日本の政治状況が極めてグロテスクになってしまったのはなぜなのか

最近タイムラインを見ていると、リベラル界隈の人たちから「この世の終わりだ」というようなつぶやきが聞こえてくる。確かに安倍晋三現首相は嘘つきだし、小池百合子東京都知事はサイコパスっぽいところがある。今回は嘘つきとサイコパスのどちらかを選択する政権選択選挙なので、うんざりする気持ちはよくわかる。

まず、結論からいうと、安倍さんがこのまま首相を続けても小池さんが首相になっても日本が終わるわけではない。だから安心してどちらかに入れるかそれも嫌だったら共産党あたりに投票するのが良いだろう。この状況が極めて悲惨に見えるのは日本が極めて特殊な数年間を経験したからだ。

まずは深呼吸して落ち着いて見て行こう。

日本の財政の半分は国債で支えられている。この国債の原資が何なのか実はよくわかっていないのだが一般的には国民の貯蓄が大きな役割を果たしていると考えられているようである。つまり、過去賃金の蓄積である。さらに、日本経済が持続可能なのは日本の経常収支が実は黒字で推移しており、政府財政は破綻するかもしれないが、国としては安全な国だとみなされているからだ。

しかし、政府のプライマリーバランスは赤字になっており借金はますます積み上がると予想されている。将来的に赤字が拡散するという予想が成り立てば、日本の財政への信頼がなくなり、利子が上がり(実際には国債の売買価格が変動する)、政府資金が調達できなくなる。政府機関が閉鎖されて、年金の支給が止まったところでゲームオーバーである。経常収支は黒字なので(つまり、利子が入ってくるので外国から品物が買えるということだ)誰かがお金を持っているが、それが分配されないという世界だ。

財政再建という観点から安倍政権と小池政権(個人的には小池さんは衆議院議員選挙に出ないと思っているので誰か別の人が立つだろうが)を比べてみよう。安倍政権は消費税を増税すると言っているが、それをバラマキの原資にふり向けると言っている。プライマリーバランスは改善しない。一方で小池政権は消費税増税は今はできないと言っているので、こちらもプライマリーバランスが改善しない。ちなみに共産党はプライマリーバランスなどということは全く考えないだろうから、仮に共産党が政権を取ると破綻が早まる可能性がある。

つまり、誰が政権をとってもプライマリーバランスが改善せず、政府はやがて破綻することになる。

破綻が前提の世界では、生き残りをかけた富の独り占めが起こる。今回の前原クーデターではそのことが顕著になった。前原氏は「みんなで一丸となって政権を奪還しよう」といって民進党内で権力を掌握すると、その権限で民進党の財布を丸ごと小池さんに差し出しリベラルを排除した。これはリベラル議員を排除したというだけではなく、リベラル票を掠め取って希望の党に差し出したということだ。つまり前原さんはリベラルな有権者から票と税金を党内手続きも経ずに収奪したのである。

つまり、有権者を騙して議席をとり、党内競争に勝ち抜けば「それをどのように私物化しても構わない」というのが日本の政治風土になっている。対する自民党も戦略的経済特区という荘園を作り、自分たちの仲間の利権を確保するという手法を思いついた。このためにいろいろな補助金を身内や考え方の似通った企業につぎ込んでいる。つまり、いったん政治権力を握ってしまえば、あとは有権者を切り捨てて自分たちの身内を優遇してやればいいということになっている。

日本は形式上は民主主義国家なので選挙で政権を形成する必要がある。一方で、民主的な政治風土は根付いていないので、いったん政権が形成されると有権者を切り捨てて政治家が生き残るために権力を私物化するということが起こる。マスコミや有権者がこれを批判しないのは実は民主的にリソースを配分するということがよくわかっておらず、政治を形式的な手続きの集合体だと感じているからだ。つまり目的ではなく手段が本質だとみなされているのである。

これを見ているとだんだん腹が立ってくるのだが、起こっていることは実は極めて単純で「山から川が流れて海に注ぎますね」というくらいのことにすぎない。つまり、お金そのものは潤沢に集まっているのだから、権力のある人たちはそれを自分たちの田んぼに引き込もうとする。山に雨が降るのだからそれを自分の田んぼに引き込みたいと考えるのは当然だ。

ではなぜたまった雨水は下流に流さず自分たちで独り占めしなければならないと誰もが思い込んでいるのだろうか。実は、日本の貿易収支は2011年以来赤字が続いていた。東日本大震災の結果エネルギー効率が下がり、生産設備も破壊されたからだろう。貿易収支が赤字であるということは「働けば働くほど貧しくなる」という世界だったことを意味している。一方で企業は資本を蓄積しているのでその収支で食べてゆくことができる。ゆえに労働力に依存する必要がなく、従って労働者に賃金を分配する必要がなかったのだ。

では、この状態は未来永劫続くのだろうか。

統計をみる限りそれも変わりつつあるようである。日本の貿易収支は改善しつある。なぜ改善しつつあるのかはわからないが、これは働いたら豊かになれるという世界が戻りつつあるということを意味している。つまりここ数年で起こったことを参考にして未来予測をしてはいけないのである。

いろいろ腹がたつことも多いのだが、ひとまず冷静になって、どのような日本で暮らしたいのかということを一人ひとりで考えつつ、頼りにならない政治家たちがアリのように右往左往する姿を眺めているのが良いのではないかと思う。

 

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