他国のいざこざはさっぱりわからない – ギリシャとトルコの領海争い

先日、管理している掲示板にギリシャとトルコの領海争いに関する記事がシェアされた。何回も読んでみたのだがさっぱり意味がわからなかった。特に問題なのは画像だった。出元がわからないのだ。国連とEUの絵がロゴが入っていて「イタリア・ギリシャEEZ合意」という英文が書いてある。検索してみると類似の違った地図がたくさん出てくる。オリジナルのものが改変されて出回っているようである。




他国の領土・領海争いてこう見えるんだなと思った。背景情報がわからないので一体なにが行われているのかがさっぱりわからない。さらに日本人はギリシャにもトルコにも取り立ててシンパシーは持たないだろうからどっちの肩を持つという見方もできない。だから「とにかく混乱している」という印象にしかならないのである。竹島や尖閣諸島に対しておそらく外国も同じように見ているに違いないと思った。

Greek City Timesのサイトから

ただわからないのも気持ちが悪いのでいろいろな記事を読んでみた。せっかく読んだので記事にまとめておこうと思う。

基本的には二つの背景事情がある。

  • トルコとギリシャは仲が悪い
  • キプロス沖(東側)にガス田が発見され、そのガスをどうにかしてヨーロッパに売りたい

2019年にキプロス沖にガス田が発見された。キプロスは南側だけが国際的に承認されていてEUにも入っているのだが北側にはトルコ系の未承認国家がある。南側だけが潤うのは許せないというのがトルコのポジションである。トルコは中東のイスラム圏だが下手にヨーロッパに意識が向いているので仲間に入れてもらえないという意識がある。キプロスとエジプトはエネルギー不足に悩んでおり他国の支援を得ながら自分たちの国に天然ガスを引っ張ってきたい。そこでエジプトはギリシャと組む事にしたのだろう。

海の利権を整理してパイプラインを作りたいギリシャは各国と領海の確定を進めている。イタリアとギリシャの間でEEZ合意がなされたのは2020年6月9日だそうだ。「長年の懸案」を解決して漁業権などで合意がなされたようだが詳細はわかっていない。おそらく元画像はこの時に作られたのだろう。EUと国連のマークが入っている。アラビア語のロゴやマークが入ったものは中東諸国がこのガス田に興味を持っている事の表れなのかもしれない。

ところがこの動きがトルコを刺激することになった。ギリシャはエジプトとの間でもEEZ確定合意をした。それが面白くないトルコはこれを妨害しようとして「自分たちの領海はギリシャがクレームをつけている範囲にも及んでいる」として南に大きく伸ばしてリビアと接続させた。そしてリビアの暫定政府(リビアには確定した政府はない)との間で合意してしまったのである。国際承認はされていないが当時国との間で「国際的に合意した」と言いたかったのだろう。

地図を見るとわかるのだがトルコがリビアとの間で領海を確定させると、これが壁になってパイプラインが伸ばせない。さらにキプロスとギリシャの間の通行を邪魔できるしエジプトとギリシャの間の合意も妨害ができる。キプロスをめぐって対立しているという背景はあるにせよ「ヨーロッパに入れてもらえないトルコ」のやっかみもあるのではないかと思う。なんらかの感情的な問題も考慮に入れないとトルコの執拗な妨害が理解できない。

基本的な背景を整理すると何が起こっているのかということがわかるのだが、途中経過だけ見せられると一体何のことを言っているのかがさっぱりわからない。ギリシャとイタリアのEEZ確定のニュースはほとんど日本語にはなっておらず、日本語記事を見ただけでは状況を知ることすらできない。

さらに状況はここからエスカレートしている。トルコはリビア暫定政府を支援するために派兵したりしているようである。エジプト・サウジアラビア・UAE・ロシアなどはこれにも反発しているという。ちなみにパイプラインの当時国はギリシャ・キプロス・イスラエルである。アメリカは本来ならEU側(つまりギリシャ側)につくべきだと思われるのだが、NATOの件がありトルコを切れない状況なのだと言っている。

本来なら地中海沿岸諸国の問題だが、アラブ対ユダヤ、アメリカ対ロシアなど様々な思惑が錯綜する。

こうしたニュースを状況を全く知らない人に説明するためには、まず背景になる情報を伝えた上で何が起きているのかを説明性なければならない。いきなり詳細なことだけを言われてもさっぱりわからないので「勝手にやってくれ」ということになってしまうだろう。自分たちの正当性だけを訴えても実はあまり意味がないのだ。

今回の件はまだガス田という経済的な問題が背景にあるのでわかりやすい図式と言えるのだが、最初から意地の問題だけでもめている竹島や相手国の意図がよくわからない尖閣諸島の問題を他国の人に説明するのはほとんど不可能だろうと思った。

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“他国のいざこざはさっぱりわからない – ギリシャとトルコの領海争い” への1件の返信

  1. おせっかいですが、私の理解を説明します。
    ①現在のギリシャ人は古代ギリシャ文化の直接の後継者ではないし、人種的にも同じとは言えない。
    ②しかし古代ギリシャの跡地の住人なのでヨーロッパ人と見なされかつ自分でもそう思っている。トルコ人は非ヨーロッパ人と見下している。
    ③然るに現在のギリシャ人とトルコ人は宗教以外区別が使えないが宗教と民族が一致しているわけでもない。
    https://ja.wikipedia.org/wiki/ギリシャ人#近代ギリシャ国家とギリシャ人
    ④要は同族嫌悪で激しく憎み合っている。上記の記事では触れられていないが、スミルナではギリシャ人の大虐殺があった。トルコが多民族包括の帝国から民族国家になった帰着の一つ。
    ⑤ギリシャは小国だがヨーロッパなので態度が大きい。ヨーロッパになりたいトルコの旧帝国としての自尊心を傷つける。
    ⑥トルコが怒るとヨーロッパがうちの子に何する!と怒り返すのでトルコはより傷つく。
    という感じです。
    今回のコラムの内容はこの一連の争いの中の一エピソードでしょう。

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