バブルとデフレの歴史

バブル

プラザ合意によりドル安が誘導されて円が高くなった。日本企業は不況になり、日銀は経済対策として金利を下げた。お金を借りやすくなった企業は資産バブルを起こし、株や土地の価格が急騰した。これを財テクと呼んだ。本業に力を入れるより財テクした方が手っ取り早く儲けられるようになったのだ。土地の値段が上がったので、企業は銀行からお金を借りてさらに土地を買った。銀行もお金を貸したがった。(なぜバブルは生まれ、そしてはじけたのか? 池上彰

バブル崩壊

ところが、1990年に大蔵省が総量規制を行ない、金融機関の貸し出しを制限したためにバブルが弾けた。1991年のことだった。(なぜバブルは生まれ、そしてはじけたのか? 池上彰

バブル崩壊後の1990年代からリストラが始まったが、終身雇用制が根強く残っていたので、すぐには賃金は下がらず、解雇もできななかった。そこで、子会社への出向などを通じて本体の経営を守る方式が取られた。また、正社員比率を減らすために、非正規雇用を増やしていった。この頃に現在の雇用慣行の芽が作られたのだ。

デフレの発生

金融機関の破綻を先延ばしするために量的金融緩和が実施された効果で1999年代の半ばに金利がゼロになった。GDPデフレータ(名目GDPと実質GDPの比)の伸びもこのころマイナスになった。しかし、1995年頃にはデフレという言葉が議論されることはなかったという。

1997年頃から賃金低下が始まり、1998〜1999年には物価が下がるデフレ状態が生まれた。デフレを脱却するためのゼロ金利政策が1999年からはじまり、量的緩和政策は2001年から実施された。(RIEII 量的緩和政策とデフレ)しかし、量的緩和政策でもたらされた現金は投資に向かわず、国債に投資された。このためデフレは解消しなかった。

この間も銀行には大量の不良債権が残っていた。不良債権処理は2000年頃の小泉政権まで続いた。不良債権処理にいくら使われたのか、正確な数字は分かっていない。10兆円という人もいれば39兆円くらいだろうという人もいる。(日本の経験を教えると見得を切れば恥を曝す 「超」整理日記

2004年に製造業の派遣労働雇用が解禁された。

デフレの定常化とリーマンショック

企業は銀行を頼らずに、現金を貯め込むようになった。デフレ傾向になると円の価値が温存されるため、海外から資金が集まり円高が進行した。また、デフレ状態では実質人件費が高く感じられるので、さらに賃金を下げるために非正規雇用化が進行した。賃金が減少するとさらに経済が縮小しデフレが進行した。このような状態はデフレスパイラルと呼ばれた。

export001円高下でデフレになると日本国内が市場としての魅力を失うので、体力のある製造業は海外に逃避し、生産性の低い企業だけが国内に残った。また、国内への投資は控えられ、企業はさらに現金を貯め込むようになった。2008年にリーマンショックが起きると貿易(輸出入とも)が落ち込んだ。製造業は生産を縮小させ、派遣切りが横行した。派遣切りにあった元派遣社員が秋葉原で殺傷事件を起こした。リーマンショックが終っても、大方の製造業は日本に戻ってこなかった。円高の影響もあり中国から安い工業製品が流れ込み、デフレは継続した。

民主党政権と極端な円安

民主党政権ができた2009年頃から円の値段が100円を切るようになり、輸入品を安く売る企業の業績が伸びた。浜矩子氏の「ユニクロ栄えて国滅ぶ」という記事が話題になったのがこの頃だ。マクドナルドのような格安ファストフード店が業績を伸ばした。

低く維持される非製造業の生産性

非正規雇用が増えると職業教育が行き届かなくなるので、熟練した従業員によって高い生産性を維持することができなくなる。特に生産性の低いサービス業や飲食業などで、アルバイトなのに正社員なみの責任を押しつけられる「ブラックバイト」が横行するようになった。一方、コンピュータ技術(ICT)による生産性の向上も図られなかったので、サービス業(医療福祉・教育・人材派遣・娯楽など)や飲食業では労働生産性は下がっている。飲食業は80%〜90%が非正規雇用だ。生産性が低下した業界ではさらにブラックバイト化が進むことが予想される。

アベノミクス

2012年に安倍政権が成立した。異次元の金融緩和政策が導入された結果円安になった。大手製造業が海外に逃避していたので輸出は伸びなかった。一方で、食費とエネルギーコストが増大し、貿易赤字が発生した。経常収支は黒字だが、儲けが国内で投資されるわけではないので、国民生活に影響を与えることはなかった。日銀はマネーサプライを増やしたが、企業は現金を貯えている上に、投資意欲も高くないので、マネーの需要がなくインフレにはならなかった。

wageデフレから脱却できなかった結果、賃金労働者は貧しくなった。人件費を抑えるために非正規雇用が蔓延し、技術が蓄積されなくなった。安倍政権は「柔軟な働き方を促進する」として派遣の大幅解禁に踏み切った。さらに、企業が投資を怠った結果IT化が進まず経営の効率化が進まなかった。

進まないデフレの理論化

バブル崩壊後一貫して金利は低いままに抑えられていた。これは景気を刺激してインフレを起すためだと考えられている。金利が下げられなくなると金融緩和政策が実施された。しかし、これでもデフレはおさまらなかった。クルーグマンは金融政策を実施すればインフレが起こるはずだと主張しており、アベノミクスはこの考え方を採用している。幾度となく金融政策が取られたが、デフレの解消に成功した日銀総裁はいない。

