NHKがひた隠しにすること – 2020東京オリンピックはもう無理だ

アメリカ合衆国が今後の指針を発表したとNHKが書いているのだが大切なことが書いていない。NHKは安倍政権に忖度して大切なことを隠蔽しているのではないか。




「NHKは政府の情報隠蔽に加担している」という記事を書いてみたかった。が、実際にTwitterなどからダイレクトに情報が入ってくるので「ひた隠し」というのは大げさである。最初は英語記事だけが流れてきたのだがついには日本のネットメディアが伝え、さらにテレビも勝手に観測を流し始めた。ただ「NHKだけを見ている人」というのが本当にいるとしたらおそらく彼らだけはこうしたニュースに気がつけないままであろう。

まずNHKが書いた文章を見てみよう。

トランプ大統領は「今後数週間の行動によって、すぐに曲がり角を迎えることができる」と述べ、国民に協力を求めました。

米 10人以上の集会・旅行など避けて 今後15日間の指針発表

これだけを読むとあたかも数週間でアメリカのコロナ対策が終わるように見える。しかし同じニュースをABC Newsは次のように伝えている。「トランプはいう。コロナウイルスと戦うガイドラインは7月か8月まで続くかもしれない。if no longer

If no longerという言葉に希望を持つ人もいるかもしれないのだが、専門家の発言を受けて「We’ll see what happens,” Pres. Trump replies. “They think August, could be July, could be longer than that.」と説明しているそうだ。つまりよくわからないわけで、they(専門家)は8月か7月でもしかしたらもっと長くなるかもしれないと言っている。つまりif no longerとは「長引かなければ」というニュアンスなのである。実際に発言したところを聞いたが、theyはthe peopleだった。つまり一般名詞として「みんなそう言っている」と曖昧な言い方になっている。

イタリアを除くヨーロッパの進捗はアメリカ合衆国によく似ている。つまり流行が始まったばかりである。おそらくヨーロッパでも7月くらいまではなんらかの対策が必要な可能性がある。そして、アメリカはその点をちゃんと国民に説明している。アメリカ人は「とりあえず二週間」と言って納得するような国民ではないのだろう。

実はフランスのオリンピック委員も次のようなことを言い出した。

フランス・オリンピック委員会のマセリア会長は16日、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)が5月末までに終息しない限り、2020年東京五輪を予定通り7月に開催することはできないと述べた。

東京五輪の7月開催、5月中のコロナ終息必要=仏五輪委会長

欧米が選手団を送らない中でオリンピックを開きたいというならそれは可能かもしれないのだがおそらく現実的ではないだろう。つまり、もう2020年のオリンピックは詰んでいると言える。敗戦が決まっているのだ。

NHKが口を噤(つぐ)んでしまったのは安倍首相がまだオリンピックに対して前向きな発言をしているからだろう。政権では誰も「殿ご再考を」とは言えない。おそらくNHKは政府と組んで情報隠蔽に加担しているわけではないのではないかと思う。単に政府から怒られそうなことは言えないのだ。つまりNHKはビビっているのでNHKだけを見ていても本当のことはわからない。

「新型コロナウイルスは手ごわい相手だが、G7で一致結束し、戦っていけば必ず打ち勝つことができる。そういう認識で一致できた」と強調した。日本政府によると、各首脳から五輪開催時期についての具体的な言及はなかった。

新型コロナ治療薬の早期開発で連携 五輪「完全な形で実現」 G7首脳がテレビ会議

日本人は不安になりたくないので嫌なことは聞きたくない。だから安倍首相は最終決断になるようなことは言わずに希望的観測のみを伝え続ける。おそらく信じたい人はNHKだけを見て安心することになる。ところが、アメリカ合衆国は自分で決めたい文化なので「いいニュースもも悪いニュースも聞きたい」のである。だからアメリカの大統領は希望的観測だけでなくある程度の見通しも伝える。

安倍首相が率先して希望的観測を述べてしまったことで、忖度するメディアはそれ以上のことを言えなくなってしまった。おそらく国の組織もオリンピック組織委員会も「今夏開催できないならせめて1年か2年伸ばそう」ということが言えなくなる。電通出身の組織委員もアメリカのメディアに延長論を話しただけで森会長に叩かれてしまった。

だがTBSなどは「首相の真意はどこにあるのだろう」として総選挙のスケジュールと絡めて勝手に延期が「一年か二年か」などと流していた。そうこうしているうちに今度はCNNが「安倍首相が延期やキャンセルに抵抗」と暴露してしまった。安倍首相はG7の会談で一人オリンピックのスケジュール通り開催を主張して「抵抗する」と書かれてしまっている。これでは安倍首相だけが国際世論の空気を読めていないように見える。

On Monday’s G7 call, leaders also discussed the Tokyo Olympics scheduled for this summer. Abe has so far resisted delaying or canceling the games and told his fellow leaders his goal is to proceed as planned.

After nudge from Macron, Trump and other G7 leaders agree on coronavirus coordination

このままでは、日本はおそらく世界に非協力的な国と後ろ指を指されるだろうし、オリンピックも延期ではなく中止に追い込まれるだろう。リーダーが「これまでどおりにやる」という中では延期議論を先導できないからだ。こうして間違いを認めらなくなった日本は敗戦を迎える。これはいつもの負けパターンだ。

まあ、オリンピックの件はなるようにしかならないだろうし、これで安倍首相の評価が下がるということはないだろう。おそらく国民は「とりあえず色々ゴタゴタしているときに政権交代の混乱が生じるのは困る」と感じているはずである。ただ、この件を見ていて「NHKしか見ていない人」というのは人口のどれくらいいるのだろうかと思った。おそらく報道としては全く役に立っていないと思う。

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