TPPと植民地化

国会でTPPに関する議論が始まった。とはいえ数で結果が決まっているので消化試合というかできレースというか儀式のような議論が続いている。議論には数種類あり延々と繰り返されている。

  • TPPは自由貿易を活性化させて域内の経済成長を促すだろう。安部万歳!
  • 農業補助金を利権とし取り込みたい。恒久財源化したい。
  • 安部政権はアメリカに屈服した。
  • 交渉過程が黒塗りなので安部は何か隠している。そのほかの通商交渉でアメリカに屈服したのだろう。
  • 環境問題のほうが先だから、TPP議論は先送りしたい。どうせアメリカは議会審議が始められないので時間稼ぎができる。

その中で異彩を放っていたのが小泉進次郎議員の議論だ。「自分は農業を知らない」という前提で入り、農家の声を聞いた結果「消費者が把握できている農家は農業に不安を持っていない」ということを知る。生産者と諸費者の間に立っているのがJAなのだが、これが機能不全を起こしているという分析に至る。

小泉議員が特殊なのは「自分たちが変わらなければならない」というメッセージを発出しているからなのだが、これがあって始めて与野党ともに「自分たちは変わる必要がない」と考えているということがわかる。

小泉議員はきわめて危険だ。この人だけが「変革」を前提としているので、賛同者が集まれば変革のエンジンになれるのだが、同時に日本の政治家が基本的に現状認識も行っていないし、何かを成し遂げようという意欲もないということが露見してしまう。これを防ぐためには小泉議員を抹殺するしかないということになる。

特に安部首相の無能さが際立った。答弁を聞くと小泉氏の言っていることがよくわかっていないのだろうと思う。答えになっていなかった。しかも「がんばって欲しい」といい、変革の方針を容認してしまった。

これは自民党がどのように崩壊するかということを暗示している。問題は相互に関連しているのだが、これを法案ごとに分けて考えているようだ。これを統合すると問題が起こるはずなのだが、実際にはすべて「容認」されているので最終的に収集が付かなくなるはずである。

この人は上の空でいつも何かほかのことを考えているのだろう。例えばTPPの意味もよくわかっていないのではないかと考えられる。確かにTPPは経済成長を促すかもしれないのだが、それを評価するためには経済成長とは何かということを考える必要がある。

NHKスペシャルによれば経済成長とは、非経済圏の「経済化」である。この非経済圏を「フロンティア」と呼んでいる。前半のあらましは、フロンティアが消失して、バーチャルにフロンティアを求めたというものだった。しかしリーマンショック以降バーチャルのフロンティアが消滅した。

TPPは域内の非経済分野を経済化することでフロンティアを再創出しようとしている。非経済分野とは、医療・福祉・介護、農業、公共事業などだ。つまり、フロンティアとしての外国がなくなってしまったので、自国の中にある「非経済圏」を経済化しようという意図があるのだ。

ここまで説明しないと「TPPは自国を植民地化しようとしている」というステートメントが大げさなものに見えてしまう。先進国は軍事的に外国を占領することが「経済化」だった。これがなくなったので、国の中にあるフロンティアを搾り出そうというのが、TPPなのである。

これだけでは「ふーん別にいいんじゃないの」と思えるのだが、例えば介護の経済化とは「お金のない人は勝手に死んでね」ということになるわけだし、食品添加物は死者が出るか深刻な病気が露見するまでは放置されることになる。民主主義国家では非経済圏はなんらかの理由があって設定されているはずなので、これを取り除くことで国民は必要な保護が受けられなくなる。

アメリカでTPP反対運動が起こったのは、すでに多国籍企業対市民という図式が露出しているためだと考えられる。クリントン候補は「アメリカの労働者とその家族ための高いスタンダードを確保する」という言い方で修正を図ったのだが、「外国から仕事を奪ってきますよ」という意味合いになっている。多国籍企業の利益を確保しつつ(流出したメールから企業との関係は露見している)アメリカ人を負け組みにしないためには他国から仕事を奪ってこなければならない。

つまり、TPPはすでに失敗している。旧来の自由貿易理論では関税障壁を取り除けば、流量が増えて経済発展するということになっている。しかし、経済発展するのは企業だけであってそれが再び国民の間に還流してくることはない。それがわかっているからこそ「大企業ではなく日本が為替操作しているからだなどと」と言い換えることによって敵を作っている。これは間接的にどこかから富を収奪しなければ、吸い取られるだけに終わってしまうことを示唆している。

日本では企業によって収奪されるであろう富を国庫で負担するというのが議論の争点になっている。これは富を補填する対象が外国ではなく国民貯蓄に変わっているだけのことである。

この議論では「植民地化」とか「収奪」といった色の付いた用語が多く使われている。実際には富がどこからどこへ移転するかということを説明するのに色をつけているだけだい。こうした用語に抵抗があるのなら(多分共産党や左翼運動が嫌いな人たちだろうが)単に収支(=お金の流れ)として認識するのがよいのかもしれない。