インフレターゲット派(リフレ派)の考えるシナリオは次のようなものである。なぜ,日本銀行の金融政策ではデフレから脱却できないのか 岩田規久男

  1. 日本でも米国同様に中央銀行が流動性を供給し続ければ予想インフレ率は上昇する。
  2. 予想インフレ率が上昇すると円安になり、株価が上がる。また、生産が拡大する。
  3. 株価が上がると企業設備投資が増える。
  4. 円安になると企業設備投資・輸出・雇用が増えて、輸入が減る。実質GDP が増える。
  5. 予想インフレ率の上昇は名目 GDPを引き挙げる。
  6. 名目GDP の増加は税収の増加をもたらす。

実際に予想インフレ率が上がったので円安株高は起きた。しかし3年経っても国内投資にはつながっていない。賃金が上がらないので需要が増えず、従って生産も拡大していない。そもそも企業が賃金を抑制したからデフレになっただけだという人もいるが、金融政策が物価に影響を与えると信じている人たちからは無視されている。

さらには、ゼロ金利政策こそがデフレを生んでいると主張する学者さえいる(なぜデフレーションが続いているのか – 小林慶一郎)が、一般的には、ほとんど注目されていない。ゼロ金利政策がもたらすデフレをフィッシャー的デフレーションと呼ぶ。

大阪維新の会の国政政党化と橋下徹市長

橋下徹大阪市長が、大阪維新の会を国政政党化すると発表し、巷ではちょっとした騒ぎが起きた。特に維新系の人たちに魅力を感じたりはしないのだが、この動きは「正解」だろう。政界再編のきっかけになるという期待もあるようだが、今回の動きは期待に沿ったものにはならないのではないかと思う。

前回、小泉劇場から始まる政権交代の歴史を見た。ここで見つけた成功の秘訣は簡単なものだった。「誰か悪者を見つけて叩けばよい」のである。まず「霞ヶ関官僚と郵政族議員」がターゲットになり、次は「霞ヶ関官僚」が狙われた。さらに最近では「民主党」がその役割を果たしている。

橋下徹市長は「今度は大阪という名前を付ける」と言っている。だから悪者は「東京」だろうと思われる。具体的には霞ヶ関と永田町だろう。つまり、官僚も国会議員も全部ダメだと言っているのだ。自民党も民主党もダメなのだ。さらに、東京に行って堕落してしまった維新の党のメンバーもダメなのだろう。永田町と距離を置きたがっているのだとすれば、政界再編の原動力にはならないだろう。

「永田町離れ」の兆候は既に現れている。

8月30日の国会前にどの程度の人がいたのかは分からないが、彼らが成功したのは既存の政党との結びつきを否定(あるいは隠蔽)したからだろう。表向き彼らが反対しているのは安保法案だが、それ意外の不安もあるのではないかと思われる。

加えて、既存政党が自民党を叩いても支持率は上がっていない。民主党はいったん政権運営に失敗した「悪者」であり、説得力がないのだろう。維新の党も対案を出したが支持は集らなかった。

もっとも、劇場型の政治を再現するためには、もう一つの成功要因が欠けている。多くの国民が動くためには、国民が「何かを失う」と思うことが大切なのだ。消費税が増税されるかもしれないという不安や年金システムが揺らぐかもしれないと思うと国民は危機意識を持つ。自分たちが損をして、相手が損しないという状態になると「相手を罰してやりたい」という気持ちが働くのだ。

ところが現在は事実上の財政ファイナンスが行われており、国民は「税金を払わなくても今まで通りの生活が維持できる」ものと安心している。政府は成長率を高めに見積もっており、財政削減しなくても大丈夫だというのが公式見解になっているのだ。来年「消費税増税凍結」を旗頭にすれば、自民党は大勝できるという観測結果がある。

この状態が持続可能だと思えば権力側にいた方がいい。しかし、そうでないと考えるならば、できるだけ関わらないのが正解だろう。仮に危機が顕在化して民主党が政権を取ったとしても状況を改善させることはできないはずだ。で、あれば外にいた人だけが「東京がこんな危機を招いた」とか「東京が独り占めしているせいで地方が潤わない」と非難できるのだ。

残念ながら民主党は絶望的だ。党勢を拡大するためには、右の勢力を拾うか左を拾うかという議論をしているのだが、ほとんどの国民はイデオロギーには興味がない。「生活が第一」であり、その意味ではとても「利己的」である。また「戦争法案」叩きに熱心だが、自分たちが政権を取ったら、どう財政を健全化させるのかという議論は全く聞かれない。

こうした劇場型の政権交代はどのような効果を生むのだろうか。過去の事例から言えることは、劇場型政治は衰退のいらだちに対するスケープゴートにしか過ぎなかったということだ。バブル崩壊をきっかけに資本の移動が起きていれば、新しい企業が日本を成長させていたかもしれない。しかし、資本は古い企業に張り付いたままで、結果的に賃金労働者は貧しくなった。

国民の「変わりたくない」という気持ちが劇場型の政治を生む。結局のところ、それが自分たちの首を絞めているように見える。

円安になれば景気はよくなるのか

よく、アベノミクスで円安になれば日本は復活するという議論がある。しかし、この数年間は貿易赤字の状態にあるので、円安が進行すれば国民生活は貧しくなるだろうと予想される。これが特異な現象なのか、しばらく続くのかはまだ分からない。

まずは日本の輸出入を見てみよう。データは財務省貿易統計をそのまま使った。export001

円の価格は1985年のプラザ合意後に大幅に高騰し、生産拠点を海外に移す「産業空洞化」が叫ばれたが、実際には輸出額の落ち込みはなかった。バブル崩壊後に企業は人件費を抑制したが輸出入は伸びていたことも分かる。

