沖縄本島ではどの程度ヘリコプターの事故が起こっているのか

沖縄で「またヘリコプター関係の事故が起こった」として話題になっている。しかし、情報が散発的に入ってくるので、どんな頻度と規模で事故が起こっているのかよくわからない。そこでまとめてみた。一昨年にオスプレイが大破してから昨日まで入ったものをまとめている。これだけと思う人もいるかもしれないし、こんなにも起きているのかと考える人もいるだろう。


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2018年1月8日の事故をうけ、ニコルソン4軍調整官がはじめて全体の運用について謝罪した(小学校に部品が落ちた件ではすでに謝罪している)と琉球新報が伝えている。また、マティス国務長官も小野寺防衛大臣との電話会談で謝罪したということだ。アメリカ人の謝罪にはなんらかの対応が伴う(はずな)ので、軍あるいは政府がある程度問題を認識していることは間違いなさそうだ。

一連の報道が起こるようになった最近のきっかけはオスプレイの大破事故だと思うのだが、日経新聞によると「オペミスであり機体には問題がない」という結論が出ているようだ。もちろんオスプレイに反対する人たちは、オペミスが重大な事故につながりかねないとして導入に反対し続けている。

報道の分かりにくさのわけ

沖縄のヘリコプター事故・事案の報道が分かりにくい理由にはいくつかあるように思える。

まず、沖縄のメディアは少しでも大きく報道したいために過去の事故・事案を含めて記述していることが多い。老朽化する輸送機の事故とその他の不時着事案や海外の事件などが同列に扱われておりわかりにくい。本土が振り返ってくれないという思いがあるのかもしれないが、これでは、却って全体像が見えにくくなるのではないかと思った。

しかしながら、本土のメディアはさらに輪をかけてひどい状態にある。

本土メディアは基地問題を政局と絡めて伝えることが多い。辺野古基地移転やオスプレイの導入が与野党の政局材料になっているという事情がある。沖縄の人たちには切実な問題だが、本土ではどちらかというと判断材料が少ない野党の貴重な攻撃材料として利用されているのだ。

このため本土メディアの対応は二極化している。東京新聞は「政府は米国政府に真摯に訴えるべき」としており、読売新聞は「政府のいうことを聞いて辺野古に移転しないからだ」と沖縄県を非難している。沖縄のことを考えているというよりは、政府攻撃(あるいは擁護)の材料として使われており、わかりにくさの理由となっている。

しかし、この対立にはあまり意味がない。むしろ問題になっているのは日本の安全保障と主権という国家の根幹に関わる問題がないがしろにされているという点だろう。地位協定は実質的に憲法や日本の法律の上位にある上に、それすらまともに守られていないようだ。沖縄県の上空には日米で取り決めた飛行経路が設定してあるのだが努力目標化しているのだ。区域だけでなく運用時間でも協定破りが状態化しているということである。

この対立は例によっていじめの様相を呈している。今回マップに含めなかった保育園にプラスティック部品が落ちた件では保育園に嫌がらせの電話が殺到したという。本土に与野党をめぐる不毛な争いがあるのは仕方がないにしても、その劣情を不安な気持ちを持っている人たちにぶつけるというのはあまりにも冷酷である。と同時に、こうした類のいじめはエンターティンメントだけではなく様々なところに蔓延しているということがわかる。

沖縄はかなり異常な状態にある

知っている人は知っている程度のことなのだろうが、なぜ沖縄では頻繁にこのような事故・事案が起きているのだろうかと思った。

そこで、同じような条件のグアムの例を調べてみた。グアムはアメリカの軍事的植民地で北マリアナやプエルトリコのようなコモンウエルスを構成していない。しかしながら民選の準州知事が内政を管轄している。

グアムは沖縄より狭いのだが、人口が全く違う。沖縄本島には130万人以上の人が住んでいるのに比べて、グアムの人口は16万人に過ぎない。さらに航空機が利用する基地は島の北端にありハガニア中心部からはかなり離れている。

グアムでは2016年5月にB52の事故が起きている。これはベトナム戦争以来60年以上も使われてきた機種なのだそうだ。

改めて人口の密集する沖縄本島の真ん中に基地を維持し続けることの異常さがわかる。普天間は特に危険なのだが、沖縄本島中で事故が起きているのを見ると、辺野古に持って行けば危険性がなくなるというわけでもないということが理解できるだろう。

