日本が戦争するかしないかはアメリカ上院次第になってきた……

Twitterで朗報を見つけた。下院が大統領の戦争権限をブロックする法律を可決させたという話である。27名の共和党員が造反したらしい。




27 Republicans just joined Democrats to block Trump from going to war with Iran without congressional approvalというビジネスインサイダーの記事である。日本ではすでに多国籍軍が編成されるような雰囲気の記事ばかりが出ているので朗報だなと思った。

もともとアメリカ大統領は戦争ができる権利を持っていたようだが、徐々に制限されてきているようだ。アメリカでは宣戦布告は議会の権限のようだが、大統領は宣戦布告なき戦争ができる。これをどこまで認めるのかというのが政治課題になっている。ベトナム戦争と朝鮮戦争の反省から生まれたと書かれている。

だが、記事というものはよく読んでみなければならない。Twitterでこの件を紹介しているアカウントは「戦争を下院がブロックした」と読めるような発言になっているのだが、実際の記事の内容には不吉な一文がある。

The amendment will likely be excluded from the final version of the defense bill, given a similar measure failed in the Senate last month.

27 Republicans just joined Democrats to block Trump from going to war with Iran without congressional approval

大統領権限を奪う議案は前回も提出されたが失敗したと言っている。つまり今回も上院で擦り合せる時に否決されてしまう可能性があるということだ。つまり風向きによって、日本の運命はどうなるかわからないということになってしまうわけである。

安倍政権がこの戦争への参加を拒否できるとは思えない。上院の風向き次第では日本は自動的に参戦することになるだろう。行政府は守る意思がなく資本は判断しない。憲法第9条は今の日本では単なる空文でしかない。憲法上戦争ができないとはいえ、見捨てられ不安を抱えアメリカに頼まれたらノーと言えない安倍政権は憲法も法律も歪めてアメリカへの追随を決めてしまうのではないだろうか。そして、これは日本の議会を必ず混乱させる。

多くの日本人もアメリカに対して「見捨てられ不安」を持っている。一方で「巻き込まれ不安」を持っている人もいる。そうなると日本の政治議論は「参戦の是非」一色になり決して解決しないだろう。こうなると消費税議論も景気議論も全て吹き飛んでしまうかもしれない。このように重大な決議なのだが日本では全く報道がない。不勉強なのかそれとも参議院議員選挙への影響を恐れているのかは全くわからない。

アメリカを支持している人たちは未だにアメリカには中長期的な戦略を持った人たちがいて「世界平和のためにはどうしたらいいか」を考えてくれていると思わせたいようだが、SNSでダイレクトに情報が入ってくる現代、そんなことを信じるのは無理な話だ。そして、それがますます見捨てられ不安と巻き込まれ不安を増大させる。根底にあるのは「日本人は決して話し合えない」という共通の了解事項である。

日本の有識者たちはこれまで作り上げてきたパズルのような世界観が一瞬にして崩壊するのを恐れているのだろう。いったんパズルが破壊されてしまえばもう元のような絵は作れないだろうからだ。それは彼らにとってはカオスであり恐怖だ。

ホルムズ海峡の日本船舶、守るのは有志連合ではないという日経ビジネスの記事を読んだ。そんな関係者たちの苦悩が現れているような記事だった。日本の自衛隊なり海上保安庁が日本のタンカーを守るという話は個別自衛の範疇で議論できる。そして、統合幕僚会議事務局長まで務めた幸田さんとおっしゃる方が日米同盟を擁護したい気持ちもわかる。単純な件はこれまでの世界観でかろうじて説明ができるわけだ。

ただ、トランプ政権はこれをイラン包囲網とリンクさせようとしている。幸田さんが心配しているようにこの話はアメリカの軍事作戦(多分戦争ではなく圧力を加えてイランを交渉に引っ張り出すのが目的なのだろうが)とリンクされて語られることになるだろう。つまり、アメリカの作戦に参加して集団的自衛権を行使するか、何もしないかという極端な議論が展開される可能性も高い。今、日本の中枢の人たちはこれをどう軟着陸させるかという議論を行っているはずだ。そしてその議論をしているのは多分官邸ではないだろう。

こうした「配慮」をよそに、政治家は議論を「安保法制の間違い」や「改憲議論」とリンクさせてしまうかもしれない。無理な作戦で死者でも出れば国民は動揺し野党は攻撃する。しかし石油が入って来なくなれば今度は「護憲を盾に国民を餓死させるつもりなのか」という泥仕合になる。さらにこれは「韓国が北朝鮮と組んで攻めてくるかもしれない」という人たちや、中国が尖閣を奪いにくると信じ込んでいる人たちを巻き込むことになりかねない。まさにパンドラの箱が開くか開かないかという状況なのだ。

議論というのはある時点までくると急速に進展するものだなと思う。日米同盟は維持したいが戦争には巻き込まれたくない。過去の法体系は正当化したいが使用して失敗したくない。こうした矛盾が積もり積もって決して解けないパズルのようになっている。しかし、不思議なことにそれが一枚の風景画を完成させている。それは単なる砂に描いた絵に過ぎないのだが、その砂絵は70年もかけて作られたものなので、それを実在の風景だと誤認している政治家たちもいるかもしれない。