その後、輸出入はリーマンショック後に急激に落ち込んだ。これは民主党の失政ではなく、世界経済停滞の影響を受けたせいだろうと思われる。ただし、同時期に円も最高値を付けており「全く影響がなかった」ともいいきれない。円が高くなり始めたのはちょうど小泉政権が終わり、自民党が三代続けて「政権を投げ出した」時期に重なる。

安倍政権に入って最も顕著なのは輸出が伸びない割に輸入が伸びているという点だ。つまり、貿易赤字が発生している。これは1950年代以降はじめての特異な現象だ。このことから、円安が進めば進む程、国民生活が貧しくなるのだということがわかる。

export002さらに細目を見て行きたい。最初は自動車部品・電気製品(工業用と家電を含むものと思われる)・半導体である。

「失われた20年」などと言われたが、少なくともこの分野ではバブル後の顕著な減少は見られない。電気製品も半導体もリーマンショック後は工場が日本に戻ってくる事はなかった。半導体については国際競争力が失われたせいで輸出量が減っているのかもしれない。自動車部品は堅調だ。

export003日本といえば「自動車と家電だろう」と考えて、自動車とテレビについて調べてみた。。額に対する貢献度は低い。日本は最終製品の輸出は得意ではないのかもしれないし、現地生産が定着しているのかもしれない。

自動車については円高が進行していたにも関わらず2000年頃から輸出量が増えていた。しかしリーマンショックで落ち込んだ結果、国内に工場が戻ってくることはなかったものと見られる。

export004繊維製品についても見てみたい。アパレル産業は長期的に低迷傾向だと言われる。国策で始まった産業なので、産業内で自律的に構造調整する仕組みが作られなかった。そのため、中間工程の縫製が工賃の安い海外に流出したのだそうだ。

国内の「衰退ぶり」は明らかで、1991年には製造業の5.2%を占めていたものの、2001年には2.5%%まで落ち込んだ。従業員も114万人(1985年)から51万人(2001年)にまで急激に落ち込んでいる。輸出額は低安定傾向だったのだが、リーマンショックでさらに落ち込んだ。

export005最後に鉄鋼の生産を見てみよう。こちらも国策産業として始まったのだが、好調は現在も続いている。意外なことにバブル崩壊後10年ほどしてから大幅に輸出額が伸びた。

寡占で大企業が多いために競争力が落ちず生態系も破壊されなかったのだろうと思われる。また、中国などの近隣諸国で需要の高まりも好調の原因だろう。鉄鋼業もリーマンショック後に落ち込んだが、しばらくして復調をはじめた。しかし、中国は明らかに建築バブルの状態に入っているので、中国経済が低迷すれば、ダイレクトに影響がでるものと思われる。製鉄業は存在感が大きいため、日本経済に大きな影響を与えるものと予測される。

21世紀に入ってからの政権交代の歴史

小泉劇場に始まる21世紀の政治史をまとめた。左右対立、従米・反米、小さな政府(自由市場型)・大きな政府(福祉型)、中央集権・地方分権といった思想対立はない、代わりに、官僚を叩くと無党派層の支持が上がり、財務省に従って消費税を上げると政権を失うという分かりやすい図式が定着している。安倍自民党は官僚の代わりに民主党を叩き政権に復帰した。

小泉劇場

2001年に首相に就任した小泉純一郎の政策は小泉構造改革と呼ばれた。構造改革という名目で経世会の権益を破壊することが目的だったとも言われている。ターゲットにされたのは道路と郵政だった。小泉純一郎は「自民党をぶっこわす」として2005年の選挙に大勝した。郵政民営化を掲げ、反対する勢力を「抵抗勢力」と呼び「刺客候補」を送り込んだ。

このころ社民党は既に退潮しており、議会での存在感はなかった。民主党は1996年に成立しており、2003年に小沢一郎の一派が合流した。

自民党の退潮

小泉内閣の「小さな政府」指向は上げ潮派と呼ばれる人たちに引き継がれた。上げ潮派は、金融緩和とイノベーションを通じて経済を成長させれば税収が上がるので増税をしなくてもよいと主張した。上げ潮派は公共投資を縮小させ規制緩和を進めて成長力を高める政策をアベノミクスと呼んだ。

2006年に小沢一郎が民主党の党首に就任し、小泉構造改革を否定し、多額の財政出動を伴う「子ども手当」や「農家への戸別補償」などの政策を導入した。

安倍政権下の2007年、消えた年金記録問題が起こり「消費税増税がなければ年金システムや社会保障制度が崩壊するかもしれない」と脅されていた国民は年金システムに不安を覚えるようになった。

上げ潮派は後退し、国の借金を減らし財政を健全化するためには消費税増税が必要だと主張する財政再建派が台頭し、国民の不安は増大した。

小泉政権で抵抗勢力と見なされたのは郵政民営化反対派だったのだが、今回抵抗勢力と見なされたのは官僚だった。民主党は、霞ヶ関の官僚が埋蔵金を隠しており、天下りを通じて私服を肥やしているのだと主張した。地方分権を通じて地方に直接財源を委譲するとも主張した。

麻生政権下でリーマンショックが起きて選挙が先延ばしされたために、国民の不満は増大した。さらに郵政民営化を逆行させたために支持率が下がり参議院選挙や地方選挙でも勝てなくなった。このため、麻生下ろしが起き総選挙に追い込まれた結果、2009年に民主党政権が誕生した。党首は小沢一郎に代わり鳩山由紀夫だった。当初、民主党は当面の間は消費税を上げないと約束していた。

