係を見ると、もともとは「選挙キャンペーン」と「軍需産業の維持」という目的を持った人たちが緊張を高めている様子がわかる。アメリカのポピュリズムに自動的に巻き込まれてはたまらないのだが、日本は石油を8割がた中東に依存しており「無関係でございます」とは絶対に言えない立場にある。

このような理不尽な状況が改善されたのなら、あるいは合理的に憲法第9条を正常な状態に近づけても良いのでは?と思えるのだが、現状は更に酷くなっているようにしか思えない。アメリカの複雑さに耐えかねた人たちが「問題は全て非白人のせいだ」と思いこんでいるようにしか見えない。彼らにはイスラム教徒やヒスパニックが悪魔のように見えているのかもしれない。

イランとアメリカの交渉を見ていると、彼らがもはや冷静に議論をしているとは思えない。特にペンス副大統領の演説はキリスト教右派に向けてのもののようなので特に内向きで冷静さがない。ロイターの記事では「 an evangelical Christian group that advocates for support for Israel」となっている。イスラエルへの支持を訴えるエバンジェリスト派のキリスト教グループという意味である。

一方、日本人は外交的に諸外国と関係を維持するということをやってこなかった。ゆえに内心では焦りを感じていて「今のうちに軍隊を持っておかないとやがて周辺国に仕返しされるのでは」という恐怖心を募らせているのかもしれない。さらにアメリカのことはよく知っていると思い込んでいて無理な改憲論を進めてしまう。背景にあるのは感情なので議論が起こると彼らは感情的になる。憲法議論が最終的に感情対立で終わってしまうのはこのためだろう。

多分、日本人が自分たちの手で改憲議論を行うのは無理だと思う。「よく知っている」と思い込んでいる人ほど感情に彩られた歪んだ情報を持ってしまっているからである。