「日本人はメディアを信頼しているから洗脳されやすい」のか

日本人はメディアを信頼しすぎているから洗脳されやすいというような記事が流れてきた。例によってソースが明らかにされていないのが気になった。原典は明らかではないが、元を辿って行くとNewsweekのこの記事にたどり着くらしい。記事には原典が掲載されている。この元ソースのWorld Values Survayはデータをウェブ上で見ることができる。

同じようなことはままある。例えば「アメリカが日本の選挙に干渉していたとCNNが伝えた」というようなツイートが流れてきたことがある。これもCNNという名前がよく知られているので利用されたのかもしれないが、CNNで検索しても元記事が見つからない。どうやらカーネギーメロン大学の研究が元になっているようだが、カーネギーメロン大学と聞いても知らない人が多く、CNNが権威付けのために利用されたのではないかと思う。本研究は閲覧が有料なので中は見ていないのだが、1946年からの統計なので、過去の反共対策が掲載されていたのではないかと思う。だが、見た人は「今での干渉しているのかな」などと感じてしまうのではないだろうか。

確かに日本人はあまり原典を参照せず「なんとなくそうだろうな」などと思うとニュースに飛びつく傾向にある。そして、リツイートするとそのことを忘れてしまう。後に残るのは漠然とした思い込みだけだろう。これは確かに洗脳されやすそうだ。

最初は、日本人は集団主義的だからマスコミを信じやすいのだなどという仮説を立てた。であれば他の国の集団主義度合いと比較することで傾向が見えるはずである。しかし、実際には集団主義的な国ほどマスコミなどの権威を信じやすいという傾向はないようで、この仮説は棄却せざるをえなかった。

データベースの統計を眺めていると面白いことがわかった。日本人はマスコミは信頼しているが、政府も政党もそれほど信頼していない。日本の政治は金権政治と揶揄されていた歴史がある。これを記憶している人たちが政治家を信用していないのかと思ったのだが年齢による信任度の違いはそれほど見られない。

一方で、民主主義は大切だと考える人が多く、民主主義が守られているとも考えているようである。つまり、政治家はあまり信頼できないが、暴走すればマスコミが警鐘を鳴らしてくれるので大丈夫だと考えている可能性も高い。

ここから、日本人は手放しでマスコミを信頼しているわけでもなさそうだということがわかる。自分には平均以上のリテラシーがあるので、正しいメディアを選ぶことができると信じているのだろう。これが、実力通りなのか過剰な地震なのかということはわからない。

ここから考えてみると、Twitterにいる人たちは自分たちが「正しい情報」を持っているということを確信している人たちが多いように思える。ある人は蓮舫代表の二重国籍問題がNHKのトップ項目にならないことがおかしいといい、別の人は稲田防衛大臣の件が取り上げられないのがおかしいと考える。新聞社の論調も各社違っているので「俺だけが真実を知っていて、他の人たちは騙されているに違いない」と考えてしまうのだろう。だから「メディアが信頼されている」と聞くと「洗脳されやすい」と感じてしまうのだろう。

だが、政府を手放しで信任しているわけではないので、メディアが明らかに政権よりになれば、そのメディアは見放されてしまうことになるのではないかと思われる。

それより怖いのは、日本人があまり原典を気にしないという点である。メディアが言っていることを信頼しているというわけではなく、誰が言ったかということを気にしている。そしてみんなが同じようなことをいうと「本当にそうなのだろうか」などとは疑わずにその結論に流されてゆく。いわゆる空気が醸成されてしまうと、その空気に乗ってしまう傾向にあるように思える。

日々ブログを書いていると日本人が空気に流されやすいのがよくわかる。テレビで何かが報道されるとそれについて検索する人が急激に増えたりすることがある。これは周りの人が話題にしているのだから自分も知らなければならないと考える人が多いことを意味している。

政府による洗脳が怖いというよりは、集団による思い込みで、ろくな情報精査しないままで空気に流される方が怖いのではないかと考えられる。とはいえ日本人は過去に起こったことは忘れたがる傾向があり、特に反省はしない。

なお、韓国や中国も同じような傾向があるが、韓国は政府への信頼が半分程度あり日本よりも高い。政治への関与度が高いので「自分で選んでいる」という感覚があるのかもしれない。日本の場合は新聞は選べても、政権与党は選べないのでそれが信頼度に反映しているという仮説が立てられる。しかし、同じように政権選択ができるアメリカは政府もメディアも信頼していないという人が多い。ただ、アメリカには全国紙があまり発展しておらず、地方紙も選択できないことがあるので、自分でメディアを選んでいるという感覚はあまりないのかもしれない。

なお、日本ではTwitterで騒いでいるのは一部の人たちだけだなどという人がいるのだが、月刊アクティブユーザーは4000万人もいるという統計がある。災害時の情報インフラとして利用されているということもあり認知度が高いのだろう。政治的にはやや極端な意見が多いように思えるが、実はこれは日本人が内心持っていた「自分だけが正しい意見を知っている」というような見込みを反映している可能性も高い。

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