民主党政権

民主党政権は、政治家指導で予算配分を効率化させれば財源が見つかると主張していた。「コンクリートから人へ」をスローガンにして公共事業から社会保障へと予算配分を変えようとしたのだ。しかし、次第に官僚に頼るようになり資金源として44兆円の国債を発行した。マニフェストは破綻し、国民は不安を覚えるようになった。この頃、地方分権を標榜する大阪維新の会が登場した。社民党は政権入りしていたが、普天間基地の辺野古移転決議に反発し、政権を離脱した。

その後、菅直人政権下の2011年に東日本大震災福島第一原発事故が起こり民主党の統治のまずさが露呈した。様々な失政が積み重なり国民の不満は頂点に達した。新しく総理大臣になった野田佳彦は財務省に取り込まれて消費税増税を主張するようになった。消費税増税に反発した小沢一郎は消費税増税反対を訴えて、国民の生活が第一を立ち上げた。また一部の議員は日本維新の会に鞍替えした。支持率はさらに落ち込み、民主党は政権交代に追い込まれた。

民主党の外国人に対してリベラルな政策は「売国的」と批判された。また、尖閣諸島に中国の不審船が接近したこともあり、中国や韓国に対する反発が広がった。自民党は野党時代に復古的な憲法改正案をまとめた、この結果、全体的に右傾化が進行した。

二回目の安倍政権

政権に復帰した安倍政権下では、アメリカを模倣したリフレ政策が採用され、これをアベノミクスと呼ぶようになった。金融緩和をすればマイルドなインフレが起こり、経済が再び成長しはじめるだろうという理論だ。金融緩和の結果、円高が是正されて株価が上昇に転じた。また、日銀が国債を買い入れる(実質的な財政ファイナンス)ようになったため、国民の間にあった不安が解消された。リフレが起こるまで財政出動を活発にし消費税増税を先送りすべきだと主張する人も増えるようになった。

足元の経済が落ち着いたため、安倍政権はアメリカを防衛するために集団的自衛権を認めた安保法案を国会に上程した。立憲主義の否定だとして国民の反発を買ったが、野党への支持にはつながらなかった。

野党の現在

野党の中には「脱原発」「反TPP」「消費税増税反対」などを掲げている政党があるが、少数派に留まる。消費税増税は国民の反発を招くが「増税反対」を訴えただけでは支持は得られないようだ。反米政党は共産党しかない。地方分権を唱っていた維新の党は分裂寸前の状態である。

日本人の給与の推移を調べる

安保法制についての議論も一息ついた。その一方で、中国の経済不調が原因で株価が下がり「アベノミクスもメッキがはがれたのではないか」という声が上がっている。 物価も上がっておらず、リフレ派と呼ばれた人たちの主張がデタラメだったのだという指摘がある一方、勢いが足りないだけだからさらに財政出動すべきだという人もいる。

経済政策に関する議論にはテクニカルなものが多く複雑だ。そこで、もっと単純な仮説を立ててみる事にした。日本人がたくさん給料を貰っていれば、たくさんものを買うだろうという仮説だ。民間給与の総額は国税局の民間給与実態統計調査という資料を使えば簡単に調べられる。

wage現在の日本人の給与総額(民間)はおよそ200兆円弱だ。給与総額は1970年代の後半には50兆円だったので、80〜90年代にかけておよそ4倍になった。バブルが弾けた1991年には伸び率が鈍化したが、その後も伸び続けた。トレンドが変化したのは2000年頃で、給与総額は低下を始めた、さらに、リーマンショックの後減少ペースが加速した。ちょうど、自民党から民主党への政権交代の時期に当たる。その後民主党政権時代に底を打ち、自民党が政権復帰したところで下げ止まった。給与所得者の数は減っていないので、平均給与が下がっているということがわかる。給与所得者は貧しくなった。

時事ドットコムの記事によると、男性の平均給与が511万円のところ女性の平均給与は271万円だ。また、正規社員の給与が473万円のところ、非正規社員の給与は167万円である。被正規雇用が増えていることと合わせて考えると、日本の企業は正規雇用を減らし非正規雇用を増やす事で人件費の圧縮を図っているのだということが伺える。また「女性の社会進出」は本来であれば望ましいところだが、実際には人件費の圧縮に一役買っているだけだということが分かる。政府の掲げる「働き方の多様化(派遣の促進)」も「女性の社会進出」も根は同じで、人件費の圧縮を追認しているのである。

人生を豊かにするために女性が社会進出するのは大変結構なことだ。しかし、非正規雇用が増えて共働きでなければ生活が維持できないのであれば話はまた別だろう。共働きのためには子供をどこかに預ける必要がある。給与が低い女性かつ非正規雇用の労働者が増えれば公的支出の増加が見込まれる。それを支えるためには誰かが税で支える必要がある。それでは税収はどのように伸びているのだろうか。

財務省の資料によると所得税も法人税もバブル崩壊後急減している。それを置き換えているが消費税だがこれだけで全体の税収減をカバーすることはできない。

給与所得が落ち込む一方で年金支出は増えているので、全体としての収入の落ち込みはゆるやかなものになっているものと考えられる。しかし、国民所得が急激に増加するわけではないので、全体として物が売れなくなるのは当たりまえだ。

従来、日本の福祉は企業が背負ってきた。企業は男性社員に高い給与を支払うことによって間接的に専業主婦に支出していたものと考えられるからだ。しかし、企業はバブル崩壊後にそこから降りてしまった。一人当たりの稼ぐ力GNIで見ると、GNIはバブル崩壊後下がり始めたものの持ち直した。人件費削減の効果と考えられる。しかし、企業は給与を増やさず、法人税も支払わなかった。好調だったのもつかの間、リーマンショックをさかいにGNIは急落し今に至っている。

