河野太郎の行政改革ショーは失敗する

河野太郎行革担当大臣が縦割り110番を開設したところ短い間に3000件のメールが殺到し窓口を一時的に閉じたそうだ。菅内閣は河野太郎大臣によって潰されるかもしれないなと思った。水戸黄門シンドロームのせいである。菅義偉総理大臣が水戸黄門であり、河野太郎大臣は助さん角さんのどちらかだろう。




水戸黄門シンドロームとは日本の庶民が感じている権力との偽りの一体感のことだ。日本人は自分たちが正しい人間であると感じている。当然、政府も正しくて良いものである。だが、自裁の政治は理想とは程遠い。その認知不協和を正すために「その間に代官がいて悪を働いている」と置くのだ。この悪を正してくれるのが水戸黄門なのである。庶民の万能感を満たし続けるためには水戸黄門は強くて正しくなければならない。

この水戸黄門シンドロームのおかげで日本人は官僚バッシングが大好きである。官僚は怠け者で悪事を働いていて私腹を肥やそうとしている。だから政権が時々この悪を懲らしめなければならない。

こうした政府の官僚バッシングは塩川正十郎の「離れですき焼き」の頃からあり、小泉内閣では政権の人気を支えた。塩川財務大臣は特別会計が無駄の温床であるという民主党議員の指摘を横取りする形で「特別会計改革」の必要を訴えた。それが結実したのが小泉総理の郵政民営化だった。無駄をなくすというよりは他派閥の権益潰しだったのではないかと言われている。刺客が立てられ多くの議員が自民党を追われた。だが、日本人はこのショーを熱狂的に支持した。日本人は水戸黄門が誰かを成敗してくれるのが好きなのである。

最初の安倍政権が失望されたのは安倍総理が郵政造反組を復帰させたからである。つまり、未踏校門ではなく代官の味方だと認識されてしまったのだ。

同じように民主党政権も水戸黄門シンドロームによって滅びた。民主党政権は自民党は悪代官であり公共事業は悪であるというレベルを貼った。これを正常化するのが自分たちの役割であると主張したのである。誰かを罰したくて仕方のない国民は熱狂的にこれを支持した。

ところが行政ショーだった事業仕分けからは期待した埋蔵金は出てこなかった。さらに八ッ場ダムを突然中止したことにより行政は大混乱に陥る。ここに(地震は民主党のせいではないが)東日本大震災が加わった。実際にはどうだったのかはわからないがマスコミは菅直人総理大臣がヒステリックに東京電力に乗り込んでいって状況を混乱させたと伝えている。民主党は水戸黄門になれなかった。

最後に野田佳彦総理大臣が財務省のいうことを聞いて消費税をあげるということを決めた。悪人顔の野田佳彦は代官の側に寝返ってしまったのである。

日本人は民主主義、特に国民主権を理解していない。だから、誰かが颯爽と問題を解決してくれることを期待している。これが日本人の水戸黄門幻想の背景にあるメンタリティなのだろう。水戸黄門がいない時には政治にはさほど関心を持たないが、いったん処刑が始まると喜んでそこに群がる。逆に水戸黄門だと思っていた人が実は弱くて能力がないということがわかると熱狂は容易に失望に変わってしまうのである。

おそらく、河野太郎大臣はこのボタンを押してしまった。こうなってしまうと河野太郎大臣は成果を出し続けなければならない。具体的な成果をあげるか、ショーとして官僚を吊るし上げ続けなければならなくなる。もともと既得権益を守る菅政権の臭み消しが行政改革ショーなのだからこれが失望されれば菅政権は終わる。菅総理の賢い点はこのショーを切り捨てられるようにした点にある。菅内閣が失敗したのではなく河野太郎が失敗したといえばいいのだ。

もちろんこうした行革がうまく行っているところもある。千葉市にも市長への手紙という通報制度があったのだがほぼ「行政のゴミ箱」として扱われていた。2009年に前の市長が汚職で逮捕されて新しい市長になった時にこの制度が見直されたようだ。鍵は制度的運用にある。

  • 通報制度は一つの案件だけを書くことになっている。
  • 通報制度の提案は出した人が希望すれば公開される。
  • 担当部局の電話番号がしっかり書いてあり責任の所在が明らかである。

通報制度が単なるパフォーマンスではなく後工程も含めて管理されているのが特徴である。要するに説明責任と透明性が鍵なのである。市職員を悪者にすることもできたのだろうが、おそらくそれでは千葉市は長期政権にはならなかっただろう。市長は市職員の助けなしにはやってゆけないからだ。

つまり、一概にこうした通報制度が否定されるべきではないとういうこともわかる。だがこの「丁寧に説明する」のが菅官房長官は苦手だった。さらに、河野太郎大臣は連休中に頑張って読むと言っている。スタッフを含めてレビューするという発想はないようだ。

幸いなことに日本人は細かい経緯は気にしない。ただ、ショーとして利用するとそれなりの揺り戻しを覚悟しなければならない。すぐに結果が出ないと失望感が広まるのも早い。テレビのようなものだと思えばおそらく猶予はワンクール(三ヶ月)くらいではないだろうか。

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