トランプ大統領 – 気に入らないものは全部壊してやる!

G7が大混乱したようだ。混乱を引き起こしたのはトランプ大統領である。事前に共同声明が出せないことが問題になっていたが実際の混乱ぶりはそれ以上だったようだ。特に目立ったのがアメリカとヨーロッパの対立である。




まず、イランのザリフ外務大臣がフランスを訪問しマクロン大統領らと会談した。ヨーロッパの高官たちと会談したことからヨーロッパがアメリカとイランが緊張関係になることを望んでいないことがわかる。この訪問は一部の関係者にしか知らされていなかったようだ。なぜマクロン大統領がこのような行動に出たかを書いている記事は見つからなかったのだが、トランプに敵対的と思われるブルームバーグはこう書いている。

Zarif is a lightning rod for the Trump administration, which sanctioned him personally just recently and heavily restricted his movements during a recent visit to New York. Macron had wanted to shake up the summit, and he has already angered the American side, which accused him of trying to manipulate the agenda to embarrass Trump.

Macron Invites Iran’s Zarif to G-7 Sidelines, Risks U.S. Outrage

トランプ政権はザリフ外相がアメリカに入国できないようにしており、ザリフ外相は国連で外交に参加できない。マクロン大統領はこのことを知っていてトランプ政権を揺るがそうとしたのではないかという観測である。

記事が言っているようにアメリカ側は「G7を使ってトランプ大統領をはずかしめようとしている」と考えて当然だろう。さらにマクロン大統領は共同声明が出せない無能なリーダーであるという印象を払拭したかったのかもしれない。朝日新聞はイランとアメリカが対話するきっかけを作れたというマクロン大統領の総括を紹介している。マクロン大統領がトランプ大統領に苛立っている様子はわかるし、民主主義国のリーダーが政権維持のためになりふり構わなくなっている様子もわかる。

意趣返しとしてトランプ大統領はロシアを復帰させてはと提案したようである。クリミアをめぐってロシアとヨーロッパは対立しているので、これは嫌がらせになる。ヨーロッパはこの問題で絶対に折り合えないからだ。結局この問題は最後まで対立が続いた。

初日はトランプ氏が、ウクライナ南部クリミア半島併合を機に2014年に追放されたロシアのサミット復帰を提起。欧州側は「時期尚早」との立場で、公式発表はないものの、双方が主張をぶつけ合ったとみられる。

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もともとイランの権益は英米のものだったので、今回のイラン封じ込めに熱心なのはこの2カ国である。残りのヨーロッパの国々はなんとか調停しようとしたのだろうが、イタリアもドイツも政権が崩壊途上にあるために調停に参加できない。フランスとしてはリーダーシップを示せるチャンスだったのだろう。

日本ではこれから「欧米の間を取り持って安倍首相が調整役を買って出た」というお話が流布されることになるのだろう。実際には欧米の間で右往左往しつつ自分たちの国益も満足に守れなかったことが浮き彫りになった。菅官房長官は、国の自動車関税の撤廃が見送られたことについて「米国側に押し切られたという指摘は全く当たらない」と述べ苦い表情を浮かべた。幸いなことにこれは大きな問題にはならないだろう。日本人は韓国叩きに夢中なようで内閣支持率は上がっているそうだ。

菅官房長官が苦い顔を隠さないことからわかるように、日米の会談でもかなりいろいろな問題があったようだ。まず安倍首相は朝鮮民主主義人民共和国のミサイル問題でアメリカの理解が得られなかった。今後いろいろ取り繕うことになるだろうが、トランプ大統領が地域の安全保障に興味がないということは明らかだ。日本のテレビはこれはやらないだろうと思ったのだがTBSでは恵俊彰がトランプ大統領に怒っていた。要するにアメリカは「日本の問題なんだから勝手にやれば?」と言ったのである。

首相はすぐに「常にトランプ氏とは緊密に連携している」と力説。トランプ氏は「日本の首相がどう感じるかは理解できる。シンゾーと私が首脳である限り、日米はいつも同じ考えだ」と気配りを示した。しかし、両首脳の「考え方の違い」(米側記者団)は誰の目にも明らかだ。

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さらに、日米貿易交渉もアメリカに妥協する形で合意がなされそうである。日本側は妥協していないように見えるために工夫しようとしたようだが、アメリカは「いいことなのですぐに発表しよう」として日本側の記者がいない中で会見を強行したようだ。自動車関税の撤廃を諦めたことを記者たちに突っ込まれないようにしたのかもしれないなどと思ってしまう。

日本が米国に要請してきた工業品の関税引き下げでは自動車本体の関税撤廃を先送りする。今回の貿易交渉とは別に、今後も協議を続ける。米国は離脱したTPPで「自動車関税を25年で撤廃する」と合意した経緯がある。

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さらに、トランプ大統領は「日米貿易交渉とは別に日本がトウモロコシを買ってくれる」と表明した。G7で何もお土産をもたせてもらえなかったトランプ大統領は日本のトウモロコシ買い付けだけを喧伝するのではないか。しかし、最近の言動からわかるように安倍首相は便利な道具扱いでトランプ大統領のパートナーと見なされることはないだろう。ネタニヤフ・イスラエル首相と違って安倍首相が選挙の集票に役に立つことはないからである。

いいところがなかった安倍首相は内閣改造を打ち出した。これは新聞・テレビにとってみれば生肉みたいなものだ。つまり、それを追っている間は内閣批判は起こらず、トウモロコシや自動車関税の件は都合よく忘れられてしまうのだ。

G7に出席中のトランプ大統領が中国に対して圧力をさらに強めたというのがABCニュースのトップニュースだった。結果的に株価が下落し円が1円69銭も高くなっている。G7は先進国の対立と経済摩擦の激化を浮き彫りにしただけだった。誰の目にも役割は終わったことがはっきりしたのではないだろうか。