手越祐也さんを取り巻くキラキラとした世界とある兆候

元ジャニーズ事務所の手越祐也さんが記者会見をした。ジャニーズ事務所を脱退してビジネスの世界でも活躍したいのだという。これをみてじわじわと違和感が湧いた。違和感の存在は日本に確かに存在するであろう上流階級の異質さである。彼らから見ると日本という国はまるでアフリカの遠い国に見えているのだろうなと思った。だが、考えているうちにこれは「アレと似ているな」と思った。




まず第一に感じた違和感は「手越さんというのはずいぶん立派な人なんだ」というプラスの違和感だった。「目を見て話をしないと大切なことは決められない」という。ジャニーズのタレントの割にはしっかりしたことを言うなと思った。

そしてその理由もわかった。お父さんがすでになくなっており一家を支えているのだそうだ。シングルマザーに育てられたという物語は彼の手がける「お弁当事業」にストーリーとして接続している。ハングリー精神があるのだろう。今時立派なことである。

よく考えてみれば新型コロナでテレワークが推奨される中「目を見て話さないと大切なことは決められない」などご立派なことを言えるのは選ばれた人たちだけである。彼らの境遇は一体何に支えられているのだろうか。

問題になった打ち合わせは医療従事者の人との打ち合わせということである。会合の場所は銀座の創作和食の店だそうだ。そして相手から「そういう場所に女性がいないのは失礼である」という申し出があり、だったら自分も女性を連れて行くといったそうである。

銀座・創作和食・美女同伴から浮かび上がってくるワードは一つしかない。バブルである。お金の使い道がわからない人たちが行き着いた贅沢なお金の使い道の典型なのだ。YouTuber・医療従事者が銀座で遊ぶという価値観は平成・令和の新しい成功物語なのであろう。

だが、この医療従事者というのはどんな人なのだろうか。新型コロナウイルスが蔓延しているのだからおそらく新型コロナ関連の(つまり病院の)人ではないだろう。当時は忙しさがピークで「援助がないとこのまま医療崩壊が起こる」とされていた時期である。そんな人に銀座の創作和食店を予約できるとは思えない。さらに、まともな医療従事者なら「そんな時期の食事」が感染拡大に影響しそうだということはわかりそうなものである。

もう一つの違和感は女性の扱いである。「堅苦しい話が出るかもしれない」と断りを入れたことになっているので、女性がビジネス関係の話に参加することはあるまい。彼女たちはお店に飾ってある絵画や高級スーツのようなものなのだろう。つまり飾りなのだ。女性をこのように「華」として扱うという文化は一般庶民のものではなくなっている。これもおそらくバブル崩壊を境に滅びた文化だ。

手越祐也さんは安倍昭恵さんとも懇意だ。手越さんは安倍昭恵さんの主催するお食事会にも出入りしている。日本の将来について語り合う人たちの意義ある集いだったのだそうである。考えてみればこれも新型コロナ禍の中で行われた。おそらく日本には新興バブルが起きているのだろう。総理夫人の安倍昭恵さんはその中心でキラキラと輝いている。

手越さんが引き連れていた高野隆弁護士というのがカルロス・ゴーン被告も担当したという有名弁護士なのだそうだ。巷では「こんな高額な弁護士が雇えるのか」と驚いた人もいるという。おそらくこの会見は高野さんをお披露目できた時点で成功している。見る人から見れば「高野さんのような方を雇える人がバックについているんだ」ということがわかるからである。手越さんはおそらくジャニーズ事務所よりももっと大きなバックボーンを手に入れたことになる。今の日本では芸能でコツコツ稼ぐより医療福祉の方が儲かるのかもしれない。正直羨ましいなと思った。

しかしながら、彼が手がけようとしているのは例えば「シングルマザー向けお弁当」の事業だったりする。さらに医療福祉分野は慢性的な人手不足にさらされている。最低賃金労働者を雇うかさもなければ外国から人を連れてきて働ける時期だけ日本にいてもらおうなどという構想まで出ているくらいである。日本の医療福祉は人々の不安と最低賃金近辺の労働力に支えられた産業であり、おそらく成長産業がある国では主流になりえない。それが主流になっているということはつまり日本から成長産業が消えたということだ。日本が黄昏の国になったという象徴なのである。

それでも、日本には政府以外のお金の使い手がいない上に、公共事業を止めろという人はいても医療福祉を止めろという人はいない。だから医療福祉には国から多額の金が入っているというのは約束された未来だということになる。投資としては正しい選択だ。

おそらくそういう事業に参入した目先が聞く事業家の人たちには銀座で女性を連れて目と目を見ながら会話をするという贅沢が許されるのだろう。

日本の上流階級は例えばITの代わりに医療福祉産業の上に乗っていていることがわかる。成長のない国にも上流階級があり「世間では新型コロナが流行っているんですね」「それはおかわいそうですこと」というような会話が繰り広げられている。タワーマンションから下界を眺めるような感覚なのではないだろうか。我々は頑張ったからここに居られる。下界にいるのはかわいそうな人達なのである。

他人の不幸や不安が前提になっている産業なのだからそれなりの臭気をまとうことになる。その意味では元アイドルという爽やかさはかなり使えるアセットになるのではないかと思う。そもそも自信がシングルマザーに育てられて一生懸命にアイドルをやっていたという前歴や「不要不急と言われていますが僕にとっては不要不急でした」という天然ボケも「どこか憎めない」とプラスの印象を与えるのではないだろうか。傲慢さはどこにも感じられない。そこが手越さんの魅力だ。

ただ、バブルはいつまでも続かない。1990年代のバブルは大蔵省の通達で一瞬にしてしぼんだと言われている。おそらく今回のバブルはもう始まっており、手越さんの活躍を通じてその羽振りの良さが喧伝されれば、それが呼び水となって多額の投資を呼び込むことになるだろう。

その過剰投資抑制の引き金を引くのが厚生労働省通達になるのかそれとも財務省通達になるのかはわからない。

Google Recommendation Advertisement