中国の核心的利益が世界とぶつかるのはなぜなのか

先日ある記事を読んでいて「尖閣諸島は中国の核心的利益である」というフレーズに疑問を持った。尖閣諸島に資源があるならわかるのだがそれほどの資源が発見されているわけではないからだ。漁場が重要だという話もあるのだが実は中国の漁師は尖閣諸島には行きたがらないという記事も読んだことがある。燃料代を考えるとペイしないというのだ。次第に「自分は何かを勘違いしているんだろうな」ということには気がついた。




ちなみに中国が最初にこのフレーズを使ったのは2013年4月26日なのだそうである。アメリカに説明するために使ったそうだ。

Wikipediaを見ると中国の核心的利益には次の項目が入っている。どれも中国の中心ではなく周辺で起きている。

  • 台湾問題
  • 一つの中国
  • チベット
  • 東トルキスタン(新疆ウイグル自治区)
  • 南シナ海
  • 尖閣諸島(東シナ海)

さらに最近ではこれに香港が加わったのだが、例えば内モンゴル自治区など入っていないところもあり不思議な気持ちになる。

これについてQuoraで質問したところ、この核心的利益とは”Core Interest”の訳語であるという回答がついた。つまり中核的関心事ということである。日本語と中国語は漢字を共有しているので英語由来の中国語を勝手に日本語で解釈したんだなということがわかった。

最初の疑問は解決した。つまり中国は利益という言葉で利権のことを言っているわけではない。だから中国が日本の資源を狙っているのだろうという憶測は成り立たない。相手の意図を読み違えると対応がちぐはぐになりかねない。

日本語の利益はベネフィットの意味で用いられる。つまり利権・権益である。つまり尖閣諸島にはなんらかの利権があり中国はそれを「狙っている」と思ってしまう。このことが共産党悪の帝国論にのって広がり、やがて日本にも中国が攻めてくるのではないかという見方につながる。

では中国の意図はどこにあるのか。おそらく彼らの関心事は一体感の保持である。共産党を中心とした中華人民共和国という一体感を持ったまとまりに「異物」が混入してくるのが怖いのだろう。だから核心的利益とは「中国が常にまとまっていること」だということがわかる。

香港が「中国の核心的利益」になったということは、つまり香港が中華世界に入り込んできているからなのだろう。だから、中国は民主主義的な異物を許容できなくなったのである。その意味では中国の核心的利益というのはその言葉とは裏腹に「中国の周縁問題」だ。

そう考えると、中国のいう核心的利益はそれを脅かす3つの異物に囲まれているということがわかる。正確に言えば中国は民主主義・欧米・民族独立運動に脅威を感じている。

  • 台湾と香港の民主主義
  • 東シナ海と南シナ海の安全保障問題
  • チベットと東トルキスタン(ウイグル人)という民族独立運動

潜在的に中国は「いつバラバラになるかわからない」という強い不安を抱えていることがわかる。自然国家的な側面が強い日本には「国がバラバラになる」という想像は働きにくい。その上恐怖心が反動で強面の態度に見えるのでことさら中国が怖い存在に見えてしまう。

全体観を喪失しかねないという恐怖はおそらくアメリカ人も抱えている。アメリカの製造業が衰退しつつある地域では、Make America Great Againというゆり戻し運動を引き起こした。さらに以前見たように「ハイル・ヒトラー」のハイルも全体性喪失の裏返しである。ドイツ語のHeilは英語のWholeと同根だ。全体性とか一体感という意味がある。もともと小さな領邦の集まりだったドイツはプロイセンの元で一つの塊になり急速に拡大した。これが第一次世界大戦で失敗し多額の賠償を抱える。ドイツ人の誇りを失った人たちはアドルフ・ヒトラーが唱える「再び全体性」をいうメッセージに惹きつけられて、ユダヤ人大量殺人という純化運動に突き進んでゆく。

もちろん中国がすぐさまナチスのようになると主張するつもりはないのだが、急速な拡大や衰退は全体性の喪失を招きかねず、近隣各国はその怯えに巻き込まれる危険性がある。日本は現在全体性について不安を抱えた日米に囲まれている。だからこそ、相手が暴走しないように現状を冷静に捉える必要がある。

Google Recommendation Advertisement