セブンイレブン – 問題を悪化させる構造

今回は、セブンイレブンで経験した個人的な問題から、組織がなぜ問題を解決できないかを考える。いろいろな要素があり整理ができないのだが、一週間程度経って思ったのは「持たれ合いになった集団では問題は悪化するのだなあ」ということだった。誰も最終的な責任を追わないという姿勢があるので、最終的には炎上させないと問題が解決しないのだ。

たいていの問題はローカルで燃えるだけなのだが、たまにネット全体を巻き込んだ炎上につながる。対応がなされるが、既に多くの人をうんざりさせている程度の解決策に過ぎないので「では燃やしてしまえ」ということになってしまうのだろう。

  • 非正規雇用を中心とした現場の知識不足とミス。
  • 忙しすぎる現場マネージャーの隠蔽。
  • 解決されない問題になれてしまって当事者意識を失ったカスタマーセンター。
  • 当然フィードバックが得られないので同じ失敗が繰り返される。問題を防ぐためのIT投資もされない。
  • 短い間にも伝言ゲームが起きている。

セブンイレブンで買い物をして91円をデビットカードで支払った。普段ならすぐにオンラインバンキングで買い物の記録がつくはずなのだが、今回はつかなかった。まあ、そういうこともあるだろうと考えて放置していた。

こちら側のミスは売り上げ伝票(レシート)を捨ててしまったことだった。買い物をした日付が曖昧になってしまった。

だが、しばらく待っても記録がつかなかった。この時点で「海外の場合には時間がかかることがある」が「追跡調査はできるのでご安心ください」となっていれば、問題にはしなかっただろうと思う。

サポートはないが、忙しい現場

そこで、15日にセブンイレブンジャパンに連絡をした。するとアルバイトらしいオペレータが「私どもでは分かりません」という。さらに店舗にも連絡してみたが「忙しいから記録は調べられない」という。漠然とした日付をもとにしてレジの記録をチェックする仕組みがないのだという。後になって分かったことだが、問題がおこるとわざわざレジに出かけていって伝票を手作業でチェックするしかないそうだ。

それでは困るので8月16日に銀行に連絡をした。どうやら「与信」はされたが、買い物の記録がつかなかったという。伝票の日付は8月11日だという。

「分からない」では困るのでセブンイレブンのカスタマーセンターで「上の人」を呼んでもらった。コールセンターのアルバイトの人はクレジットカードがどのような仕組みで決済されているのかを考えたことがないようだった。英語では「インクワイヤリー」と呼ぶのだが inquiry was made but not processed の意味(これを日本語に訳して言った)が分からないようだった。だが、アルバイトの人は自分から上司に電話を変わってくれとは言えない仕組みになっている。そこで、形式上客がクレームしてエスカレーションせざるをえなかったという形を作らなければならないのだ。

スキルによってエスカレーションする仕組みにはなっていないのだ。清水さんという担当者が出て来た。

隠蔽しようとする下部マネージメント

「上の人」が社員なのかコールセンターの従業員かは分からないのだが、とりあえず「inquiry (与信)」と「実際のプロセス」の違いは分かっているようだった。しかし、話を聞いているうちに、この人が「エラーがなく通常に処理された」という形を作りたがっているのがわかった。するとケースをクローズできるのだ。なかったことにして「91円をオゴる」という形にしてもよいような口ぶりだった。そこで「それでは問題は解決しない」旨を伝えた。清水さん的には「ケースがクローズできない」ということを意味する。コールセンターの目的は顧客に満足してもらうことでない。ケースをできるだけ早くクローズすることなのだ。

そもそもの問題はレジにありそうだと思った。何らかのオペレーションエラーがあったのだろう。建前上はお店は独立していることになっているので、調査するかしないかというのは店側の判断になるようだ。最終的にどのような処理をするのか(つまり客からの回収をしないのか)というのも店側の責任になるようだ。本部はリスク(つまり責任)を追わない仕組みになっているらしい。

ポイントになったのは、クレジットカードのインフラを誰が請け負っているかという点だった。「お店側は仕組みを理解して問題解決できますか」と聞いたら、清水さんは黙り込んでしまった。

レジはアルバイトなので当然間違いは起こりうる。店側は忙しすぎてイレギュラーケースついて判断したり、エラーを処理したりする余裕はないだろうと思った。店と本部をつなぐ経営相談員という人がいる。ネットでは「指導員たちの役割は店側を搾り取ったり無理に仕入れをさせる」ことだなどと書いてあるが、名目上は経営相談員だ。お店の人は「営業さん」と呼んでいるらしい。

IT投資が生産性向上に寄与しない

今回は、100円に満たない金額だが、こうした間違いは頻発しているのではないかと思われる。合わない勘定を普段どう処理しているのかということが気になった。もしかしたら、店長が補填するということが行われているのではないだろうか。

これを防ぐためには記録システムを作って、イレギュラーな処理にアラートを入れるようにすればよい。多分、コンビニは発注システムではシステムを作っているのではないかと思う。「品切れ・欠品」は本部の売り上げに影響を与えるからである。しかし、金銭的なインセンティブが働かないとIT投資をしないことになっているのだろう。

海外ATMカードの不正引き出しにも対応しきれていないらしいので、セブンイレブンはこの点では遅れているのだろうことが想像された。

お店で聞いたところ分かったことは2つある。現金の間違いはしょっちゅう起きていて、店長かバイトが補填しているそうだ。銀行のように1円まで探し出すということは行われていないらしい。シフトリーダーさんが前に努めていたスーパー(もしくはデパート)では500円を上限として、それ以上では従業員が補填していたということだ。

