オーストラリア・中国・日本・アメリカ

岸田・甘利ラインで始まった新国際秩序について調べている。報道が出てくるのはしばらく先のことだろうが、意見を述べる前にそもそもわからないことが多い。特にわからないのがオーストラリアの存在である。今回はオーストラリアを中心に確認したい。




まず、前回までの流れをおさらいする。甘利派の議員が新国際秩序について安倍総理に質問した。ロイターは安倍総理がアメリカが東アジアで退潮する中で対中戦略を強化するために安倍総理が意欲を示したと解釈したようだ。

ところが、実際には新国際秩序は安倍後継を固めるために岸田・甘利ラインで研究され始めているようである。岸田・甘利ラインは自分たちが安倍後継政権であると世間に印象付けつつも必要があれば軌道修正を図ろうとしているのではないかと考えた。この二つの政治思想は実は分断されている。保守本流と保守傍流という全く異なる背景があるのだ。

それとは別にオーストラリアと日本が協調関係を模索しているというニュースがあった。オーストラリア軍駐留の際の法的条件を整備するために日豪地位協定のような協定を結ぼうとしているという。7月にも安倍総理とモリソン首相の間で協定が結ばれる。これについて調べてみるとなぜかスプートニクの記事が見つかった。日本のマスメディアはあまり興味を持っていないようだ。日本とオーストラリアは段階的に関係を強化してきている。おそらくは安倍総理のセキュリティダイヤモンド構想の一環なのだろう。

  • 2007年の安全保障協力に関する日豪共同宣言の調印
  • 2017年には相互ロジスティクスサポートに関する物品役務相互提供協定
  • 2018年には軍事情報の交換に関する情報保護協定

スプートニクは「対中戦略である」といっているのだが疑問もある。オーストラリアは中国との関係が良かったはずなのである。Nippon.comの2016年の記事はオーストラリアの対中国シフトを懸念している。だが、これが数年で転換することになる。2018年6月のロイターの記事が見つかった。

中国とオーストラリアの間にはFTAが結ばれ、ダーウィンの港が中国に租借された。ターンブル首相は親中派だった。ところが中国がオーストラリア政治に干渉するようになり警戒感がまし「外国からの干渉を防ぐ」ための法整備が行われたそうである。中国はそれに反発した。つまり、対中関係はお付き合いが始まってすぐに急速に悪化してしまったのだ。一緒に住み始めたら相手の嫌なところが目に付いたという感じかもしれない。

同じ時期の2018年5月にも豪中関係、急速な悪化という日経の記事が見つかった。こちらはもう少し詳細だ。ここにも野党政治家の中国絡みのスキャンダルがあったということが書かれている。中国からの資金援助を受けた野党政治家が南シナ海問題において中国寄りの質問をしていたという。この時点では「産業界は中国の恩恵を受けていてターンブル政権の転換を批判している」と書いている。

2016年にオーストラリアは中国に北部ダーウィンの港を99年貸し出した。オーストラリアには米軍も駐留しており「オバマ政権は顔に泥を塗られた」と産経新聞が書いている。つまり対米関係は悪化していた。2019年にはオーストラリアの地方は依然中国の投資を歓迎していて中央とは意識がずれていると同じく産経新聞が書いている。ターンブル首相は2018年に退任し現在はモリソン首相である。

さて、オーストラリア軍が日本に駐留するにあたってアメリカ軍の許可は必要ないのだろうかと思った。これは記憶違いだった。1951年に最初の日米安全保障協定が結ばれた時、この条約はアメリカが日本の領域を単独で利用できるというエクスクルーシブな条約だった。つまり、日本はアメリカの利権でありその他の軍隊が駐留する際にはアメリカの許可が必要だった。現在の条約では日本は自由主義陣営にとどまることとされているが、米国占有の条項はない。ゆえにおそらく中国軍(自由主義陣営ではない)は日本には駐留できないだろうが、オーストラリア軍は駐留してもいいということになる。

日本は中国がオーストラリアに進出するための通路になる。中国がオーストラリアを攻撃しようとした際に日本は抑止力になり得る。だが、日本は憲法上そのような動きを取ることはできない。ところが解釈を変えて「集団的自衛の枠組み」を採用し同盟国が攻撃されたら日本への攻撃とみなすとしてしまえばオーストラリアの防衛のために日本が動くことができるようになるだろう。おそらく憲法違反だが最高裁はこの手の問題からは顔を背け続けている。仮にそれが無理だとしても第一機動部隊としてオーストラリア防衛の最前線として日本の基地を使わせるというのはオーストラリアにとっては理にかなっている。

日本にはこれといった実利はなさそうだが、中国に対して「自分たちは米豪連合の一員なのだ」という主張はできる。これはアメリカが自国の防衛のために沖縄の基地を使いながら表向きは「日本の防衛のためにいるのですよ」と主張しているのと同じ理屈だ。

ただ、オーストラリアは中国・日本との間でバランスを取ろうとしており、中国・アメリカとの間でもバランスを取ろうとしている。つまり、我々が知っているような「中国と自由主義陣営」という固定的な同盟関係は成り立ちそうにない。つまり新国際秩序とは(表向きの表現は別として)固定しない関係の間でバランスをとるものになる可能性が高い。これからも関係者の話を総合しながら理解を深めていきたい。

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