すると問題は国民(=有権者=消費者)から企業(=供給者)へお金が流れ、それが金融空間に留まっていることが問題だということがわかるだろう。供給者から消費者にお金を再還流させる方法には賃金と税がある。金融による富の製造には人件費がかからないのだから、最後の砦は課税ということになる。多国籍企業に富が流れると政府が課税することができなくなる。これをTPPはそれを加速させているので、結果的にTPPは域内を植民地化するための道具だということになるのだ。

ここからわかるのは、自由主義経済がどこかおかしくなっているということなのだが、いったい何がおかしくなっているのだろう。自由主義経済で中所得者が困窮しないのは、彼らが消費者としての側面を持っているからだ。しかし、金融市場では彼らは顧客ではないので「どうなろうが知ったことではない」ということになる。

金融は自分で栄養を作り出せない寄生植物のような位置づけだ。葉緑素を持っている植物を実体経済だとすると、その栄養を吸っているキノコのようなものである。キノコばかりが育てば木は朽ち果ててしまう。するとキノコも育てなくなってしまうのである。

TPPは不平等条約

山崎雅弘という識者が「TPPは帝国主義時代の不平等条約に似ている」と呟いているのを見た。合意の内容の正文が英語なので、チェックするためには全部翻訳すべきだろうと主張しているが、この主張は間違っている。

この主張が間違っている理由は簡単だ。これは不平等条約に似ているのではなく、不平等条約だからだ。確かに、英文を翻訳すれば現在の内容はわかるだろう。しかし、合意内容にはあまり意味がないかもしれない。意味があるのは運用だ。ルールを決める人ではなく、解釈して運用する人が経済を支配するのだ。裁判も英語で行われるのではないだろうか。

数の上でも英語圏が勝っている。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダが参加している。これにシンガポールが加わる。

とはいえ、これが「日本に対して不平等」とはならない。英語ができる日本人が、英語ができない日本人を支配することになるだろう。日本にいる外資系企業と同じだ。新自由主義的には「英語も能力のうち」ということになるのだろう。

この事があまり問題にならないのは、日本人が多文化圏での経験を余り持っていないからではないかと思われる。公用言語ができないことで、経済活動から学術まで排除されかねないという経験をしたことがないのだろう。多数決や民主主義というのはとてもフェアに聞こえるが、言語的に排除された人からみるととても不平等な制度なのだ。

特に現在意思決定の頂点にいる人たちは言語の大切さというものを理解していないものと思われる。

官僚は自分たちの子供には英語を学ばせつつ、英語話者の代理人としてこの国を取り仕切れるだろうと考えているのかもしれない。大元が曖昧であればあるほど解釈できる裁量は大きくなるからだ。一方、ドメスティックな環境に慣れきった自民党の政治家たちは指導者の地位から滑り落ちてしまうかもしれない。経済的な重要政策を東京で決められなくなってしまう。

だから自民党の議員たちは「農業で補助金を」と要求する前に「日本語で交渉しろ」と言うべきだった。そこまで長期的なことは考えられなくなっているのかもしれない。

不思議なのは、右派の人たちが反対しなかったことだ。普段は「日本精神の大切さ」を唱っているのだから、こうした国際交渉ができる場では、しっかりと日本語を公用語として認めさせる運動をするべきだった。だが、右派の親玉と見なされる安倍首相がTPPを推進しているので、反対に回れなかったのだろう。

いずれにせよ、右派の人たちが「日本の伝統云々」という主張は割り引いて考えた方がよさそうだ。彼らは権威に乗って威張ったり、半島系の人をバカにしたいだけで、日本の伝統がどうなっても知った事ではないのではないかと思われる。

いずれにせよ「日本語にしてくれないと、どこがヤバいのかチェックできない」という主張は間違っている。運用が始まればどっちみち意思決定から排除されるのだ。文字が読めないのに「証文には金返せって書いてありますよ」と言われたら従わざるを得ないのと同じだ。裁判になっても言葉が分からなければ泣き寝入りするしかない。

だから反対するなら「不平等条約みたいだ」というのではなく「不平等条約だ」と言い切った方がいい。

なお、蛇足だが、アメリカはスペイン系移民に浸食されつつある。連邦レベルでは英語は公用語ではないので、いつのまにか「日本人もスペイン語を勉強しなければ出世できない」という時代が来るのかもしれない。TPPのスペイン語国にはメキシコ、ペルー、チリがある。

TPPと英語

国会でTPPに関する審議が始まった。とはいえ、1日しかやらないそうである。多分、指摘が上がる前に議論が終るとは思うのだが、無駄足覚悟で書いておく。

安倍首相は「TPPでルールが明確になる」と言っている。これは確かなことかもしれない。しかし、それが日本人に不利になる可能性については考えていないようだ。仲裁はどうやらアメリカで行われるらしい。ということは、英語で行われるのだろう。合意内容もニュージーランド政府が発表した。多分、すべて英語だったのではないかと思う。TPP参加国のうち、英語国はアメリカ・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドの4か国だ。シンガポールを加えると5カ国が英語国ということになる。

