だまされて疲弊された人は最後に宗教に利用される

Twitterで愚痴っている時間の1/10でも生産的な活動に結びつけば……の第三回目。今回は面倒な話題なので一部固有名詞抜きでお届けする。

前回は代理店システムについて観察した。代理店システムは忠誠心をお金と暖簾代(ブランド)だけで支えている形態のことだ。これが蔓延すると最終的に宗教が台頭するのだろうなあというのが今回の考察だ。

ある芸能人が突然辞めて騒動になっている。どうやら宗教団体の広告塔に使われるようだ。最初は切羽詰って脱獄したのだろうと思われていたのだが、手回しよく告白本が出されるらしい。日本の芸能人は基本的人権が無視された奴隷状態にあるようなのだが、そこから足抜けすることは難しい。だが、スポンサーとプロダクションが合体したような団体になら脱獄させることは可能なわけだ。今それができるのは宗教しかない。

なぜ宗教にそれができるかというと、ある一人のリーダーのもとで結束するからだ。つまりリーダーがあって信条があるという組織は日本にはもう宗教しかないということになる。とはいえ既存の宗教にはそこまで強烈なリーダーシップはないので、残っているのは個人崇拝に近い新興宗教のうちで、オウム真理教のようにテロ組織化しなかったところに限られる。

集団が利益だけで結びついたのが代理店方式である。代理店方式はインセンティブと暖簾(つまり信用のこと)だけを借り受けた契約なので、これが切れてしまうと統制ができなくなる。政党も基本的には代理店方式をとっている。顧客は自分で見つけてこいということである。だから本体が駄目になると離反者が出る。ちなみに正社員がいなくなった会社も社員が代理店化するだろう。代理店は本体のプロセスを改善する権限もないし意欲も持たない。

政党が代理店化した結果、有権者は無党派層になった。日本人は基本的に自分が作る小さな集団にしか興味を持たない。集団主義の国から見るときわめて冷淡な精神構造を持っている。代理店は本部に忠誠心を持たないので、そこを通じてつながっている人たちも本部に忠誠心を持たないのだ。

ただ、宗教団体だけは別格だ。自民党が公明党なしで選挙できなくなってしまったのは、宗教団体だけが集団として機能するからなのだろう。自民党の一部が神道を利用しようとしているのは自民党が公明党化すれば信者の心をつかめると信じているからなのだろう。ここに家族と言う集団を組み込んで国家的に統制しようとしているというのも特徴である。

GHQが入ってきて国家神道が崩壊したのは、GHQにいた共産主義者の陰謀でもなんでもない。国家神道は国民を利用したが、国民には必要な保護を与えなかった。日本人はそういう組織は集団として認めないというだけの話なのだ。

だから、自民党の改憲は破綻するだろう。日本人は自分の価値観に合わなければ家族にすら関心がない。これが集団主義の国とは違っているところである。かといって個人の意見を押し通すほど個人主義も強くない。すると誰かにすがりたくなる。これが宗教が台頭する素地になるのかもしれない。

政党の中で唯一宗教化したのがマルクス経を頂く共産党なのだが、これは宗教の要件である「家」が欠けていた。このため急速に衰退しつつある。今回芸能人を引き込んだ宗教も次世代の人たちをリクルートしようとしているのだろう。Twitterを見ると「生産性を食いつぶされている若い世代の不満」が渦巻いていることは明白なので「ブラック企業対策をすれば若い人たちにアクセスできるな」と考えているのは間違いがないだろうし、これは戦略としては合っている。

Twitterで渦巻いている……で目指したかったのは、こうした不満がポジティブな活動に結びつけば世の中は変わってゆくだろうねという見込みだ。しかし、個々の生産活動というのは、割と地味なものばかりだ。しかも普通の人は表現する手段(プログラミングとかのこぎりのひき方とか料理のやり方などなど)を持っていないので、かなり厳しい道のりである。

政党は不満の掬い取りにまじめに取り組んでいるとは思えず、政党は脱集団化している。企業も脱終身雇用化しているので、無党派と集団がよりよい取引だけで結びつくというデフレの形態を作りつつある。

そこで一生懸命に活動しているのは「他人をだまそう」としている人たちだけなのだが、宗教集団はそれなりの条件を備えている。今回のような事例は増えるだろうし、それにひきつけられる人たちも増えてゆくのではないだろうか。

ここまで一生懸命書いてきたのだが、この構図は「かつて来た道」だ。バブル後期には「企業に入っても私らしい生き方ができない」が「一生が決まってしまう」と考える学生が多くいた。そういう人たちがはまったのがオウム真理教などの新興宗教だ。彼らは急速に国家を真似た集団を作りマスコミや弁護士などを攻撃し始めた。最終的には地下鉄に毒ガスをばら撒きテロ集団になってしまった。最終的に分かったのは彼ら(学歴の高い人も多かった)が従っていたのは、他人をだますことをなんとも思わないサイコパス傾向のある一人の男だったのである。

弱っている人はさらに毟られる。だからこそ本来は「狭き門」を選ぶ必要があるのだ。

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