この事から分かるのは、日本経済にとって必要なのは金融政策や短期的にしか効果が持続しない財政出動ではなく、収益力の落ちた企業から経営資源を解放し稼げる企業へ引き渡すことだろうと思われる。

こうしたことができるのは国民に支持された安定した政権だけである。安倍政権には2年あったのだが、安保法制議論で時間と支持率を浪費した。また、大手企業の労働組合に支えられた民主党も対案を出す事はできなかった。多くの国民は政治への興味をなくし、こうした状況をただ傍観し続けている。

安倍さんの嘘と抑止力という安全神話

安保法制を巡って、当初安倍首相は2つの事例を挙げて「これは日本人を守る法案だ」と説明してました。ホルムズ海峡の機雷掃海と朝鮮半島(とおぼしき外国)から退避する邦人の保護です。

ホルムズ海峡の事例はしばらく前に取り下げられました。イランとアメリカが関係を修復したために、ホルムズ海峡に機雷がまかれる可能性がなくなったからです。これについで、朝鮮半島から退避する邦人を保護するという事例でも、集団的自衛権が行使できるかどうか怪しくなってきました。(東京新聞 – 米艦防護の条件めぐり 防衛相、邦人乗船「絶対でない」

この朝鮮半島の件には予兆がありました。先だって安倍首相は「朝鮮半島で有事が発生しても日本には重大な影響がない」という趣旨の発言をしたのです。ちょうど北朝鮮が準戦時状態に入っており、朝鮮戦争の可能性が出てきたために「日本が朝鮮戦争に巻き込まれるかもしれない」という議論を怖れたのかもしれません。これを聞いてネトウヨの人たちは「日本は韓国を見放す宣言をした」と大喜びしました。しかし、朝鮮戦争が有事でないならば、半島から邦人が逃げてきても集団的自衛権は発動できないことになってしまいます。

では、なぜ根拠のない集団的自衛権を通す必要があるのでしょうか。それはアメリカを防衛するためです。伝わってくる情報は断片的ではありますが、いくつかの事例があります。一つは安倍首相が訪米時に「北朝鮮がアメリカにミサイルを撃ってきたら、迎撃してあげる」という約束をしています。もう一つはアーミテージ元国務副長官がNHKへのインタビューで語った「日本周辺でアメリカ人を守るため自衛隊員も命を懸けるという宣誓なのだ」という台詞です。

アーミテージ氏のいう自衛隊の米軍護衛は、平時であれば特に国会の承認などが要らないことが民主党の質問で分かっています。平時からなし崩し的に緊張状態に陥る可能性があります。

ここから分かるのは「邦人保護」とか「国益を守る」というのはあくまでも国内向けの説明であって、本当の目的ではないということです。本当の目的はアメリカの保護なのです。

明らかに安倍首相は嘘をついているのですが、この文章の目的は安倍首相の嘘を非難し日米同盟など守る必要がないと主張することではありません。むしろ、安倍さんの嘘が日米同盟と自民党を危機にさらす可能性が懸念されます。

善意に解釈すると、安倍首相はアメリカを喜ばせようと考えて米国向けに「日本はアメリカを守る国になる」と宣伝し、日本人が心配すると思って「たいした事は起こらない」言っていると考えることができます。

何事もなければ、この2つは矛盾なく両立します。ところが、いったん何かが起こるとどちらかを満足させられなくなるでしょう。アメリカの圧力を怖れて内閣が有事を宣誓すると自衛隊に多くの死傷者がでて、国内世論が動揺する可能性もあります。一方、国内世論の動揺を怖れて内閣が知らないふりをすると、裏切られたと感じたアメリカ政府は日本に有形無形の圧力をかけるでしょう。もしかしたら、それは危機が去った後も続くかもしれず、日米同盟の空洞化が進む可能性もあります。すると、日本人は日米同盟への疑問を募らせるようになるでしょう。

この構図は原発に似ています。日米同盟が強固ならば何も起きないという「抑止力論」はつまりは、原発の安全神話と同じことなのです。法案が成立すれば、政府には有事の想定を「なかったこと」にしようとする圧力が働く事になると思います。

いったん事故が起こり国民保護の大義がなかったと国民が気づけば、国民世論は一気に「集団的自衛権行使反対」に傾くはずです。原発事故後に原発への反対世論が一気に進んだのと同じです。

事故後、原子力発電所の再開の判断は原子力規制委員会に丸投げされました。内閣への風当たりを避けたものと考えられています。しかし、安保法制では有事の判断をするのは内閣なので、日米双方からの圧力をまともに受けるものと思われます。逃げ場はありません。事故の際に地元への対応に追われるのは自民党と公明党の議員たちでしょう。

政権を賭してまでアメリカを守る覚悟があるとすれば、それはそれで立派な態度だと言えるかもしれません。しかし、安倍政権は本当にそこまでの覚悟があって、この法案を通そうとしているのでしょうか。

なされなかった鎮魂

昨日、国会審議で山本太郎議員が「広島への原爆投下は市民の大量殺戮で戦争犯罪だと思うが、政府は米国政府に謝罪を求めないのか」というような意味の質問をしました。しかし、岸田外務大臣も安倍首相も明確な言動を避けてお茶を濁しました。

このやりとりを聞けば、多くの日本人が「日本政府はアメリカに頭が上がらないから、言い出せないのだろう」と思うのではないかと思います。しかし、実際は違います。オバマ大統領には謝罪の用意があったと言われています。

アメリカABCがJapanese Government Nixed Idea of Obama Visiting, Apologizing for, Hiroshimaという記事を伝えています。nixとは拒否するという意味だそうです。日本政府がオバマの謝罪を拒否したのです。ウィキリークスの暴露を受けた記事でした。