多分「透明なルールは英語で作られる」のだ。日本語しか分からない人はルール作りに参加できないし、何が行われているかも分からない。しかし、プロセスは完全に透明化されている(ただし英語で)わけだから、決まった後で文句を言っても「聞いていなかったお前が悪い」ということになる。不平不満も言えない。日本語で言っても伝わらないからだ。英語圏の人たちが納得できなければ「なぜだ」としつこく聞かれるだろう。それにも英語で答えなければならない。それを怠ると「フェアでない」と言われる。暗黙で「分かってもらえる」ということはあり得ない。

ルールを作ったり、調整する側に回れないということは、その人は「搾取(あるいは使役される)側」に回るということだ。日本の大企業の役員のほとんどの地位は大きく凋落するだろう。日本人のTOEICやTOEFLの成績から見ると、ほとんどの日本人にとっては割の悪い話だが、勉強しなかった人が悪い、自己責任だということになってしまう。

英語ができない親の家庭の子供は英語を話せないだろう。逆に英語が話せる親の子供は早くから幼児教育を受けるだろう。幼児教育にはお金がかかるから、格差は拡大するに違いない。港区とか渋谷区に住んでいれば、インターナショナル教育へのアクセスもありそうだが、地方はどうだろうか。期待できるのは沖縄くらいではないだろうか。

皮肉なのは、これを押し進めようとしているのは「日本の伝統こそが主権を持っている」という所謂「国体信仰」の人たちだということだ。日本の民族性がどこに由来するかは分からないが、日本語はその大きな構成要素であると考えられる。彼ら主流派が物事を決められるのは、意思決定が霞ヶ関と永田町に集中し、それが日本語でなされているからである。

TPPが発効すると、経済的な政策はすべて別のところ(多分、アメリカのどこかだろう)で英語で決められることになる。自分たちの利権を守ろうとして日本語で保護的な政策を打てば訴えられることになる。裁判は多分英語で戦うことになるのだろう。

こうした一連のことを考え合わせると、自民党とそれを支持する人たちの地位が凋落することは間違いがない。その意味で安倍首相は「歴史的な」首相になるのかもしれない。

多分、交渉をした人たちは「言語的に排除される恐ろしさ」というものを知らないのだろう。留学経験のある役人(多分英語が話せる)は実感として分かっているかもしれないが、言語的に単一な社会に住んでいる日本語話者の政治家はマイノリティとしての経験がないのだろう。せめて、EUのように公式言語を決めておくべきだったが「後の祭り」だ。

国の伝統や民族の誇りを重要視しているはずの「右寄り」自民党の人たちは、単に支持者にすり寄りたいだけなのかもしれない。本当に民族性を自覚していれば、日本語や他国語の地位について無関心でいられるはずはないからだ。自民党にも「右翼」といえるような過激な主張をする政治家がいるが、彼らも情けない。彼らが蔑視して蔑んでいる「左翼」は攻撃できるくせに、自分のボスには逆らえない。中国や韓国には大いばりだが、「世界の一等国」アメリカと最先端言語の英語には劣等感を持っているのかもしれない。

ヒラリー・クリントン氏がTPPに反対する

Twitterを見ていたら、ヒラリー・クリントン氏がTPPに反対していた。要旨はざっとこんな感じ。

為替操作の禁止が盛り込まれているかや製薬会社にばかり有利になり患者が置き去りになっていないかなどを注意深く見ていたが、これまで知りうる情報ではTPP合意には賛成できない。

TPP合意はアメリカに仕事をもたらし、給与を増やし、国防に利するものでなければならない。この数年間、アメリカ人は裏切られ続けてきた。被害者はアメリカの勤労家庭で、必要な支払いができるほどの給与がえられていない。共和党はアメリカの競争力を削ぐような反対ばかりしている。オバマ大統領の提案した、インフラ・教育・クリーンエネルギー・イノベーションに対する投資に反対し、最低賃金を上げたり、労働者の権利を守ったり、職業訓練に投資したりすることを拒んだ。結果、アメリカの競争力は削がれ労働者は必要な保護を得られなかった。貿易の恩恵は消え、ネガティブな効果ばかりが募った。

私は、かつて私が国務長官時代に推進していたように、強くて公平な貿易合意が可能だと信じている。オバマ大統領とチームのハードワークには感謝しているし、これまでの歩みも知っている。しかし、現在の合意が望まれるような高い水準に合致しているとは思えない。

自由貿易に反対しているのではなく、要するに「もっとアメリカに有利な合意を」ということらしい。中段ではTPPに反対しているのか共和党に反対しているのかよく分からなくなっている。製薬会社に有利すぎるのではという批判を日本ではよく聞くがアメリカ人にも反対している人がいるというのは面白い。

アメリカの給与水準はかなり高水準でヨーロッパの大抵の国よりも高い。にも関わらず「まだ足りない」と思っているという点が興味深い。失業率もヨーロッパと比べると格段に低い。ヒラリー・クリントンはスペイン語での情報発信にも力を入れているようなので、経済発展に取り残されたと感じている層に働きかけているのかもしれない。支持基盤の労働組合がTPPに反対しているという報道もある。

