日本は印象で騒ぎ、ドイツやアメリカは問題解決を目指す

今回も新型コロナウイルスについて書く。テーマは印象で騒ぐ国とエビデンスを求める国の違いである。その違いは歴然としていて、時に顕著な違いをもたらす。




新型コロナウイルスが東京で広がりを見せるなか、日本各地で緊急事態宣言を求める声が広がっている。東京都知事や大阪府知事だけでなく医師会も緊急事態宣言について言及し始めた。

ところがそれは簡単ではない。曖昧なことを言うと憶測が広がると思ったのか菅官房長官がどちらも否定した。このため官邸周辺では緊急事態宣言について説明することすらできなくなった。

実際には緊急事態宣言と都市封鎖(ロックダウン)は違うし、そもそも都道府県知事は都市封鎖を命じる権限はない。またロックダウンしたとしてもコロナウイルスが街から消えるわけではない。日本ではこのあたりが全てごっちゃになっている。つまり、すでにパニック状態に落ちって意思決定ができなくなっているのである。

きっかけは小池百合子東京都知事のコミュニケーション能力の過剰さかもしれない。外出自粛をしないと諸外国のようにロックダウンも止むなしとほのめかした。だが小池都知事にはそんな権限はないし緊急事態宣言が出ても都市封鎖はできない。その後「緊急事態宣言は国が決めることだし法律的にできないことがある」などと言い出している。

この発言は二つの違ったハレーションを起こした。ある人は、緊急事態宣言=ロックダウンだと勘違いし「今のうちに食料を買いだめしないと大変なのでは?」のようなことを考えた。今でも4月2日に急にロックダウンが起こるのではというような噂になっている。

どうやらこの噂を広めた人が官邸近くにいるらしい。毎日新聞はわざわざネットの噂と断った上で「西村大臣が否定している」とやった。Twitterでそんな噂は聞いたことがないので毎日新聞が広めていると言っても良い。ただしそのような話は出回っていたようだ。朝日系の論座には憶測記事が出ていた。官邸側で噂を立てた人とそれに乗って「はしゃぐ」人たちがいるのである。

別の人はロックダウンしないとコロナウイルスは退治できないと考え始めた。これも因果関係はない。日本は憲法制約でロックダウンできないと知って「ロックダウンしないとコロナ退治できないのではないか」と危惧する人もいるようだ。Quoraではそのような質問が複数見られる。こうして何も決められないのにどんどん噂が広がってゆく。かつて井戸端会議では「みんながそう言っている」と噂したが最近では「ネットで噂が出ている」という表現が使われる。

さらにPCR検査体制が広げられなかった理由の総括や反省をしていないので、検査=医療崩壊だというような認識も広がっているようである。

日本人は、今ある情報を所与(given)と捉え・それを教科書的に暗記し・他人に押し付けたがる。そして「私はこう思う」の代わりに「みんなが言っている」というのだ。極めてタチが悪い。

ところが海外の情報を見ると全く違った議論が始まっている。それが抗体検査である。「アフター・コロナ」を見据えているわけである。

ドイツは日本とは違い「今の状態で検査をしたら医療崩壊する」などとは考えず検査をしなければ医療崩壊しかねないと考えた。その問題をどうやったら解決できるか考えて短い時間の中で検査体制を整えたそうである。このためドイツは初期の封じ込めに成功している。

ドイツでは、新型コロナウイルス検査の実施数を増やし、現在では週に50万件実施していると、ウイルス学者が26日、明らかにした。検査の強化が、同国で新型ウイルスによる死者数が比較的少ない要因の一つという見方を示している。

ドイツ、新型ウイルス検査を強化 週に50万件

さらにドイツは次に進んでいる。抗体ができた人から現場復帰できるだろうといっているのである。これはフランクフルトの地方紙が書いている。これも医師の科学的知見に基づく。

ドイツ医師会会長が抗体を持つ人への接触解禁を提案。また、診療所は無料の集中治療病床の報告義務を負うことになるだろう。

まず、免疫力のある人たちが再び働けるようにすること (原文ドイツ語をDeepLで翻訳)

そのためには抗体ができた人を捕捉して感染させる力がないことを確認しなければならない。アメリカのメディアが複数書いている。

ニューヨーク市にあるマウント・サイナイ・アイカーン医科大学のフロリアン・クラマー教授(ワクチン学)は、「最終的には、こうした抗体検査が、誰がこの国を正常な状態に戻せるのかを突き止めるのに貢献するかもしれない」と語る。「いち早く通常の生活に戻り、すべてを再スタートさせられるのは、免疫を持った人だろう」

焦点:新型コロナの局面変えるか、抗体検査に希望の光

途中までしか読めない上にこの血清学的調査がどんなものなのかはわからないのだが、MIT Tech Reviewは経済活動再開の判断には科学的証拠(エビデンス)が必要であると考えているようだ。そのためには血清学的調査体制を確立すべきだと提案している。

検査を受けていない多くの人たちがすでに無症候性あるい軽度の新型コロナウイルス感染症にかかっているのではないかとする「パンデミック懐疑論者」が、少数ながら増えつつある。この説が正しければ、通常の社会生活を思ったよりも早く再開できることになるが、真偽を確かめるためには、より多くの人たちを検査する必要がある。

新型コロナ対策、今こそ「血清学的調査」が必要だ

つまりすでに流行が起こっているアメリカやドイツでは問題解決型で物事を先に進めようとしている。状況は困難だがこうやって前に進むしかない。おそらくこうしたシフトチェンジが数週間単位で次々に起こるのが新型コロナの状況だ。

日本が持っている現状分析では「患者の死」か「経済の死」という二者択一しか選べないい。おそらくこれは現在入手可能な情報や技術では所与(Given)だろう。それ以外のことは考えても仕方がないと考えるのが日本人だ。だから意思決定できない。どうやったら現状が変えられるかを考えないのである。

さらに現場のいうことを聞かないのでいつまでたってもアイディアが上に上がって行かない。おそらく日本人の中にもアメリカやドイツで働いている専門家はいるので、専門家の間ではこのような議論が始まっているはずである。

日本人は今ある情報をもとに結論に飛びつき、同時にその結論にとらわれる傾向があることがわかる。さらに自分が飛びついた結論に飛びつくだけでなく相手も縛りたがる。自己承認ができないので他者の同意を求め、同意が得られないと不機嫌になって相手を縛りたがる。相手を縛る前に自分のちっぽけなプライドに拘って問題解決のために他人が思考する時間を奪うことがどれだけ罪深い行為なのかを考えるべきだ。

このままでは日本は先にモニター体制を整えた国から「汚染国」扱いされることになる。東京オリンピック再開どころか海外出張すらできない国になるだろう。

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