半島国デンマークは本当に半島なのか

Quoraで半島国家についての質問があった。韓国や朝鮮を揶揄するものなのだと思うのだが、面白そうなので答えてみた。




インド、アラブ、イタリア、スペイン、朝鮮などたいていの半島は山脈や砂漠で大陸と切り離されて独自世界を形成している。しかし実際には完全に切り離されているわけではなく時々外国に攻められたりする。朝鮮半島はその典型で中国・モンゴル・女真族などに支配されたが完全に支配されることもなく、結果的に朝鮮人という人たちの塊ができた。

ところが半島にも例外がある。それがユトランド半島とスカンジナビア半島である。ドイツとの間に山脈がないのだ。今の人口規模からみると「なぜドイツに支配されなかったのだろう」と思ってしまう。ところが調べてみるとこれは誤認だった。さらに調べてみるとそもそもドイツ人という塊がないということもわかった。あのあたりは意外と複雑なのだ。

歴史的経緯を調べてみると実は北のほうから大陸に侵攻があったことがわかる。ゲルマン人には北と西という区別がある。理由は諸説あって定まらないそうだが海から大陸をめがけて北方ゲルマン人が降りてきた。彼らはデーン人と呼ばれる。その侵攻が終わったのがデンマークのあるユトランド半島なのである。そしてユトランド半島を追われた西系の人たちが作った国がイングランドだ。玉突き的に周辺に拡大し他民族を征服するということが各地で起きている。

シュレスヴィヒ・ホルスタインからオランダにかけてフリースランドという地域がある。ここにフリジア諸語という英語に近い言葉が残っているという。英語はユトランド半島にいたジュート人・アングロ人・サクソン人がブリテン島で作り出した言葉なので、あのあたりがもともと同じような言葉を話す人たちの世界だったことがわかる。地域はのちにフランス人に支配されラテン語化が進んだ今の英語になった。

ゲルマン語という言葉はもともと意思疎通が可能な言語だったようだが、地域に広がる過程で三方言に別れ、そのうち北(デンマーク・スウェーデン・ノルウェー・アイスランドなど)と英語・ドイツ諸語・フリジア語などの西方言が生き残ったということのようだ。北ゲルマン語は今でもお互いに近しい関係にあるが、西ゲルマン語も共通の祖語があったのではないかという説があるそうである。

ゲルマン語は英語とフリジア語が一つの塊を作るのだが、それと並列して低地ドイツ語と中高地ドイツ語という系統があるという。説によって違いはあるようだが、全部で三系統の西ゲルマン語があるというのだ。英語とドイツ語が違う言語であるというのと同じように、低地ドイツ人と高地ドイツ人の言語は通じ合わないという話もある。

だが、ドイツは国民国家を形成する過程で「高地ドイツ語」を標準語にした。このため低地ドイツ語は単なる方言扱いされており言語としては認められてこなかったという。しかし近年では見直しが始まり低地ドイツ語を言語として認めようという動きが出てきているそうだ。

北ドイツのデンマーク語というエッセイにはその複雑さが書かれている。ユトランド半島の付け根にあるシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州にはそれぞれのマイノリティ言語が残っているそうだ。ここでも低地ドイツ語はドイツ語とは別言語として扱われている。

言語事情が特に複雑なのはドイツの最北シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州で、フリースラント語(ドイツ語でFriesisch、フリースラント語でFriisk)、低地ドイツ語(ドイツ語でNiederdeutsch、低地ドイツ語でPlattdüütsch)、デンマーク語(ドイツ語でDänisch、デンマーク語でDansk)、そしてもちろんドイツ語が正規言語……

132.北ドイツのデンマーク語

朝鮮半島は行き止まりになっており南方の島から来た人たちと北方から来た人たちが混じり合って朝鮮人という民族を形成していったのだろう。韓国には三韓に由来するであろう全羅道・慶尚道方言が残っているが独自言語・独自民族であるというアイデンティティはもうない。

一方でユトランド半島は回廊になっておりスカンジナビアから大陸への通路になっている。また海に着目すれば北海とバルト海の間の回廊でもある。このため複雑な言語と民族が残っている。だからデンマークは厳密には半島とは呼べないのだ。