コロナウイルスの政治的な意味

今回はいろいろ考えていて最終的には「それでもコロナがあるから」と思った。そう思った瞬間になんだかほっとした。つまりコロナウイルスがあることで我々は最後の一線を踏みとどまったと言えるのではないかと思う。




河井克行前法務大臣が逮捕された。しばらくワイドショーを見ていたのだがそれほどたいした騒ぎにはなっていないように思えた。「あれ?これはおかしいのでは」と思っていたのだが、しばらくして「チョグク前法務大臣が逮捕状が請求された時にはあんなに騒ぎになったのに」というTwitterのつぶやきを見つけた。

おそらくチョグク前法務大臣が騒ぎになったのは「韓国はうまくいっていない」ということで安心したい人が多いからだろう。どこか別の国で問題が起きているということがわかると「それに比べて日本はまだまだ大丈夫だ」と思える。

我々は核心的な問題についてはあえて触れなくなった。日本の政治はどこかうまくいっていないという気持ちはおそらく誰もが持っているだろう。だがマニフェストベースの選挙をやってもうまく行かず、自民党に代わる政権政党は育たず、力強い外交も経済の復活も成し遂げることはできなかった。もはや我々は日本の政治を直視することはできない。

野党支持者はおそらく自分たちが支持する政党に政策立案能力がないことに気がつきつつある。東京都知事選挙で対立候補がまとめられなかたことからそれは明白だろう。だが、我々はそれを直視しようとしない。バカだから気がつかないわけではない。おそらく直視した途端に無力感に打ちひしがれ全てが破綻すると思い込んでいる。そして、実際には目を背ければ背けるほど無力感は大きくなる。

実は我々が直視できないものがもう一つある。それがアメリカの存在である。どうやらトランプ大統領はかなりアテにならない大統領であるということがわかってきている。ところがこのことを正面から論評する人はほとんどいない。もちろんジョージ・フロイド事件をきっかけにした黒人暴動や抗議運動については知られている。

日本では逆に「ジョージ・フロイドの抗議運動をしている人たちは一体何を騒いでいるのか」とか「落とし所は何なのか」と考える人たちが増えてきているようだ。これが中国なら大きなニュースになる。我々はかなり選択的にニュースを選んでいるのだが、それに気がつかないふりをしている。不安だからだ。

アメリカではボルトン前大統領補佐官やドナルドトランプ大統領の姪であるマリートランプさんが暴露本を出版する予定である。おそらく今後トランプ大統領の資質に関する問題が語られることになるのだろうがそれはおそらくスルーされることになるだろう。その一方、NHKは「国籍不明の潜水艦が」というニュースをトップで流していた。中国に目を向けたいのである。

実際に中国の動きはエスカレートしているようだ。台湾海域に飛行機を飛ばし、インドとぶつかり、オーストラリアにはサイバー攻撃を仕掛けているようである。北朝鮮問題も手詰まりになっている。韓国はおそらく北朝鮮との対話に失敗した。北朝鮮当局が目指しているのは制裁の完全な撤回だが韓国はその期待に応えられなかった。北朝鮮が核兵器を放棄しない限り対話は再開できないだろう。

私たちは日本政府がまともな対応能力を持っているとも思っていないしアメリカのことも信頼していない。だが、一部では「ミサイル攻撃態勢を見直すなら先制攻撃もできるようにすべきなのだ」という論説が出始めている。こうした主張をする人はおそらく自分たちの論理が破綻しているということに気がついている。気がついているからこそ強硬にそう主張するのだろう。

おそらく「見たくないものを見ない」政治議論は今後ますます不機嫌なものになってしまうだろう。不安になればなるほど過激な行動への誘惑が高まる。これはかつて日本人が第二次世界大戦に突入した時に経験したのとまさに同じことである。

ここまで書いて「お先真っ暗だな」と思った。

我々が再び冷静にものを見るのは簡単である。見たくないものに再び目を向ければいい、ただそれだけなのだが、我々はそれができない。

ところが、パソコンの画面から離れて歩きながら考えていてふと気がついた。我々はコロナウイルスについても見て見ぬ振りをしようとしている。「あれは夜の街の特殊な人たちの病気なのだ」と思うことでなかったことにできると考えているのである。

だが、実際の統計はごまかせない。おそらく管理に失敗すればたちどころに病気が蔓延する。だが、逆にウイルスが管理できているということは我々がきちんと自分たちの社会を管理できているということなのである。

新型コロナウイルスは厄介なウイルスだ。だが、実際には成果が目に見えてごまかせないものがあることで我々はかなり救われているのだろうと思った。まさか自分がそんなことを考えるなどとは思いもしなかった。

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