ブルガリアで大統領と首相が権力闘争を繰り広げる

本日はブルガリアの政治状況を見る。対決型に陥った二大政党制の悲劇のように思えるがそれは他の国の事情とは異なっているようだ。そしてこの問題はあながち日本と関係がないわけでもなさそうである。きっかけになったのはAFPの記事だが、読んでもなんのことだかさっぱりわからない。

  • ブルガリアで内閣総辞職を求めるデモがあった
  • きっかけは首相側の軍隊・検察が大統領府に乗り込んで側近を拘束したことらしい
  • 大統領は首相をたびたび批判してきた。

これを読んで「首相は大統領が任命するのでは?」と思った。どうやらそうではなさそうだ。




ボイコ・メトディエフ・ボリソフ首相はGERB(ヨーロッパ発展のためのブルガリア市民)という中道右派政党をを結成し2009年に議会で勝利した。途中市民の抗議運動をきっかけに退任するが再度首相となり現在まで首相の地位にある。日本でいうと民主党政権と安倍政権を合わせたくらいの任期になる。2013年(ボリソフ首相退任当時)の日経新聞の記事を見つけた。一度改革を試みたものの汚職が蔓延し社会主義体制で保護されなくなった貧困層と予備軍が5割もいるという悲惨な状態だったそうだ。だが結局また再選された。つまり首相サイドは日本でいう民主党のようなものだということになる。ただ元共産主義国なのでイデオロギーは180度反対である。そしてブルガリアでは自民党政権に当たる旧体制は議会運営に失敗したのだろう。

もともとブルガリアは共産党政権だが共産党がブルガリア社会党に改名し他の左派政党と組んで現在ではブルガリアのための連合を作っている。現在の大統領はルメン・ゲオルギエフ・ラデフである。元ブルガリア空軍の司令官だったそうだ。つまり、ブルガリアは大統領選挙では旧体制(日本でいうと自民党のようなもの)を選んだが議会掌握には失敗した。このため自民党と民主党が大統領と首相に分かれてにらみ合うような状態が続いている。二大政党制の失敗である。

そもそもブルガリアへの関心は日本ではほとんどないといってよい。人口700万人ほどの中進国であり経済的なインパクトがほとんどないからだろう。このためそもそもブルガリア関連のニュースがほとんどなかった。ではブルガリアは日本とつながりがまったくないのかと考えるとそうでもない。ここで出てくるのが中国だ。

ブルガリアに限らず旧ソ連の衛星国はソ連の庇護を失ってから多かれ少なかれ政治的な混乱を抱えているのだろう。おそらくブルガリアの例はその一つに過ぎない。経済成長してヨーロッパの他の国に追いつきたいという人たちがいる一方、競争から脱落する人も出てくる。揺れ動く気持ちがあるので旧体制の左派から大統領が出たり議会で右派が勝ったりするのだろう。選挙制度は比例代表制なので極端には揺れ動かないはずだがそれでもそうなってしまう。つまり、ブルガリアの選挙の結果は制度的二大政党制の帰結というよりは過去と未来に引き裂かれる国民の気持ちの表れと言って良いのかもしれない。

だが「過去の側」の大統領は「オリガルヒ(政治と緊密に結びついたロシアなどの財閥のこと)」と結びついていると首相を攻撃する。日本の左派が新自由主義を攻撃するのに似ている。小泉・竹中路線も財政健全化・自由主義路線だった。

こうしたところには「ひょっとして中国が出てくるのでは?」と考えたところ遠藤誉さんの記事が出てきた。つまり日本人はブルガリアには興味がないが中国いついて語る文脈ではブルガリアが登場するのだ。遠藤さんは「中国と戦い続ける」と宣言している人なのでこの辺りの経済進出には目を光らせているのだろう。

IMF、新専務理事にゲオルギエバ氏を正式選出 女性トップは2人目」には女性二人目という点に着目しているが、遠藤さんの手にかかると「中国が影響力を行使できるように親中国のブルガリア人をポストに据えた」ということになってしまう。

背景には欧米先進国主導体制のほころびがあるのだろう。経済的支配力が弱まっているのである。「金の切れ目が縁の切れ目」ということになる。ところが欧米先進国は依然「ワールドスタンダード」を中国に自分たちの価値観を押し付ける。そこで中国は「戦略的に」地域の拠点国(東アフリカのケニア・タンザニア・エチオピア・東欧の国々などなど)に資金援助をして自分たちの味方になってくれるブロックを作ろうとしているのだろう。これは「価値観を共有する国」と「価値観の押し付けに抵抗する国」の対立である。

現在この対立はWTOに及んでいる。中国とアフリカはアフリカから初の女性事務局長を出そうとしており「守旧派」の先進国との間に対立構造があるそうだ。日経新聞が「米中対立」という分析を書いているが、日本では韓国の候補のほうがニュースバリューが高いようである。

日本人は中国脅威論は大好きだが現実には全く興味がない。自分たちの勇ましさを誇示するのに利用してはいるが面倒な国際情勢については勉強したがらないのだろう。普通の日本人に中国観を聞くと一党独裁=悪の独裁=民衆の解放という図式を連想する人が少なくない。つまり悪の帝国が日本を狙っているという昭和のヒーロー物さながらの世界観で政治を語ろうとする人が意外と多いのだ。

その一方で現実的に中国が何を狙っているのかということに関心を持つ人はほとんどいない。実際には民主主義に疲れ果てて「暮らしが安定するなら民主主義でなくても構わない」と考えている国が少なくないのだ。おそらくブルガリアもそんな状態にある。そうした国に「価値観を共有する国々」というスローガンは響かない。そもそもそんなスローガンを持ち出されてうんざりしている国も多いのではないかと思う。

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