大企業の経営者層はTPPに賛成しているが、一般庶民は不安を募らせているという図式は、日米に共通するものらしい。トリクルダウンなどと言っても、黙っていて恩恵が振ってくる訳ではないので、どのようにして分配させるかということを真面目に考えるべきなのかもしれない。

「十分な暮らしができるほどの給料が得られていない」という不満は本来ならば大企業に向けられるべきだが、代理として共和党や貿易協定(および相手国)が非難の対象になっている。これは「将来が不安だ」という感情を自民党や「戦争をするかもしれない」安倍政権に向けているのに似ている。

一方で「公平なルールならば必ずアメリカの利益になるはず」という思い込みはアメリカ特有のものだと考えられる。シボレーが売れないのは日本政府が妨害しているからというトランプ氏のコメントにも見られる考え方だ。日本人はソニーのテレビが売れないのはアメリカ政府が陰謀を巡らせているからだとは考えないだろう。英語の「It’s not fair」というのは、自分たちに有利ではないくらいの意味なのかもしれない。

ドナルド・トランプ語録 – 日本を敵視

共和党の大統領候補のドナルド・トランプは遠慮のない物言いで共和党の大統領候補の中でダントツの人気を誇っているが、ほとんどが英語で日本人にはあまり知られていない。演説内容は主に内政に関するもので、日本への言及は必ずしも多くない。そこで、様々な演説から日本に対して言及している部分を拾ってつなぎあわせた。

こうした演説がもてはやされているのを見ると、共和党支持者の白人は被害者意識を募らせていることがわかる。有色人種はアメリカに移民として押し寄せ、外国でもアメリカの仕事を奪っている。中国、日本、韓国、メキシコ、サウジアラビアなどの有色人種の国が名指しされる一方で、ヨーロッパやカナダなどの白人国が批判の対象になることは少ない。

共和党候補者が大統領になれば、これまでの対米交渉はすべてやり直しになるかもしれない。安保法制やTPPなど、国論を二分してまで大騒ぎする必要が本当にあるのか、充分に考えた方が良い。日本がアメリカに尽くしてみせても、相手には意外と伝わっていないということがわかる。

以下、トランプ語録。

私のメッセージは「アメリカを取り戻す(Make America Great Again)」だ。アメリカを再び金持ちで偉大な国にしなければならない。中国はアメリカの金を全て奪っている。メキシコ、日本、その他の国々もそうだ。サウジアラビアは多額のドルを1日で稼いでいるのに、アメリカの保護に対して何の対価も払わない。だが、正しいメッセージを発すれば彼らは対価を払うだろう。

四月にはツイートでTPPに対する意見を表明した。TPPはアメリカビジネスに対する攻撃だ。TPPでは日本の為替操作は防げない。これは悪い取引だ。2011年の本「タフになる時(Time to Get Tough)」ではアメリカ労働者を保護するために、輸入品に対して20%の関税をかけるべきだと主張している。

トランプは、アメリカは何の見返りもなしに日本や韓国などの競争相手を守ってやっていると言って批判した。日本が攻撃されたとき、アメリカには日本防衛の義務があるが、アメリカが攻撃されても日本は助けにくる必要がない。これがよい取引だと言えるだろうかと、43,000人収容のスタジアムに寿司詰めになった観衆に訴えかけた。

アメリカは日本と韓国に対して多額の貿易負債を抱えているのに守ってやっている。アメリカは何の見返りも受けていないと主張した。

「日本は米国に何百万台もの車を送ってくるが、東京で(米国製の)シボレーをみたことはあるか?」と挑発。中国、日本、メキシコから米国に雇用を取り戻すと訴えた。(産經新聞

トランプは安倍首相をスマートなリーダーだと持ち上げたうえで、お遊びで仕事をしているキャロライン・ケネディでは太刀打ちできないだろうと言った。日本のリーダーたちはタフな交渉人なのだ。

キャロライン・ケネディは娘の友人なので個人的には好きだが、日本のリーダーたちに豪華なもてなしで酔っぱらわされているだけだとの懸念を表明した。トランプが大統領になったら億万長者の投資家カール・アイカーンを中国と日本の貿易交渉の担当者にすると言った。アイカーンは喜んでやるだろうとトランプは言った。

以下、日本関連ではないが核に関する言及の一部。全文はTrump: I Will Absolutely Use A Nuclear Weapon Against ISISを参照のこと。

トランプはプレスとの会合で、最高司令官としてイスラム過激派に対して断固として核兵器を使用すると言及した。彼らは野蛮人だ。オバマのイラクとシリアの失策のせいで多くのキリスト教徒の首がはねられている。

[以下中略]

CNNの軍事アナリストのピーター・マンソーによると、トランプが水爆を使うと天文学的な市民の犠牲が予想される。アル・ラッカだけでも21000人の人口があるが、ほとんどISISとは関係がない。何百万人もの命が失われ、外交と地域の安定を取戻すまでに少なくとも百年はかかるだろう。