問題はなかったことになる

一日の終わりに問題が解決しなかったようで担当者から「今日はできなかった」「明日は私は休みである」という連絡が入った。休みならしょうがないなと思った。

だが、次の日に銀行口座をチェックすると、伝票が発行されていた。日付は8月15日になっていた。遅れて処理したのかもしれないし、ミスに気がついて何かをしたのかもしれない。もし、先日の買い物データが処理されていれば伝票の日付は8月11日になっているはずである。アメリカ西海岸時間の8月15日は日本時間の8月16日だなどとの疑問を持った。ただ、問題そのものは解決された。この時点で気は楽になった。

結局、報告はなかった

3日経っても連絡がなかったので、本部に問い合わせたところ「店が対応することになった」と言われた。16日中に連絡するということだったようだ。しかし、連絡はなかった。本部で責任を持って対応してほしいと依頼した。カスタマーサポートの担当清水氏は状況を把握していなかったらしく、店側に確認を入れたらしい。これは店に聞いてわかった。

思い立って店に行ってみたのだ。そこで、シフトリーダーと呼ばれるパートの人からいろいろな話を聞けた。

  • 店側はカードをスワイプしてレシートが出た時点で作業が完了するのでエラーは起りようがないようだ。お店側のオペレーションエラーを疑っていたがそれはなかったらしい。
  • 店側としては何も聞いていないという。
  • 人繰りがつかないので店長は夜通し勤務をしている。今頃は疲れて寝ており、連絡が取れない。

「店長さんは大変ですね」というと「コンビニはブラック企業ですよ」と笑っていた。

オーナーと連絡が取れたのだが「本部が責任を持って対応する」と言われたらしい。再びカスタマーサポートと話が食い違っている。そこでカスタマーサポートに連絡したところ、営業指導員が対応することになっているという。今朝と言っていることが違う。

伝言ゲーム

結局経営相談員のところにボールが飛んできたらしい。シフトリーダーは「顧客とのやり取りを聞いて報告しろ」と言われたというので、少しカッとなった。カスタマーセンターでは16日中に連絡しろと言っているのに、営業相談員が放置した上に「何があったかオレに報告しろ」と言っているように思えたからである。そこで「客が怒っているから今すぐ電話を寄越せと言ってくれ」とお願いした。

実際には営業指導員飯塚氏の言い分は異なっていた。経営相談員の飯塚氏は直接伝票を確認しなければならないが、今朝になってはじめて確認ができたというのである。で、あれば清水氏の「今日は休みだが責任を持って明後日には報告する」は何だったんだという話になってしまうという。その場で言い繕ったのだろう。

飯塚氏によると、11日に伝票は見つからなかったという。炭酸水とデビットカードだという情報は渡っているのだが、伝票を調べるためには全てのレコードを見て行かなければならないらしい。しかも、データはオーナーと社員(唯一店長だけ)しか分からないそうだ。あとは営業相談員がサポートすることができる。

面白いのは伝言ゲームが分かったことだっただった。飯塚氏は「11日には8時から9時に炭酸水が出た」と言ったらしいのだが、シフトリーダーさんは「11日の8時から9時のデータだけを調べた」と言ったのだ。つまり、短い間にも伝言ゲームが起きている。これが積み重なって状況が悪化していたらしい。飯塚氏は本部に対して「今朝やっと確認ができた」と言う報告をしたらしいが、サポートセンターはそれを記録に残していなかった。清水氏は「あとは店に丸投げ」と思っているので、忘れてしまっていた訳だ。

責任を取るのは誰なのか

経営相談員によると本来は客との折衝は店側の仕事なのだそうだ。しかし、お店側はクレジットカードシステムは理解していない。その上、店長は忙しすぎて昼間は寝ており、飯塚氏によるとオーナーも体調を崩しているのだそうだ。そこで結局、本部の人が出てきてやり取りを引き取り調査もせざるを得なくなったようだ。笑顔のコンビニ業界の裏にはこのような事情もあるのだなあと思った。

カスタマーサポートの清水氏によれば、カスタマーサポートには指導員を指導する権限はなく、プロジェクトをドライブするという部署でもないということだ。あくまでも「他人ごと」というスタンスなのである。それを会社の代表だと思っていると嫌な思いをするわけだ。話をしていて「ああ、この人は実際は死んでいるのだな」と思った。すでに処理しきれない問題を複数か買えているのだろう。

事故につながりそうだが……

こうした体制では小さな事故は無数に起りそうだが、直ちに大きな事故にはつながらないのだろう。ただ、一度重大な事件が起れば、それを防ぐのは難しいだろうなあと思う。たいていは、本部は状況を正しく把握しているのだから、現場を教育するという対策が取られるのだろうが、実際の現場は「本部は何も分かっていない」と感じるのではないだろうか。

問題の本質には搾取構造がある。本社はあらゆるリスクを店側に押し付けて安定した収入が得られるようにしている。だが、実際には店側にはリスクに対応するリソースは与えられていない。問題の解決能力もないし、意欲も余裕もない。黙っていてもお客さんが来るので、客を喜ばせようという気分もない。

だが、実際のブランドイメージは現場のオペレーションに依存している。これが破壊されてしまうと、リスクを現場に押し付けていた本部には解決手段がなくなるということになる。

結局問題は解決しなかった

飯塚さんがどこまで調べたかは分からないが(調べていない可能性もあるわけだが)買い物をした記録が見つからないと言っている。実際に買ったのがなかったことになっているのだ。セブンイレブンは誰が何を買ったかという記録を取っていないので、トラブルを避けるためにはクレジットカードのレシートを取っておくか、セブンイレブンを使わないに限るということになる。

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