全てが大破炎上しているわけではない

沖縄で起きている事故・事案を理解する上で重要なのは、機体の種類によって性質が違っているという点なのではないかと思った。沖縄県側は「とにかく全部停止しろ」と主張しているので、これらを区別して書いていないことが多いのだが、実際には老朽化に伴うものと、計器異常による予防的なものがある。

読谷村と伊計島で事故を起こしたAH1ZとUH-1Yは2000年代以降に投入された同じようなタイプの攻撃機(多目的機と表記しているものもある)のようだ。しかしながら、このタイプのヘリコプターが起こしているのは「計器以上による不時着」であり、大破して炎上するという事故ではないようだ。

「最新鋭だから不時着(もしくは予防着陸)しても大丈夫」と擁護する声もあるのだが、近くに米軍施設があるにもかかわらずその区域外に不時着しているとという見方もできる。米軍が「民有地であっても協定に守られているのだから自分たちの敷地のように使っても良い」と考えているのか「よほどの事態があったのか」ということは情報が少なくよくわからない。ニコルソン4軍調整官が苛立っているところから見ると、トップも状況をつかめていない可能性がある。

翁長知事は「いろいろな機体が事故を起こしているのだから一斉点検しろ」と言っているのだが、単に気の緩みやなんらかの組織的トラブルが全ての事故・事案の原因になっているとも考えにくい。比較的新しい機体の不時着と老朽化したもの炎上では原因が異なっていると考えても問題はないだろう。しかし、こうしたレポートが日本政府や県知事に上がってくることはない。そこで「全部やめろ」という話になってしまうのだろう。

老朽化するCH53E輸送機と放射性物質の危険

最新鋭の多目的機種と違い、老朽化したCH53Eにはいくつかの大きな問題がある。加えて、米軍全体の問題であり解決は難しそうである。CH53Eは50名以上を運ぶことができる大型輸送型のヘリコプターのようだ。琉球新報によると導入から30年以上が経過しており、後継機の導入計画も進んでいないとのことである。部品も枯渇しているとのことなので事故が起こるのは当然だと言える。つまり、総点検などしても意味がないということになる。

ヘリコプターの部品には放射性物質のストロンチウム90や劣化ウランが使われているという説がある。ローターの監視ないしは高密度であることを利用して重りが必要なところに用いられているという説明がなされている情報がいくつかあった。否定する人もいるのだが、事故のあとには防御服を着た人たちが除去作業をしていることから、なんらかの危険な物質が使われていることは間違いがなさそうだ。

もちろん有害物質が含まれていること自体が問題なのだが、反対運動が大きいせいで情報が公開されておらず、却って「落ちたら風評被害も含めて土地が使えなくなるのではないか」という不安を生じさせている。

米軍との協定を安全保障の面から捉えることもできるのだが、憲法上の懸念の方が大きい。財産権が侵害される懸念があるにもかかわらず、事故が起こるたびに「土地に入ってはいけない」と米軍から立ち入りを制限されるということが常態化しており、沖縄県では憲法が保障する国民の権利が守られていない。不測の自体なら仕方がないという意見もあるだろうが、このハフィントンポストの記事によると高江の渡久口さんの土地は「不時着ができる便利なところ」だと目をつけられている可能性すらあるのではないかと疑いたくなる。何回か同じようなことが起きているとのことである。

何もしてくれない日本政府

沖縄では人口密集地に基地が作られており、協定はまともに守られておらず、子供が安心して教育を受ける権利が侵害されており、なおかつ財産権も侵害されている。このことから、沖縄ではフルスペックの憲法が施行されておらず、実質的にアメリカの軍事的植民地か日本の隷属地のような扱い担っていることがわかる。これが非明示的に行われているということなのだから、ある種本土の沖縄いじめのような状態になっている。

政府自民党のもっぱらの関心は選挙にしかないようだ。2月4日に予定されている名護市長選挙と11月の県知事選への影響だけが心配されている。

安倍首相が出てきてなんらかの調整をすることはなく、対応は防衛大臣と外務大臣に丸投げされている。小野寺防衛大臣も河野外務大臣も単に「調査を要請する」だけであり、協定の運用強化などの対策を取るつもりはなさそうだ。

その気になれば政府にはできることがたくさんある。占領時の取り決めを引き継ぐ日米地位協定では米軍の運用に日本政府が関われず、国民の財産や安全を守れないのだから、憲法を改正するよりもやらなければならないことがあるのだ。最低限「米軍は日本の法律を遵守する義務を負う」と書くだけでも状況が改善するはずである。

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