トランプによると「市民の犠牲は不幸な戦争の現実」だ。しかし核兵器を使えばアメリカと同盟国に歯向かう人たちに正しいメッセージを送ることになるとトランプは言う。自分は過去と現在の政権と違って、自分はアメリカを守るために正しいことをなすべきだという不屈のモラルを持っているとも主張した。そして、中国やメキシコには負けつつあるが、ISISには負けないと語った。の競争相手を守ってやっていると言って批判した。日本が攻撃されたとき、アメリカには日本防衛の義務があるが、アメリカが攻撃されても日本は助けにくる必要がない。これがよい取引だと言えるだろうかと、43,000人収容のスタジアムに寿司詰めになった観衆に訴えかけた。

アメリカは日本と韓国に対して多額の貿易負債を抱えているのに守ってやっている。アメリカは何の見返りも受けていないと主張した。

「日本は米国に何百万台もの車を送ってくるが、東京で(米国製の)シボレーをみたことはあるか?」と挑発。中国、日本、メキシコから米国に雇用を取り戻すと訴えた。(産經新聞

トランプは安倍首相をスマートなリーダーだと持ち上げたうえで、お遊びで仕事をしているキャロライン・ケネディでは太刀打ちできないだろうと言った。日本のリーダーたちはタフな交渉人なのだ。

キャロライン・ケネディは娘の友人なので個人的には好きだが、日本のリーダーたちに豪華なもてなしで酔っぱらわされているだけだとの懸念を表明した。トランプが大統領になったら億万長者の投資家カール・アイカーンを中国と日本の貿易交渉の担当者にすると言った。アイカーンは喜んでやるだろうとトランプは言った。

以下、日本関連ではないが核に関する言及の一部。全文はTrump: I Will Absolutely Use A Nuclear Weapon Against ISISを参照のこと。

トランプはプレスとの会合で、最高司令官としてイスラム過激派に対して断固として核兵器を使用すると言及した。彼らは野蛮人だ。オバマのイラクとシリアの失策のせいで多くのキリスト教徒の首がはねられている。

[以下中略]

CNNの軍事アナリストのピーター・マンソーによると、トランプが水爆を使うと天文学的な市民の犠牲が予想される。アル・ラッカだけでも21000人の人口があるが、ほとんどISISとは関係がない。何百万人もの命が失われ、外交と地域の安定を取戻すまでに少なくとも百年はかかるだろう。

トランプによると「市民の犠牲は不幸な戦争の現実」だ。しかし核兵器を使えばアメリカと同盟国に歯向かう人たちに正しいメッセージを送ることになるとトランプは言う。自分は過去と現在の政権と違って、自分はアメリカを守るために正しいことをなすべきだという不屈のモラルを持っているとも主張した。そして、中国やメキシコには負けつつあるが、ISISには負けないと語った。

通貨戦争とブロック経済

1929年の金融恐慌をきっかけに、各国は深刻な経済不況に見舞われた。第一次世界大戦後の経済好況で生じたアメリカの生産過剰が急激に調整されたものと考えられている。

1929年にアメリカはホーリー・スムート法を成立させ、国外からの製品に高い関税をかけるようになった。ヨーロッパの国々も報復し域外からの輸入品に高い関税を課した。こうしてでき上がった経済圏を経済ブロックと呼ぶ。主な経済ブロックは、アメリカドル圏、フランスフラン圏、イギリスポンド圏だった。ソ連は資本主義経済を離脱しており、大きな影響を受けなかった。

1931年にはイギリスは金本位制を離脱し、それまで割高だったスターリングポンドの価値を切り下げた。通貨の価値が下がると、それだけ自国製品を輸出しやすくなり、国内市場でも自国製品が有利になる。イギリスが通貨を下げるとアメリカやフランスもこれに追随した。その結果起きたのが通貨安競争だ。通貨安競争はやがて近隣窮乏化策と呼ばれるようになった。結果的に域内の失業が輸出されたからだ。

結果、世界の貿易額は4年で1/3に縮小した。経済圏から閉め出された国の経済は困窮した。これが海外進出につながった。出遅れていた日本、ドイツ、イタリアは「世界秩序への挑戦者」となり、そのまま第二次世界大戦に突入した。

連合国は通貨安競争が世界大戦を誘発した経験から、1944年にIMFを設立しドルを基軸に通貨価値を安定させることを決めた。また、自由貿易を促進するために1947年にGATT(関税および貿易に関する一般協定)と呼ばれる枠組みが作られた。GATTは1995年にWTO(世界貿易機関)に引き継がれた。

高い関税が世界貿易を縮小させたのは間違いがないが、通貨安競争が近隣窮乏化だったのかについては議論がある。1930年代の経験から、世界経済に悪影響をもたらしたものと信じられている。

通貨安競争もブロック経済化もその当時は自衛の手段だったと考えられる。ところが、いったん自己防衛メカニズムが働くと、全体の経済規模は縮小をはじめた。部分的な調整が始まると、全体としての利得は著しく減る。すると、それぞれの国々がいくら努力しても、本来得られるはずだった利得は得られなくなってしまう。