当時、オバマ大統領は核廃絶への意欲が評価されてノーベル平和賞の受賞が決まっていました。一方。日本は政権交代の最中にありました。そこでルース駐日大使と会談した薮中三十二という外務省の官僚が「日本は準備ができていない」といって、勝手に断ってしまったのです。

今となってはオバマ大統領の謝罪がどのようなものだったのかは分かりません。もしかしたら単に広島を訪れて頭を下げるくらいの遠慮したものになっていた可能性もあります。しかし、それだけでも内外に大きな影響を与えていたでしょう。

確かに、いくら謝っても広島や長崎で亡くなった人たちが戻ってくるわけではありません。しかし、ご高齢になった遺族の方の気持ちはいくらかは休まったでしょう。それよりも大きいのは広島訪問が米国民に与える影響です。アメリカでは広島や長崎で何が起きたのかを知らない人が意外と多いのです。

では、なぜ日本政府はアメリカの謝罪を断ったのでしょうか。ウィキリークスの原文には「反核運動の増長を怖れたから」だと書いてあります。原子力発電所への反対運動に拡大することを怖れたのでしょう。今や死にかけている左派の運動にオバマ大統領がお墨付きを与えるなど、あってはならないことだったのではないかと思います。

日本政府がオバマ大統領の申し出を断ったのは、国内の勢力争いのためだったのです。

確かにこの謝罪は左派を勢いづかせることになったのかもしれません。しかし、よく考えてみて欲しいのですが、人道的な配慮に右や左といった違いがあるのでしょうか。もしあるとすれば、右派の人たちは「広島の犠牲者は国体を守る為には必要な犠牲だった」と考えるのでしょうか。その国体とはどのような物なのでしょうか。

いずれにせよ、謝罪はなされませんでした。薮中さんは外務省を去り、何があったかを聞く事もできません。政府がウィキリークスのような「不正に得た情報」についてコメントすることもないでしょうし、政府が伝えなければマスコミが報道することもないものと思われます。

今アメリカでは、ドナルド・トランプ大統領候補が「イスラム過激派に核兵器をぶち込む」と主張しています。都市が丸ごと破壊されると指摘する識者もいるのですが、トランプ氏に言わせると「多少の犠牲はつきもの」なのだそうです。今でもこのように考えるアメリカ人は少なくないのです。どこかで誰かが反省しなければ、こうした考えがなくなることはないでしょう。

このエントリーを読んで「ふーんひどいこともあるものだな」と考えることは誰にでもできると思います。しかし、もし「戦争犯罪はなくした方がいい」と考えるなら、それだけでは不十分だと思います。一人でも多くの人に、こうしたことを伝えてゆく責任があると思うのです。

韓国には未来永劫謝罪しつづけよ

韓国と北朝鮮が「一発即発」の事態に陥った。すわ朝鮮戦争の再開かと思ったのもつかの間、対立はおさまった。北朝鮮が謝罪したからだ。これには拍子抜けした。「ゴメンですむなら警察は要らない」という言い方があるが、朝鮮半島では「ゴメンですむから戦争しない」わけだ。

日本人は形式上の謝罪ではなく本当の気持ちが大切だと考える傾向がある。心がこもっていない謝罪は屈辱である。だから、軽々しく謝罪してしまうとますます誠意を見せなければならなくなるかもしれないと警戒する。どこまでも譲歩をしなければならないと覚悟するのだ。だから、日本人は軽々しく謝らない。

ところが、韓国や朝鮮の人はそうは考えないらしい。彼らにとって大切なのは「体裁」と「体面」である。どのように処遇してもらうかが大切で、相手から謝罪を勝ち取らなければ「弱腰だ」と非難されるのだろう。韓国の民衆は力の強い相手に対しては強くでられずに、屈折した気持ちを持つ。これを「恨(ハン)」と言う。指導者が「謝罪」を勝ち取ることにより、民衆は溜飲を下げることができるのだ。

だったら、日本の政治家や外交官は韓国政府の首脳に会うたびに、挨拶の代わりに謝罪すればいい。身振り手振りなどを交えてできるだけ大げさに謝罪するのが良いだろう。だからといって、何もする必要はないし、罪悪感を感じる必要もない。謝罪は彼らの体裁を満足させてあげているだけなのだ。

70年談話については、日本国内で様々な議論が交わされた。これは、日本人が戦争についてとても真面目に考えているという点では好ましいのだが、実際には「謝罪」という言葉が入っていれば、そこにたいした裏打ちがなくても良かったのだ。また、これは指導者に対する民衆の感情なので、日本国民が韓国人に謝る必要はない。

これは「韓国人をあげつらっているのだろう」とか「蔑視だ」と考える人もいるかもしれないが、単なる文化差によるもので、どちらが正しいというわけではない。もう少し例を挙げてみよう。

ドナルド・トランプ氏は「日本はタフな交渉者だ」と主張し、アメリカ人の歓声を浴びた。日本人はこれを聞いて「日本はアメリカにこれだけ遠慮しているのに、なぜ非難されるのだろうか」と思うかもしれない。

これには理由がある。日本人は遠慮がちで相手に慮った言い方をしがちだ。また、会談の席では表情を表に出さずにいるのが礼儀だとされる。そこでアメリカ人は「表情はよく分からないが、自分の言い分は認められているのだろう」と推測しがちである。ところが、日本人は「自分の一存だけでは決められない」と言い結論を持ち帰ることが多い。その結果、結論が覆ることも多い。それを見たアメリカ人は「日本人はポーカーフェイスで相手を騙そうとしている」とか「良い条件を引き出そうとしている」とか「タフな交渉者だ」と感じるのだ。

