もはや災害レベルの人口減少と徳を失った国会議員たち

杉田水脈の「生産性問題」について考えている。国民を国会議員が支配する対象のようにみなして選別しようとする発言が非難されているという話だった。ここで杉田発言を非難するのは簡単だが、もっと重要な問題が見過ごされてしまう。一緒に騒ぐことによって政治ショーに加担するのは実はとても有害なことなのである。

杉田水脈発言は「伝統的な家族という価値」が復活しさえすれば日本の活力が戻るという信仰に支えられている。そしてこうした言動を支持する人たちは伝統的な家族が復活すれば自分が家庭に君臨できるという根拠のない自信を持っている。だが、実際にはそんなことを言っていられないほどの変化が起きている。日本人が壊滅的な勢いで減っているのである。

Twitterで2020年に人口が毎年50万人減ってゆくという記事が流れてきた。こういう記事を見た時にはまず「嘘だろう」と思うことにしている。そこで検索してみると2018年には人口が37万人も減っているという記事が見つかった。つまり、人口減は現在も進行しているのである。

37万人というと3年で100万人以上の人口が消えることになる。つまり3年で千葉市や北九州市以上の人口が消えてしまうことになる。鳥取県は2年を待たずになくなる。東京23区で人口30万人から40万人規模というのは新宿、中野、北、品川と同じくらいだそうだ。これが一年で消えてしまうというのが今の日本なのである。

最近よく「今までにないレベルの災害」という言葉を聞くようになった。豪雨災害が増えているので「今までの常識で大丈夫だった」からといってこれからも無事でいられるとは限らない。同じような言い方をすると、かつてないレベルで人口が減ってゆくのだから、これまでとは違ったレベルの警戒が求められるということになるのだが、こちらは日常の出来事なので災害という印象が持たれにくい。

日本の人口は均一的に減ってゆくのではないので、まず地方経済が壊滅的な影響を受けているようだ。高齢者は地方に住み続けるが、子供達は都会に出て行ってしまうからである。相続の際に高齢者の資産が都市に流れそのあとは戻ってこないという記事を見つけた。

これからの金融資産は人とともに都市部に集まる。野村資本市場研究所が人口減や高齢化、相続に伴う資産移転の影響を試算したところ、30年までに金融資産が増えるのは東京都と埼玉、千葉、神奈川、愛知、滋賀、奈良の6県だけだった。

日経新聞は「銀行のビジネスモデルを再構築すべきだ」と言っているのだが、アベノミクスにより地方の銀行は儲けられないので、もはや利子による収益は見込めない。地方銀行が潰れるということはその地方の経済が潰れてしまうということを意味するのだが、産業界が安倍政権を支えているので日経はそこまでは書けず、「合併で持ちこたえるべきだ」という意見を出しているのみである。そもそも地方からお金が蒸発するのだから合併したところで収益が上がる見込みはない。

問題は徐々に広がるので地方の有権者も議員たちも問題の大きさには気がついていないようである。鳥取・島根、高知・徳島は合区になった。この県に一人づつ代表を置こうと「憲法改正」を目指したのだが、参議院選挙までに間に合わないということがわかると強引に比例代表制度を変更してしまった。つまり彼らは憲法などに興味はない。興味があるのは自分の議席だけなのである。しかし、どんな選挙制度を作っても根本的な問題解決にはならない。今後も地方の人口は減少してゆくからである。

杉田議員は「まだ余裕がある」と考えているのだろう。そこで生産性の議論を持ち出してマイノリティをイジっている。目的は自分の議席の確保とマウンティングだろう。だが、実際にはそんなことをしている余裕はないほど日本は追い込まれているのである。

こうした問題は新聞を少し検索しただけで出てくる程度の情報の組み合わせでしかないが、自民党から聞こえてくるのは、これからも自分たちが独占するであろう内閣が国民に指図ができるように基本的人権を制限するアイディアや、自衛隊を軍隊にして中国に対して威張れるようにしたいというようなアイディアばかりである。前回「理念なき国」についてみたのだが、国から理念が消えてゆくと「どうやったら自分が利益を独占できるか」ということで頭がいっぱいになってしまうようだ。すると、国全体の問題が見えなくなってしまうのだ。

災害レベルの人口減少なのだから今まで通りの戦略で人口を増やすことはできない。まず伝統的な結婚観や家族観は今すぐ放棄すべきだろう。

結婚しないと子供を作れないという今の制度は効率が悪すぎる。同性愛だからといって子供を育てられないということはないのだから養子制度を充実させて子育てに協力してもらうべきだし、芸能人の結婚報道で「妊娠しておらず予定もない」などという報道は偏見を助長するので法律で禁止すべきだろう。よく児童相談所の職員を増員しろなどという意見も聞かれるのだが、これも考えものである。子供を虐待して減らしてしまうような余裕はないので、問題が露見したら「親権」などとは言わずに子供を育てたい人に育ててもらうべきなのかもしれない。

文句をいう人は出てくるだろうが、もはや「非国民」と言って良い。もはや結婚制度と子育てをリンクできる余裕はこの国にはない。「順番を重視しろ」などとカッコいいことは言っていられないはずなのである。

このような議論を始めると変化を恐れた人たちが「変えないための議論」をやりたがるのだが、毎年30万人以上が減ってしまう状態にどんな選択肢があるのかを逆に聞いてみたい所である。

安倍首相は西日本豪雨災害の時に引きこもって選挙対策をしていたようだ。目の前で「人口減少」という災害が起きているのだが、特に何も手を打っていない。総裁選挙で頭がいっぱいになっているのである。

いずれにせよ杉田議員は国会議員にはふさわしくない。本来ならば国家を総動員して子育てをしなければならないのだが、不用意な発言で同性愛者の人たちを自民党の前に集めるだけで終わってしまった。そして自民党の人たちは杉田議員に問題を指摘できないようだ。安倍首相の派閥に属しており下手なことをいって自分たちの地位が危うくなることを恐れているのではないかと思う。

国会議員たちもまた国が衰退しているという実感を持っているのだろう。だが、自分だけが逃げ切れば良いと考える人が多い。問題を「伝統的な家族がなくなったからなので人権が悪い」とごまかそうとする国会議員もいる。一方で、国民と一緒にこの問題に取り組もうという人はそれほど多くなさそうだ。日本の政治家は徳を失っているのである。