野党は政権とNHKに代わり給付を待つ国民に直接説明すべきだ

持続化給付金の問題について取り上げてきたのだがついにパンドラの箱が開いた。持続化給付金だけでなく雇用調整助成金のオンライン申請も止まっているらしい。すぐに解決しなければならない問題だが野党の火のつけかたが下手くそなせいで本丸に辿り着けない可能性が高い。野党はまず速やかにシステムが遅れた原因について聞き取りを行った上で直接国民に説明すべきだ。安倍政権とNHKという組み合わせはもはや国民の利益を代表していないことは明白なので最悪YouTubeでも構わないのではないか。その上で、なぜ多くの人が「いつくるかもわからない中で不安な一ヶ月を過ごすことになったのか」をもう一度考えた方がいい。まず目の前にいる人を救うことを優先したほうがいいが、考えるべきことは他にもたくさんある。




まず問題をおさらいする。持続化給付金システムが5月1日にオープンした。サーバーが混乱しファイルの一部が壊れたようだが経産省はその詳細を説明していない。その中で実体のない団体が受注元になっていてほぼ全額が電通に委託されていたことがわかった。さらにその先にはパソナやトランス・コスモスのような企業も続いているようである。

実はこの組み合わせはスマホのスピードくじなどを作る場合と同じ組み合わせである。まず簡単な(とはいえメールデータという個人データは扱うしサーバーの負荷は当初急速に増える)システムを作る。さらに技術的な問い合わせと商品発送などの事務局も設置する。つまり、こういうサービスは作ろうと思えば電通でもできてしまう。だが堅牢度が全く異なる。官公庁システムのベンダーが慎重になるのは「間違えると会社が吹っ飛んでしまう」ということを知っているからである。

今回、持続化給付金と雇用調整助成金のシステムで不具合が起こっているのだが受けていたベンダー(雇用調整助成金は誰が作ったのかわかっていない)が適材適所だったかを調べる必要がある。そのためには直接ヒアリングをすればいい。問題の所在が説明できれば理解していることになる。説明できなければおそらくそのベンダーは二度と使わない方がいい。

ここから先は時間をかけてもいい問題である。それが今野党が追求している「中抜き」問題である。つまり野党は優先順位を間違えていると思う。

持続化給付金の受け付け団体の定款は直前に経済産業省の官僚によって書き換えがなされていたこともわかっている。変更した定款のPDFファイルに名前が残っていたそうでのちにそのファイルは差し替えられていた。おそらく経産省とこれらの企業が「一体となって」このスキームをつくってきたのだろう。

この問題の肝になっているのは「再委託」である。これを理解しないで「電通が中抜きしているのがずるい」とかパソナは竹中平蔵だから嫌いだなどと言っていても問題の核心にたどり着くことはできないだろう。

今回の問題の発端は、システムが壊れたようだが何が起きているかわからず電話しても要領をえないという指摘がなされたことだった。つまり責任の所在が明らかにならないわけである。

実はこうした問題はたびたび起きている。例えば再委託禁止で検索すると出てくるこの記事が書かれたのは2009年である。自民党政権末期の出来事である。住民基本台帳の情報が流出したが責任の所在を確定できなかったという事件だ。探せばもっと出てくるかもしれないのだが日本の産業構造の中に複雑な下請け構造があり「最終的に誰が責任を取るのかがわからない」ということが昔からあったことがわかる。

総務省が平成23年・平成24年についてまとめたレポートでも「再委託は競争性を損なうので禁止する」と書かれているのだが、実際には再委託・再再委託が横行していて責任の所在が曖昧になっているようである。

今回のケースで言えば元請けの人たちはコンピュータシステムについてよくわかっていないかもしれない。おそらく経産省や総務省などの官僚もコンピュータシステムの専門家ではないだろう。彼らが「こういう仕事をするためにはこれくらいの工数が必要ですね」ということを設計する。これを要件定義などという。

おそらく、この要件定義の際に行政システムの専門家などが入れば「こういうことができますよ」という提案ができたはずだがこのセッティングではおそらく無理だろう。だから野党は直接「作った人」に話を聞かなければならない。安倍総理はおそらく問題を把握していないしするつもりもない。だから総理を追求しても無意味なのだ。

さらに中長期的には、多重請け負い構造に二つの成長阻害要因があるということを追求すべきだろう。だがこんなことは後になってやればいい。

  • 実際に手を動かしている人に余力が生まれないのでスキルアップができない
  • 仕様を決めている人が古いままなので新しいアイディアが生かせない

以前、独立行政特区について調べた時に、新しくて派手そうなワードをたくさん並べてよくわかったようなわからないようなプレゼンを作る過程を学習した。プレゼンレベルでは派手で新しい言葉を並べるのだが実施段階ではこうしたアイディアは排除される仕組みになっている。

日本を成長軌道に乗せるという意味では極めて重要な問題だが、とりあえずは明日のお金である。これは問題だけ認識してあとで精査すればいい。バックグラウンドは極めて簡単である。

日本産業は多重下請け構造を持っている。製造業は比較的決まったスキルセットを保持できるので下請け構造が出来ても1世代か2世代程度は下請け構造が維持できる。鉄鋼にせよ自動車にせよ下請けや協力会社が「城下町」と呼ばれる構造を作って成功してきた。城下町で技術が伝承されるのでそれなりに分厚い産業構造を作ることができたわけだ。

ところが日本はサービス産業へ転換した時にこの下請け構造を解体できなかった。サービス産業はその時々に必要なスキルが違っており技術革新も激しい。下請け構造が安定せず産業が砂漠化した。例えばITプログラマの質は産業の質を大きく向上させるはずだが、おそらく実際のITプログラマはスキルアップのために勉強をする時間など取れないはずだ。

日本の政治はこの製造業とサービス産業の切り替えがどういう意味を持っているのかということをうまくとらえることができていないのだろう。おそらく民主党の流れをくむ現在の立憲民主党がこの問題を「電通がずるい」とか「パソナの竹中平蔵は汚い」というところに着地させなければならないのは、おそらく彼ら自身がこの問題の本質がどこにあるのかということがよくわかっていないからである。

ただ、今与野党の適性を考えても何の意味もない。おそらく今重要なのは明日のお金を待っている大勢の人たちを救うことではないかと思う。もちろん、安倍政権に代わって自民党の誰かがやってくれても構わないわけだ。

Google Recommendation Advertisement