こうした文化差には注意が必要だ。安倍首相は4月に訪米し「日本はアメリカを防衛できるようにします」と言って喝采を浴びた。ところが、国内では「日本が攻撃されない限り、他国防衛はしません」と説明している。持ち帰りの結果、結論が変わりつつあるわけである。

安倍首相は相手に配慮して、日本の細かい事情を説明しなかっただけのかもしれない。しかし、相手にしてみれば「約束が違う」ということになりかねない。アメリカ人は率直さを好み不正直をとても嫌うので、彼らを怒らせることになるだろう。

日本人として謙譲の美徳を持ち、相手に誠意を示すのはとても大切なことだ。しかし、その誠意がそのまま伝わるとは限らないのだ。

ドナルド・トランプ語録 – 日本を敵視

共和党の大統領候補のドナルド・トランプは遠慮のない物言いで共和党の大統領候補の中でダントツの人気を誇っているが、ほとんどが英語で日本人にはあまり知られていない。演説内容は主に内政に関するもので、日本への言及は必ずしも多くない。そこで、様々な演説から日本に対して言及している部分を拾ってつなぎあわせた。

こうした演説がもてはやされているのを見ると、共和党支持者の白人は被害者意識を募らせていることがわかる。有色人種はアメリカに移民として押し寄せ、外国でもアメリカの仕事を奪っている。中国、日本、韓国、メキシコ、サウジアラビアなどの有色人種の国が名指しされる一方で、ヨーロッパやカナダなどの白人国が批判の対象になることは少ない。

共和党候補者が大統領になれば、これまでの対米交渉はすべてやり直しになるかもしれない。安保法制やTPPなど、国論を二分してまで大騒ぎする必要が本当にあるのか、充分に考えた方が良い。日本がアメリカに尽くしてみせても、相手には意外と伝わっていないということがわかる。

以下、トランプ語録。

私のメッセージは「アメリカを取り戻す(Make America Great Again)」だ。アメリカを再び金持ちで偉大な国にしなければならない。中国はアメリカの金を全て奪っている。メキシコ、日本、その他の国々もそうだ。サウジアラビアは多額のドルを1日で稼いでいるのに、アメリカの保護に対して何の対価も払わない。だが、正しいメッセージを発すれば彼らは対価を払うだろう。

四月にはツイートでTPPに対する意見を表明した。TPPはアメリカビジネスに対する攻撃だ。TPPでは日本の為替操作は防げない。これは悪い取引だ。2011年の本「タフになる時(Time to Get Tough)」ではアメリカ労働者を保護するために、輸入品に対して20%の関税をかけるべきだと主張している。

トランプは、アメリカは何の見返りもなしに日本や韓国などの競争相手を守ってやっていると言って批判した。日本が攻撃されたとき、アメリカには日本防衛の義務があるが、アメリカが攻撃されても日本は助けにくる必要がない。これがよい取引だと言えるだろうかと、43,000人収容のスタジアムに寿司詰めになった観衆に訴えかけた。

アメリカは日本と韓国に対して多額の貿易負債を抱えているのに守ってやっている。アメリカは何の見返りも受けていないと主張した。

「日本は米国に何百万台もの車を送ってくるが、東京で(米国製の)シボレーをみたことはあるか?」と挑発。中国、日本、メキシコから米国に雇用を取り戻すと訴えた。(産經新聞

トランプは安倍首相をスマートなリーダーだと持ち上げたうえで、お遊びで仕事をしているキャロライン・ケネディでは太刀打ちできないだろうと言った。日本のリーダーたちはタフな交渉人なのだ。

キャロライン・ケネディは娘の友人なので個人的には好きだが、日本のリーダーたちに豪華なもてなしで酔っぱらわされているだけだとの懸念を表明した。トランプが大統領になったら億万長者の投資家カール・アイカーンを中国と日本の貿易交渉の担当者にすると言った。アイカーンは喜んでやるだろうとトランプは言った。

以下、日本関連ではないが核に関する言及の一部。全文はTrump: I Will Absolutely Use A Nuclear Weapon Against ISISを参照のこと。

トランプはプレスとの会合で、最高司令官としてイスラム過激派に対して断固として核兵器を使用すると言及した。彼らは野蛮人だ。オバマのイラクとシリアの失策のせいで多くのキリスト教徒の首がはねられている。

[以下中略]

CNNの軍事アナリストのピーター・マンソーによると、トランプが水爆を使うと天文学的な市民の犠牲が予想される。アル・ラッカだけでも21000人の人口があるが、ほとんどISISとは関係がない。何百万人もの命が失われ、外交と地域の安定を取戻すまでに少なくとも百年はかかるだろう。

トランプによると「市民の犠牲は不幸な戦争の現実」だ。しかし核兵器を使えばアメリカと同盟国に歯向かう人たちに正しいメッセージを送ることになるとトランプは言う。自分は過去と現在の政権と違って、自分はアメリカを守るために正しいことをなすべきだという不屈のモラルを持っているとも主張した。そして、中国やメキシコには負けつつあるが、ISISには負けないと語った。の競争相手を守ってやっていると言って批判した。日本が攻撃されたとき、アメリカには日本防衛の義務があるが、アメリカが攻撃されても日本は助けにくる必要がない。これがよい取引だと言えるだろうかと、43,000人収容のスタジアムに寿司詰めになった観衆に訴えかけた。