2008年のリーマンショック以降、通貨安競争が再燃した。まずはアメリカが金融緩和を行いドル安を誘導した。アメリカのドルは近隣諸国に流れ込み新興国の通貨が値上がりしたので、G20諸国はアメリカを非難した。最近では中国が元を切り下げ、アメリカにはこれを非難する人がいる。

TPPは域内から見れば自由貿易に資する取り組みなのだが、域外から見ればブロック経済圏だと見なすこともできる。つまり、自由貿易の確保と域外の囲い込みは表裏一体の関係にある。

同じ事が、現在の安保法制案にも言える。確かに、日米の軍事同盟は域内の平和と安全保障を目指す取り組みなのだが、これは域外の国への囲い込みを通じて戦争を誘発する危険性を持っている。その意味では、安全法制という呼称も戦争法案というラベルも実は同じコインの裏表のようなもので、どちらが間違いとは言えない。

通貨安競争、他国を排除する経済圏の設立、そして軍事同盟の強化など、現在の状況が1930年代に似ていると考える人も多い。

TPPについて考える前に「世界経済」についておさらいしてみてはいかがですか?

TPPについて考えるべきポイントはいくつかある。実際には農業も大きなファクターなのだが、今回は除外した。農産物のだぶつきにより価格が低迷し、その後の飢饉で農家が壊滅的な打撃を受けるということがなんどか起こっている。

  • ヨーロッパの戦争と戦間の平和な時期が景気の循環を作っている。それを次第にアメリカ合衆国が引き継いだ。戦争は次第に大きくなり、最終的に世界大戦に拡大した。戦争は破壊をもたらし、その後の需用を喚起する。しかし行き過ぎた需要喚起は在庫のだぶつきを招く。ただし、内戦や恒常的に続く戦争は需要喚起には役立たず、単に経済を悪化させる。
  • 戦後の安定期に蓄積された富が投資先を失い、一つの分野に殺到するとバブルが起きる。これが破裂すると金融システムが不安定化する。しかしその影響は、先進国と新興国で全く異なっている。
  • 経済に自信がある国は自由貿易を指向する。場合によっては周辺国を恫喝したりして、自由貿易に引き入れる事がある。しかし、それはやがて「周辺の」後発諸国から反発を受け、ブロック経済化をもたらす。
  • 理念と現実の間にはタイムラグがある。ときに深刻な状態をもたらす。
  • 100x100アメリカは過去の記憶から自由貿易に自信を持っているようだが、実際には赤字が累積している。逆に日本は過去に製品貿易では黒字を出している。つまり、自由貿易が拡大するとこの不均衡も再拡大する可能性がある。これはアメリカには不利だ。日本人の貯蓄がアメリカに吸い取られるのではないかという懸念もあるが、貯蓄の所有権が変わる訳ではないので、却って貸し手である日本への依存度が高まることが予想される。また過去の実績としては2000年の大規模小売店舗立地法(新大店法)がある。アメリカの圧力によるものとされており、実際に外資系小売りが市場参入したが選り好みが激しく、高い(ときには過剰な)サービスを期待する日本人の消費者は外資系小売りを受け入れなかった。だから、アメリカがどうして自由貿易を推進したがるのか良くわからない。例えば、アメリカは公共事業や政府調達から外国製品を排除しようとしている(バイ・アメリカ法)のような保護主義的な動きもある。つまり、アメリカには保護主義と自由主義の2つの流れが存在する。自由貿易主義が行き詰れば、選挙による政権交代が起こるだろう。

イギリスが自由貿易を指向 – 非公式帝国を作り上げる

フランス革命の後、ナポレオンが出現し、ヨーロッパは全面戦争に入った。戦費出費で疲弊したイギリスのポンドが暴落する。ポンドの暴落を防ぐ為に1816年にイギリスは金本位制に移行した。しばらくイギリスの銀行は混乱するが、ロバート・ピール内閣のもとで銀行法が成立し、イングランド銀行が中央銀行となった結果安定する。

ナポレオン戦争後、ウィーン体制の元でヨーロッパは安定する。長期的に見ると民族主義や自由主義運動を押さえきることはできなかったが、それでもフランス革命以前の安定した状態が戻ってきた。

イギリスはビクトリア女王の時代に入り、イギリスは自由貿易主義を採用した。主要な輸出品目は綿織物や鉄鋼などだった。各地の関税を引き下げて、軍事力を背景に港を確保した。当初、イギリスは中国に対して貿易赤字を抱えていたが、アヘンを売り込む事で貿易不均衡を解消する。その後「麻薬を売り込むな」と主張した清に対して戦争を仕掛け、逆に中国の一部に権益を確保した。1838年にトルコ=イギリス通商条約が結ばれ、既に弱体化していたトルコの市場がイギリスに解放される。このような「自由貿易」の結果イギリスは繁栄し、中間層や富裕層が生まれる。

好景気を背景にして、農業が好調となり工業生産も急増した。また、ヨーロッパ各地では人口が増え始めた。ロイターのこの記事ではこれを第一次グローバリゼーションと呼んでいるようだ。つまり現代のグローバル化は第二次だ。

