パリとブリュッセルはどれくらい近いのか

まずは基準になる日本のマップから。東京を中心とすると仙台から名古屋を経て大阪までが地図に収まる。だいたい新幹線で2時間から3時間くらいの距離で、海外旅行の行き先としてセットで語られることが多い。

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ブリュッセルを起点にした同縮尺のマップにはロンドン、アムステルダム、ケルン、ドルトムント、フランクフルト、パリが入る。ブリュッセルからパリまでは特急タリスで2時間かかる。パリからロンドンまではユーロスターで2時間程度だ。つまり、ブリュッセルとパリの間は感覚的に東京から名古屋あたりの距離であることが分かる。

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この地域は国境を越えての交流が盛んだが、国境に対する意識も違うかもしれない。この狭い地域に言葉が全く通じない諸民族がひしめき合っていて、何百年も戦争を繰り返していた。このように狭い国同士で国境を設けていては通商の邪魔になるとは分かっていても、それをなくす事ができないという歴史が長かったのである。

さて、アメリカだとどのような距離感なのだろうか。ニューヨークを中心にすると、ボストン、フィラデルフィア、ワシントンあたりまでが射程になる。北東回廊という高速鉄道路線が引かれている地域に該当する。こちらも1回の観光で訪れることができるエリアなのかもしれない。北西部にカナダ国境が少しだけ見える。ロングアイランドは小さな島にしか見えないが、横断すると鉄道で2時間45分かかるのだそうだ。距離も東京-浜松くらいある。

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アメリカといっても東と西では状況が異なる。ロスアンジェルスを起点にするとサンフランシスコとラスベガスが射程に入る。ほとんどがカリフォルニア州だ。こちらも1回の観光で訪れることができるぎりぎりの広さかもしれない。ロスアンジェルスとサンディエゴの間には鉄道が走っているが、サンフランシスコに行くのには飛行機を利用する人の方が多いのではないだろうか。北カリフォルニアは感覚としては別の州に近い。一方、メキシコが近い。スペイン語系の住民も多く、ファストフード店などに行くと「英語が通じないのでは」と思う事も多い。カリフォルニアの家庭の40%以上が英語以外の言語を話すという統計もある。

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デリーを中心にすると、ジャイプールとアグラ(タージマハルなどが有名)が近いことが分かる。1回の観光旅行でセットになる典型的な3都市である。北東に見えるのは中国だが、直接行き来することはできない。この3都市の間はそれほど離れていないように見えるが、鉄道で移動するとそれぞれ4時間以上かかる上に遅延も多い。

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一方、同じ都市圏と言ってもよい程近いのに遠く離れているのが朝鮮と韓国だ。ソウルを中心にすると、韓国全土と朝鮮のほとんどが同じ地図に収まる。この狭い地域で戦争状態が50年以上も続いている上に、ソウルは休戦ラインに近い。ソウルから釜山までの所要時間はKTXで2時間50分だそうだ。昔ながらのセマウル号で5時間の所要時間だ。平壌から丹東の手前にある新義州までは3時間45分かかるとのことである。

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戦争状態といえば、シリアの首都ダマスカスはどうなっているのだろうか。驚く事にレバノンやヨルダンとは目と鼻の先といった近さにある。シリア北部からだとトルコが近い。内戦が長い間続いているのだから、多くの国民が逃れて行くのも当たり前なのかもしれない。ヨーロッパに多くの難民が流れて大騒ぎになったのだが、トルコ、レバノン、ヨルダンにはそれ以上の人数の人たちが逃れているのだという情報もある。

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これを見ると東京という都市がいかに外国から離れているのかということがよく分かる。地図の中に国境が引かれていないのは東京の地図だけだ。同じ日本でも福岡を中心にすると違った図が見える。韓国が射程に入るからだ。東京に住んでいる人たちが、移民とか外国人というものに実感がないのもある意味当たり前なのかもしれない。

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