アメリカは日本と韓国に対して多額の貿易負債を抱えているのに守ってやっている。アメリカは何の見返りも受けていないと主張した。

「日本は米国に何百万台もの車を送ってくるが、東京で(米国製の)シボレーをみたことはあるか?」と挑発。中国、日本、メキシコから米国に雇用を取り戻すと訴えた。(産經新聞

トランプは安倍首相をスマートなリーダーだと持ち上げたうえで、お遊びで仕事をしているキャロライン・ケネディでは太刀打ちできないだろうと言った。日本のリーダーたちはタフな交渉人なのだ。

キャロライン・ケネディは娘の友人なので個人的には好きだが、日本のリーダーたちに豪華なもてなしで酔っぱらわされているだけだとの懸念を表明した。トランプが大統領になったら億万長者の投資家カール・アイカーンを中国と日本の貿易交渉の担当者にすると言った。アイカーンは喜んでやるだろうとトランプは言った。

以下、日本関連ではないが核に関する言及の一部。全文はTrump: I Will Absolutely Use A Nuclear Weapon Against ISISを参照のこと。

トランプはプレスとの会合で、最高司令官としてイスラム過激派に対して断固として核兵器を使用すると言及した。彼らは野蛮人だ。オバマのイラクとシリアの失策のせいで多くのキリスト教徒の首がはねられている。

[以下中略]

CNNの軍事アナリストのピーター・マンソーによると、トランプが水爆を使うと天文学的な市民の犠牲が予想される。アル・ラッカだけでも21000人の人口があるが、ほとんどISISとは関係がない。何百万人もの命が失われ、外交と地域の安定を取戻すまでに少なくとも百年はかかるだろう。

トランプによると「市民の犠牲は不幸な戦争の現実」だ。しかし核兵器を使えばアメリカと同盟国に歯向かう人たちに正しいメッセージを送ることになるとトランプは言う。自分は過去と現在の政権と違って、自分はアメリカを守るために正しいことをなすべきだという不屈のモラルを持っているとも主張した。そして、中国やメキシコには負けつつあるが、ISISには負けないと語った。

中谷防衛大臣の過大な約束

アメリカ国防省から2つのドキュメントを拾ってきた。一つ目はアメリカ海軍のアジア太平洋地域での取り組みに関するドキュメントだ。国際協力を通じて緊張緩和の努力をすることを表明している。協力国の中には中国も含まれる。つまり、安倍政権支持者が願うような「中国封じ込め」というのは幻想だろう。

この文章を読むと、軍隊の役割が、戦争から情報の共有による紛争の未然防止に軸足を移しつつあることが分かるのだが、戦争に反対する野党ほど意識変革が必要なのではないかと思った。この意味で国会の議論は一回り遅れているのかもしれない。

もう一つは4月に中谷防衛大臣が表明したものだ。この中で中谷大臣は「地球のどこでもアメリカ軍に協力する準備をしている」と言っている。英雄然とした立派なインタビューだ。ただし、日本の現行憲法にはどこにも「日本が世界中で正義の味方として振る舞って良い」などとは書いていないし、日本の自衛とは全く関係がない。

「世界のヒーローになるために憲法改正させてください」くらいのことを言えば国民も説得されたかもしれないが、安倍首相の好戦的な普段の言動と、自民党改憲案のあまりにも復古的な内容のせいで国民の支持は得られなかった。

アメリカのアジア太平洋地域海軍安全保障方針の概要(2015.8.21)

アメリカは外交や国際機関との協同などを通じて、海洋の安全確保に努力する。東シナ海や南シナ海での領土要求に対していかなるポジションも取らないが、中国のスプラトリー諸島の人工島の建設を懸念している。

アメリカは、アメリカと同盟国の利益を守る為にアジア海上でのプレゼンスを維持し、紛争防止の為の能力を強化しつつある。また、その為に最新鋭の能力への投資を行っている。同盟国の海軍力強化にも取り組んでいる。

アメリカは、同盟国やパートナーとの間で、相互運用性(インターオペラビリティ)を構築中だ。中国指導者や地域当局との間でリスク回避手段を作成中である。船舶対船舶の合意はでき上がっており、年末までには航空機同士の遭遇に関する合意ができることを希望している。また、地域安全機関の強化を目指している。この点でASEANの重要性は増している。

http://www.defense.gov/News-Article-View/Article/614488/us-outlines-asia-pacific-maritime-security-strategy

日本との戦略ガイドラインの見直しについて(2015.4.27)

日本の中谷防衛大臣がインタビューに応じて以下のように語った。

日本はアメリカのリバランス政策を歓迎し、日米戦略ガイドラインの見直しにより日米がより緊密に連携できるのを楽しみにしている。この見直しで、日本は世界中でアメリカと連携できるようになるばかりでなく、宇宙やサイバー空間でも協同できるようになる。このガイドラインは地域の紛争抑止と安定に役立つだろう。

この見直しの要点は、日本がこの地域だけでなく世界中でアメリカと協力できるということだ。そればかりか、宇宙やサイバースペースでも協力ができるようになる。

日米は調整メカニズムを作り、平時・有事の連携を強めるつもりだ。米国空軍と航空自衛隊の演習も充実させる。新しい法整備が整えば同盟国との間で兵站のサポートができるようになる。自衛隊は世界の平和維持に貢献することができるようになるだろう。

アメリカと協力するためには、二つの前提条件が揃う必要がある。国連決議などの国際的サポートと国会の承認だ。

新しいガイドドラインには、同盟間の調整メカニズムが必須だ。調整は内閣からコマンドレベルまでのあらゆる連携が必要である。日本を取り巻く安全保障環境は複雑なので、日米は新しい脅威に連携して対処する必要がある。

http://www.defense.gov/News/Article/604528