約50年で経済が過熱し、その後で大不況に

しかし、好調は長くは続かなかった。1848年にヨーロッパ各地で革命が起こる。19世紀の後半になると供給が過剰になり、農産物や工業製品の価格が値崩れして大不況が起こる。不況のあおりで資金需用が低迷し、英国債の利回りが低下する。イギリスからの借り入れに依存するようになっていたオスマントルコはこの時に財政破綻した。余剰資金は海外に流れ出した。例えば、新興国のアルゼンチンは好景気に湧いた。

自由貿易は徐々にブロック経済化に向かい、アジアやアフリカに各国の経済圏が作られるようになった。日本はこのころ開国した。ドイツは統一に向かうが植民地獲得戦争には乗り遅れた。結局、ドイツ、オーストリア・ハンガリー、トルコは第一次世界大戦を起こして、西のイギリス、フランス、東のロシア帝国と対抗することになる。第一次世界大戦は1914年に始まって1919年に終った。

第一次世界大戦・アメリカの好景気・大恐慌

20世紀の初頭にはアメリカで好景気が起きていた。アルゼンチンは引き続き好調で、アメリカ合衆国も順調だった。第一次世界大戦向けの輸出が好調であり、重工業への投資も順調だった。株式市場も過熱した。第一次世界大戦後はヨーロッパの工場が破壊されたせいで、アメリカ合衆国の比較優位は拡大する。

実際には在庫が積み上がっていたにも関わらず、投資は過熱しつづけた。結局、1929年に株価が暴落した。これが大恐慌だ。各国に影響があったが、当時世界第五位の富裕国だったアルゼンチン経済はここで破綻した。モノカルチャと呼ばれる極度の農業依存であり補完産業がなかった。また資金供給を外国に依存していたことも崩壊を招いた原因だった。

金本位制から離脱する国が増え、ブロック経済化が進んだ。戦後補償で追い込まれたドイツは、大恐慌が最後の一押しとなり、憲法が停止されて狂人が国を支配することになった。麻生太郎さんが「真似をしてみては」と言っているのがこの時の状況だ。日本は中国大陸に遅れて進出したが、経済的な包囲網を敷かれて追い込まれた結果、第二次世界大戦に突入した。

第二次世界大戦・戦後体制・アメリカの貿易不均衡

結局、第二次世界大戦で日本は敗戦したが、その後海外からの資金調達を受けて復興して再建を果たした。各国の海外植民地は独立を果たし、ブロック経済は自然消滅した。ドイツと日本は経済が好調になり、投機が殺到する。両国はドルを買い支えて暴落を防ごうとしたが、支えきれなくなる。またアメリカでは1970年に不況が始まり、歳出が増大した。財政支出の増大が予想されることから、アメリカは1971年に金本位体制を停止した。これをニクソンショックと呼ぶ。しかし、その後もアメリカの財政赤字は増え続けた。一方、日本では外資によるバブルは起こらなかったが、国内の資金の行き場が土地などの資産に向い大幅なバブルを引き起こした。1980年代半ばから1991年まで続いた。これが弾けて以降、失われた20年と呼ばれるようになる。

共産圏の自由経済圏復帰と新興国経済

一方、ソ連が1991年に崩壊し、自由主義経済ブロックに復帰した。中国も「改革開放路線」で国内市場を開放したために急激な成長が起きた。まず1980年に特区が作られ、次第に拡大した。インド経済も徐々に市場開放を進めており、最近では「総合小売りが解放される」ことがニュースになったばかりだ。このような経済を「新興国経済」と呼んでいる。ブラジルも資金が少ない新興国だが、1993年に2500%のインフレを記録した後、高度成長に転換した。これらの国をまとめてBRICSと呼んでいる。

これまでの流れを概観すると、日本、アメリカ、ヨーロッパの金融市場不調よりも、新興国由来の金融パニックの方が「時代の区切り線」にはふさわしい。しかし、今のところその兆候はない。

