日本とイギリスで左派政党が消滅しつつあるという話

本日の議題は左派政党の消滅である。イギリスで事前予想と全く違った選挙結果が出た。当初、労働党の躍進が予想されていたのだが蓋を開けてみると「歴史的大敗」だったそうだ。イギリスはブレグジットに向けて大きく動き出したが、同時に地方のUK離脱という火種を抱えることになる。つまり決めることでバラバラになってしまう可能性が高い。




ブレグジットの流れについては一度調べたことがある。もともとはEUに対して不満を持つ層を誰が取り込むのかというところから政争が始まっている。つまりイギリスはEUに入った時から「ヨーロッパに物事を決められたくない」という人たちが一定数いたのだ。それが大きくなり今回の離脱騒ぎにつながっている。

一方で労働党政権はスコットランドの独自性を追求する人たちを取り込もうとしていたようだ。トニー・ブレアはスコットランド出身(もともとアングリカンチャーチだったが首相退任後カトリックに改宗したそうである)でありスコットランドの自治を拡大した。結果的にスコットランド人の独自政党ができて労働党の党勢が失われた。つまりスコットランド人もイングランド人に物事を決められたくないという反発心があり、それをより明確に打ち出しているところに乗り換えたことになる。

イギリス労働党はもともと社会主義的なリベラル政党だそうだが、リベラル政党は長い歴史の間に「貴族化してしまう」傾向があるようである。結局は現状打破を目指すもっと過激な政党が出てくる。労働党はイギリスという枠組みの中でスコットランドの融和を目指していたわけだが、スコットランド国民党(民族党)はもっと過激な主張をしているようだ。期せずしてみんなが「自分たちで物事を決めたい」と思っている。ただ入れ子構造の連合王国ではその矛先が違うのだ。

今回労働党が歴史的大敗をする裏には「現状に対する鬱積」があるのかもしれない。保守党は過激にEUからの自立を目指していて、イギリスからスコットランドの自立を目指すスコットランド国民党もある。結果的に労働党がリベラルなのに一番穏健であり従って見捨てられたことになってしまう。NHKによると労働党はブレグジットに対する意思表明をせず社会主義路線を強調して負けたそうだ。おそらく党内で意見統一ができなかったのかもしれない。この「重要なことが決められない」というのが日本のリベラル政党と共通している。

そんなことを考えていたら、日本でも同じような動きが起きているらしいことがわかった。社民党が消えてしまいそうである。もともと社会党は自民党に反発する人たちの受け皿だった。しかし社会党が政権に入り現実に妥協して自衛隊を容認したことをきっかけにして凋落が始まる。この時に外に出た人たちが民主党(現在の立憲民主党・国民民主党)に大勢いる。つまり、政権への関わりをなくして政権批判を続けたわけである。これがどんどんエスカレートして行き政権奪還につながる。ところが、その民主党も政権についてしまいそれが凋落の原因になった。だから民主党は立憲民主党と国民民主党という二つの政党に分離した。どちらも「まだ」政権は取っていない。この流れは一貫して「政権に関与せずに批判だけしていたい」という人たちの受け皿になっているのである。

出て行かれた人たちが出て行った人たちに頭をさげるということであるが、当然地方は反発するものと思われる。記事の中で「護憲を守るのか」という質問が出ていたが立憲民主党は正確には護憲政党ではないので護憲の旗を下すことになるのだろう。しかし、その一方で大分県や沖縄県のように社民党が強い地域があり根強い反発も予想される。そもそも立憲民主党には社会党から流れた人たちの一派が残っているそうだ。彼らは当然護憲を主張しつづけるだろうが、却って新流入組と対立するかもしれない。

このことからわかるのはおそらく社民党や立憲民主党の支持者を支えているのは護憲運動ではないということだ。おそらく現在の体制への反抗心が立脚点になっているのだろう。体制に反対したい人たちが野党を支持するが政権を取り現実を知るとそこから離脱してしまうということを繰り返しているのである。

面白いことに自民党はもともと政権を取るために作られた政党なので「イデオロギー」が消えて現実対応だけが立脚点になっている。社会党民主党はそれが逆転している。つまり、日本では政治思想と政治統治は一致しないのである。

このように二つの国のリベラル政権について見てきたのだが見過ごせない大きな違いがあるように感じられた。イギリス人は独自性を重んじていて誰かに縛られることをとても嫌っている。そこで束縛を脱するために実際に動いてくれる政党を望んでいる。労働党はおそらくそれについてこれなかった。一方で日本人は現在の体制への反抗心が大きなドライバーになっていて「決めさせない・やらせない」ことが重要である。ところがそれが行き過ぎて決める側になると動揺が起こり政党が分裂する。つまり、イギリスが決めたがるのに対して日本は決めるのを嫌がるのである。