空っぽだからこそ支持される「小泉進次郎」という現象

小泉進次郎さんが新しい環境大臣になった。空っぽな人だなあと思った。その空っぽさゆえに支持されるのだろうとも思った。「小泉進次郎」という現象を見ていると我々日本人が政治に何を期待しているのかということがわかる。小泉さんが一生この現象に付き合って行けるかという点は問題だが、それは本人が解決すればいいことだ。




小泉さんは結婚発表を官邸で行った。この際に育休について聞かれ「考えている」といった。ところが大臣になってしまえば育休は取れそうにないですねと問われると「育休が問題になるというのは記者たちが古くさすぎるからだ」と言いだした。嫌な感じは全くしなかった。条件として「奥さんの心理的負担を減らす」と付け加えたからである。

視聴者の頭の中には「奥さん思いのいい男」という印象だけが残ったことだろう。よく考えると育休の話は全く解決していない。つまり、小泉さんは問題を解決せず本人を感じよく見せることを優先したのだ。逆に問題を解決しようとすれば議論が起こる。政治に問題解決を期待しない日本人にとって、議論は単なる嫌な揉め事に過ぎない。誰も政治家に問題解決は期待していない。だから小泉さんの人気はまた上がった。

原発の排水問題についても同じ手法が取られた。排水の問題は担当ではないと言い切った上で「小名浜の魚連会長」の実名を出した。小泉さんは小名浜の魚連会長の名前も知っているのか!という驚きが感じられるが、実は問題は何も解決していない。そして大臣就任の時に原発依存しなくていい国の仕組みを考えるとも言ったが、考えるだけで問題を解決すると言っていない。そして実際に問題が起きている千葉ではなく福島に向かった。

小泉さんは人の話をよく聞くし彼らが欲しい答えを返してくれる。つまり話を聞いている人には「ああ、小泉さんは我々のことをわかってくれているんだなあ」という印象は残る。しかし、その一方で実は何も解決はしていない。よく考えてみると10年の間に小泉さんが「これを解決した」というよく知られている課題は何もないはずだ。

問題を解決しないが話も聞かない人もいる。その代表が安倍首相である。北朝鮮拉致問題でスターになった安倍首相には官僚組織を率いて問題解決をした経験がない。安倍首相は自分が見下している人の話は聞かないので一部の人たちから蛇蝎のように嫌われるのだが、根っこは同じである。単に見せ方を変えて敵を作らないだけで印象がこうも変わってしまうのである。

小泉さんの人気は高い。何も解決しないことは失敗にならない。だが、問題に取り組んで軋轢が起こればそれはすぐさま失敗になる。何も取り組まないことで「失敗していない感じのいい人だ」という印象が残る。日本は失敗した人を叩く社会であり、失敗しない感じのいい人が高い得点を得られることになっている。小泉さんは人気が高かった小泉純一郎首相の息子であり、兄が俳優になれるほどのイケメンで、まだ何も失敗していないというだけで好感度があがる。日本人はそれを喜んで支援するのである。

新聞は「成果をあげれば」といっているがこれは建前を自動的にタイプしただけのことだろう。指が勝手に動いて書いてしまったのだ。実は何もしないで情報発信だけしていた方が小泉さんが首相になれる可能性は高まると思う。単に日本は古くさいねといっているだけでいいのだし社会はそれを望んでいる。

次の首相にふさわしい人物について、日経新聞が2日に報じた世論調査では、小泉氏が29%でトップ。2位は安倍首相、3位が石破茂元幹事長だった。菅義偉官房長官は先月、小泉氏の入閣について会見で問われた際、党の農林部会長や厚生労働部会長として「経験を積んでいる」と評価。「今後の活躍を期待している」と語っていた。

小泉進次郎環境相、38歳で初入閣-「ポスト安倍」試される手腕

実は小池百合子元環境大臣も同じような感じで首相候補と見なされ、実際に総裁選に出たりした。彼女も「感じがよく男性社会に挑戦してくれそうな」ところが良かった。組織の調整などをした経験はなく、したがって実際に組織やプロジェクトを持ったところで失速した。日本だけの問題ではなく「ピーターの法則(ダイヤモンド出版)」として知られる。

希望の党という政党で大混乱したが小池さんの人気がなくなることはなかった。一度感じが良いという印象が着くとそれが残像のように残る。政治家本人が問題解決志向にならずお人形さんとしてとどまる限りそれで構わない。職業としての政治家を選んだ以上ファッションモデルのように周囲が着せ付ける政策を選んできれいに見せていればいいのだ。それが日本人が求めるプロの政治家なのである。

西洋型の民主主義では「どんなビジョンを持って何をやったか」が重要視される。例えば韓国では検察改革というビジョンがありそれが軋轢を生んでいる。またイギリスの政治家たちは周囲に混乱をもたらすことがわかっていてもブレグジットを前に進めようとしている。ボリス・ジョンソン首相はついに「女王に嘘をついたのでは?」と疑われるようになってしまった。問題解決こそが政治でありそのためには嘘もやむをえないとジョンソン首相は思っているのだろう。

ところが日本人は「何もしないし何も決断しない」リーダーを求めるという傾向がある。その意味では日本人は政治に期待をしていない。坂本明也関西大学法学部教授が日本人は助け合いも政治も嫌いだということを調査や論文を元に解説している記事が見つかった。坂本さんは次のように結んでいるが、おそらく日本人が自発的にそんな議論を始めることはないだろう。

筆者としては、日本人の(低投票率に限られない)「政治嫌い」と「共助嫌い」の現状、その改善の必要性の有無、また改善するとすれば何が求められるのか、について深く生徒らに考えさせる機会をぜひ設けてほしい、と願っている。

日本人は、実は「助け合い」が嫌いだった…国際比較で見る驚きの事実

日本人は助け合いができず問題が起これば自己責任に押しつぶされてしまうから身動きが取れなくなる。また、政治家はどこかのレベルで何らかの組織を率いなければならなくなる。

しかし、それでも日本人は何かの組織を率いて失敗した人を「汚れた」として嫌う。こうやって日本人はだんだん身動きが取れなくなり、国が開いている以上は最終的に「思い切った行動」に出て失敗するだろう。それは最終的には悲劇かもしれないが、それを求めているのもまた日本の有権者なのだ。