TPPについて考える

2011.11.03: かなり反響があったので、すこしだけ書き直しました。
試しに、Googleで「TPP Obama」と入力してみると良くわかる。20ページ目まで見たが、英語のエントリーは1つもなかった。多分、米国ではあまり話題になっていないのではないだろうか。(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreementで検索するとニュージーランドとオーストラリアのページがいくつか検索できた)ということで、この話「アメリカとの貿易協定」と考えるなら、結論は簡単だ。「やめた方がいい」
議論を聞いていると、識者たちのアタマの中がわかっておもしろい。重要なのはほとんどの人が相手の言い分を全く聞いていないということだ。例えば、前提になる自由貿易のメリットすら理解されていないようだ。
「関税をかけずに貿易したほうがいい」という考え方の基礎にあるのは「得意なものは得意な人が作ろう」という前提だ。これを比較優位と呼ぶ。比較優位が依然有効かについては議論がある。資本流動が簡単に国境を越えるのに、人材はそれほど国際流動せず、財政は国ごとにバランスさせなければならない。だから、こうした比較優位が未だに成り立つかどうかという議論もある。しかし、たいていの議論は、単純な比較優位の原理さえ理解していないようだ。
例えば、米にかかる700%の関税の対価を支払っているのは日本人だ。つまり、日本人は高い米を買わされている。米の市場が解放されれば、確かに日本人にとっては「いい事」なのだ。このように自由貿易理論は経済学を学ぶ上で常識のように扱われている。故に経済を学んだ人は、域内の貿易を自由にすれば産業が活性化するだろうという前提を自明のことと考えて、TPPについて議論する。
しかし、これは枠組みの問題だ。域外に対しては排他協定になり得る。よく言われるのが中国やEUとの関係だ。フレームを「日本」にすると自由貿易になるのだが、もう少し引いてみると「保護主義」に映る。この事を指摘している人は少なからずいる。フレームを変化させると、推進者たちの議論がすべてオセロゲームのようにひっくり返る。なぜならTPPは域外に対して保護主義的だからだ。
しかし、それよりもおもしろいのは、議論を通じて、日本人のアメリカに対する屈折した思いが透けて見える点だ。まず第一に、アメリカはもう時代遅れの国だとみなされているらしい。アメリカは、イラクやアフガニスタンの経営に失敗し、イスラエルを暴走させ(国際社会はアメリカのイスラエルに対する態度を承認しているとはいえないようだ。最近、パレスティナがユネスコに加盟した。一歩間違えば国際的に孤立するのは実はアメリカの方かもしれない)、北アフリカでこっそり支援していた国々では革命が起こった。アメリカ国内では失業率が上昇、足元ではデモまで起こっている。「TPPのおかげで、日本がアメリカ市場に参入できる」と読み取る事も可能なのだが、誰もアメリカ市場には期待していないらしい。
それよりも深刻なのは、アメリカは不平等条約を押し付ける国と見なされていることだろう。アメリカが誘ってくる「deal(取引)」には必ずやアメリカが一方的に優位になる条件が盛り込まれていると信じられているようだ。韓国と結んだ協定が「不平等だ」と話題になっている。韓国国会では野党が大反対して国会が荒れているのだが、日本では大きく報道されなかった。TPPとは関係ないが、Amazonが出版者に送りつけたとされる契約書が話題になっている。東洋圏は「体面」と「関係性」を大切にする文化圏だ。だから、こうしたやり方は、少なくともアジア圏では嫌われる。このように、アメリカは中東圏だけではなくアジアとも文化摩擦を起こしている。
この協定をアメリカ側の立場から見ると次のようになる。最近失敗続きのアメリカの行政府が、起死回生を狙って既存の自由貿易協定に目をつけた。しかし空気を読まない(ある意味それだけ必死といえるのだが)強引な手法と、これまでの強気の姿勢が祟って、日本側から警戒されているということだ。これほど不信感が高まっている相手との協約を、国論を二分してまで議論する必要はないのではないか。
さて、このTPPを推進している新浪さんという人がおもしろいことを言っていた。曰く「普段、お客様と接している立場から、日本人は高くてもおいしい日本の米を買い続けるだろう」とのことだ。たしかに、日本の消費者の中にはこういう人たちもいるだろう。緊急輸入したタイ米が大量に余ったのは記憶に新しい。しかし、例えば牛丼のように味付けを濃くしてご飯を大量に食べるというタイプの商品はどうだろうか。独身のサラリーマンのように、コメの品質や産地にはあまりこだわらないという人はたくさんいる。新浪さんは、一般のサラリーマンのように、290円弁当を食べたり、牛丼屋さんには行かないのかもしれない。
この方、商社経由でサービス産業の社長になった方なのだが、多分市場開放の打撃が最も大きいのは、農業ではなくサービス産業だろう。生産効率があまりよくないのだ。
さて、ここまで書いて来ておもしろいニュースを読んだ。そもそもアメリカが言い出したことではなく、菅直人さんが「僕もTPPに参加したい」と言ったのだという毎日新聞のニュースだ。「対米従属」いう疑念の裏側には、戦後長い間、失敗した政策、性急な改革などを、すべて「アメリカの圧力だ」と説明してきた政府の態度もあるのかもしれない。推進論者が自明の事として、市場開放=善としているのと同じように、アメリカのイニシアティブ=悪と考えた人も多かったのではないだろうか。
菅直人さんがどうして参加したいと思ったのかはまったくわからない。情報の空白は「アメリカに利益供与することで…」という憶測で埋められるようだ。なぜ、アメリカに利益供与しないと日本の首相になれないのか、合理的な説明が求められる。
さて、これを当事国の立場から見てみよう。もはや本当のところが何なのかさっぱりわからないのだが、オーストラリアなど「本当に参加したかった」国は、落ち目のアメリカに議論をかき回された上に、ただでさえ議論が鈍いので有名な日本が参加するかしないかで結論を先延ばしにさせられていることになる。一方、オーストラリアがアメリカと結んで日本市場を狙っているという憶測もある。
秘密協議なので、こうした国々の不満は表面化しないわけだが、これ以上外国に嫌われないうちに、こうしたドタバタはやめた方がいい。「人様に迷惑をかけない」のも東洋的な美徳だ。