武漢コロナウイルス騒ぎで我々はどこに逃げればいいのか

コロナウイルスでついにWTOが緊急事態宣言を出した。これにより日本政府もようやく本腰を入れて対策を打つだろうと思っていたのだが、事態は意外な方向に着地した。「日本でアウトブレイクすれば安倍政権を揺るがす事態になるだろう」「おそらくオリンピックどころではなくなるはずだ」という不安を安倍政権は我々では考えつかないやり方で解消したと思う。安倍政権が安定する秘密がわかったような気がした。




まずは事実関係から押さえておきたい。AFPによるとWHOが緊急事態を宣言した。だが宣言の内容を見ればわかるように中国に対してかなり配慮した内容になっている。渡航制限などすべきではないと言っている。経済に影響が出て加盟国から非難されることを恐れているのかもしれないし、アメリカが国際機関から手を引く中で新しいスポンサー候補である中国を怒らせたくないのかもしれない。中国から緊急事態を宣言しないようにという働きかけがあったというような未確認の情報も見た。

WHO緊急事態を宣言

そんななか噂や偽情報も飛び交っている。「生物兵器陰謀説」なども出回っているそうだ。Twitterでも結構有名な識者の人が「生物兵器説」を流していたが、検索するとタブロイド紙のネタだった。WTOや中国政府のやり方で大丈夫なのかという不安は広がっていたようだ。中国政府への不信感が様々な噂を生んでいる。

そんななか、日本では右寄りのメディアが危機を煽り始めたようだ。いわゆる「保守」と呼ばれる人たちはリスク回避成功が強い(平たく言えば怯えやすい)人たちなので「あの中国から」日本にウイルスが入ってくるかもしれないというような可能性に強く反応してしまったのだろう。彼らが潜在的に持っているのは中国に対する怯えなのだ。

日本人はこれが緊急事態だと思っているから恐れているわけではない。日経新聞によると実際にエボラ出血熱でも緊急事態宣言は出ているが、この時は騒ぎにならなかった。おそらく日本人は「アフリカのことなんか自分たちに関係ない」と思っている。2019年12月現在でコンゴでは2200人以上がなくなっておりさらにイスラム過激派も台頭している。実は状況としてはアフリカの方がひどいことになっていた。だが、日本人は気にしない。日本人はアフリカには怯えていないからである。

エボラ出血熱

逆にこれまでも保守を中心に中国に飲み込まれるかもしれないという過剰な心配があったのだろう。日本人が持っている心象地図は現実とは大きくかけ離れている。安倍首相は今回の国会答弁で何回か「台湾」という言葉にも大きく反応している。おそらくは敵味方の図式がてきていて離席的ではない意思決定をしているのだろう。

保守を自称する人たちはそのまま安倍政権の支持者たちだ。つまり、結果的にコロナウイルスの日本への侵入を許してしまえばそれはおそらく安倍政権の不信任につながるだろう。前回政権に対す不信任が起きたのは「年金制度が持続しないかもしれない」という可能性があったからだ。面白いことに最初の不安には強く反応するのだがそのまま慣れてしまう。今でも年金の持続性には問題があるのが継続的な不安には反応しない。

ところが今回の件は「新しい問題」でありなおかついまのところは封じ込めに失敗している。無症状の保菌者が見つかったところから知らず知らずのうちに国内で菌をばらまいている人が大勢いると思ったほうがいい。つまり、普通の生活をしていたら逃げ場はないということだ。感染者が出たというニュースが報道されるなかWHOは「中国渡航禁止などの措置は取るべきではない」と言っている。中国の習近平国家主席の来日を控えたいま中国への渡航禁止のような強い対応は取りにくいだろう。

ここで安倍政権は奇策を繰り出した。湖北省滞在の外国人(つまり中国人のことだ)の入国を拒否するという。これは合理的に考えると無意味である。すでに団体旅行は中止され、武漢も封鎖状態にあるようだ。つまり実質的に入ってくる人などいるはずがない。さらにウイルスを持った人はすでに国内にもいるのだから封じ込めても意味がない。しかし普通の人は合理的には考えないので「出元を押さえたからもう大丈夫」と考えてあとはマスクをつけていれば平気だろうくらいに思うだろう。

湖北省入国拒否

安倍首相が長い間人気がある理由がわかった気がする。安倍首相もおそらく合理的な思考が苦手なのだろうが、これが国民の合理的でない情報処理にうまく合致している。我々は合理的すぎて安倍政権が代表する合理性を欠いた人たちについて行けていないのである。安倍首相は衆愚政治の結果ではなくではなく愚衆の王様なのかもしれない。

さらに、このニュースを聞いた支持者たちは「湖北省からの人たちは逃げ場がなくて可哀想だなあ」とメシウマ感情を持つのではないだろうか。実質的な効果は何もないが、これも実によくできている。

安倍政権を信任している日本人は「自分だけは注意深くしていれば逃げられる」と思っているのだろうということがよくわかる。その対策とはお金を使わないようにしたり、今回の場合はマスクをつけることだったりする。こうして社会の関心から目をそらし個人の殻に閉じこもってしまうと社会全体としてはどんどん停滞してゆく。だが、自分だけ逃げらればいい」と考える人たちにはおそらくどうでもいいことなのだろう。

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