馬鹿な左翼が増えたのはGHQのせいかもしらん

石井孝明さんというジャーナリストが「頑迷な左翼が増えたのはGHQの教育プログラムのせいかもしれない」と仄めかしていた。GHQのは日本の教育を改悪して考える力を奪ったのだそうだ。頑迷な左翼が多いこと自体は否定しないが、日本の矛盾をすべてマッカーサーのせいにしても問題は解決しないと思う。いずれにせよ、面白そうなのでカウンターを考えてみた。

アメリカに住んでいたとき、カフェのテレビで討論番組をみていた。討論番組では福音派の男性が「子供を学校に通わせない」といきまいていた。学校で進化論を教えるからだそうだ。嘘を教える学校に子供を通わせることはできない、というのが彼の主張だった。周囲の人たちが「化石が出ているから進化論のほうが信憑性がある」と言っても頑として聞き入れない。次第に討論はエスカレートしてゆき福音派の男性は怒鳴り始めた。私は悲しくなりカフェのマスターに「なぜアメリカにはこのような頑迷な人が多いのか」と嘆いた。するとユダヤ人のマスターが面白いことを教えてくれた。

その昔、マッカーサーと言う人がユダヤの資本家たちつるんで、アメリカ人がものを考えないように教育プログラムを変えたんじゃ。科学的な教育をなくせば、アメリカ人たちは合理的な思考力をなくして喜んで企業のために働くようになる。自分たちの権利ばかりを主張してまとまらなくなるから労働運動もつぶせる。それが「この国の自由」の本当の意味なんじゃよ。

僕は「なるほど」とひざを打った。「テロで殺されるよりも多くのアメリカ人が銃で殺されているのに、誰も銃規制を訴えないのはアメリカ人が合理的に思考できないからなんだ」。マスターは否定も肯定もしなかったが、なんとなく肯定しているように思えた。

これが妄想だといいと思うのだが、頑迷なアメリカ人が多いところを見ると案外真実が含まれているのかもしれない。

というか、これは完全に妄想だ。頑迷なアメリカ人は多いことは確かだが、マッカーサーとは全く関係がない。もちろんアメリカには優秀な人たちも大勢いる。同じように日本で教育を受けた優秀な人もたくさんいるわけだ。「自由と権利」についても同じで、うまく活かせない人がいる一方で、立派に国のために尽くす人も多い。中には国のために働いて、戦争で四肢を失ったり大怪我をしたアメリカ人もいるのだ。

このエントリーを書いていて、大学生の元ルームメイトにたびたび聞かされていた言葉を思い出した。Stupid Americans(馬鹿なアメリカ人)という言葉だ。大量消費に明け暮れて物事を真剣に考えないアメリカ人を指す言葉である。彼はイランからきた移民の息子だった。LAにはお金持ちのイラン人がたくさんいるが、そうでない人たちも大勢いる。

左翼って馬鹿だなあと考える日本人と同じように、アメリカ人って馬鹿だなあと思うアメリカ人もいるのだ。単に馬鹿だと思っているうちはいいのだが、それが別の感情に変わることもある。

彼は大学でイスラムサークルにはまり、だんだん過激なことを言うようになった。最後には「一神教を信じない人とは暮らせない」と言われて追い出された。僕がアメリカにいたのは9.11のずっと前だが、こうしたルサンチマンが蓄積してやがてホームグローンと呼ばれる人を生み出すことになったのだと思う。自分以外は堕落している。それは教育が悪いからだ、自由が悪いからだ、というのはどこの国でも聞かれる言葉なのだ。

もちろんすべての人がそうなるというわけではないのだろうが、他人の自由や権利を恨む意識の中からやがて過激な方法で他人の自由を奪ってもよいと思う人たちが出現することがある。アメリカは徐々に不自由な国になりつつあるが、誰もその傾向を止めることはできない。「どこにでも安全を脅かされずに自由に出かけて行ける」という当たり前のことを平和で幸せな日本人はもっと自覚する必要があるのではないかと思う。

失うまでは気がつかないのかもしれないが。

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