没落国家日本で、野党不在・国民無関心の国会が始まった

日曜討論を見て唖然とした。柴山元文部科学大臣が日本学術会議の問題において「軍民両用研究を妨害している」から排除したというような発言をしたのである。共産党の小池晃さんがここぞとばかりに「その理由づけこそが問題である」と言っていた。




政府が「総合的・俯瞰的に判断した」理由は明らかである。安倍政権下の政府は2017年に防衛省が学術界に資金提供できるような法律を作った。おそらく兵器開発は儲かると踏んだのだろう。

学術界はこれに反対し「戦争に協力はしない」というような声が多く上がった。安倍政権下で実務を取り仕切っていた菅官房長官はこれを苦々しく思っていたものと思われる。今回はその意趣返しをしたのだろう。いかにもスケールの小さな菅政権らしいやり方である。

だが、Twitter世論も含めてこの柴山発言には反応しなかった。

そもそも世論は学術界も評価していない。学術界も世論には大して働きかけてこなかった。

さらにこのところのTwitter世論は脳死状態に陥っている。誰かが立てたフレームにしか反応しなくなっている。この数年で日本の政治をめぐる言論は大きく変わってしまったと思う。誰も自分の頭で考えなくなってしまっているのだ。

立憲民主党も野党の中では一人勝ちになっていて、安住さんが「社会党も消えて立憲民主党の時代になった」と言って福島瑞穂さんを怒らせてしまったという。立民時代とは言っても一部にしか支持されない野党の中の話なのだが、村の中ではちょっとした王様気分なのだろう。

もはや誰も課題解決としての政治には関心を持っていない。抵抗しても所詮無駄だったという無力感が漂っている。ある意味リベラルは敗戦宣言なく敗戦してしまった。

それではなぜ自民党政権は軍事技術開発に力を入れたいのか。理由は二つあるだろう。

第一に自民党の成長戦略がことごとく外れている。軍事技術は国民の反発が大きくこれまで未開拓になっていた。つまり自民党は後がなくなっていて、あとは「軍事技術」くらいしか思いつかないのである。逆に妨害されているからこそ「この障害がなくなれば」という気分になっているのかもしれない。

2017年度の防衛省予算案に、大学などの研究機関を対象にした研究費制度の費用として、概算要求通りの110億円が盛り込まれた。武器輸出を進める自民党国防部会の提言に押され、今年度の6億円から大幅に増えた。日本学術会議で軍事と学術を巡り検討が続き、同省研究費制度への応募を禁じる大学も出る中、制度は着々と拡充している。

防衛省の研究助成費、6億円→110億円 来年度予算案

日本学術会議は「宇宙の謎を迫る国家プロジェクト」にも反対している。この記事を読むと学術研究費が削られる中で特定の計画だけが優遇されるのはずるいという嫉妬心があったことになっている。これが本当なのかはわからないのだが学者たちは怒っていて政府は学者を持て余しているということがわかる。もはや修復は不可能な状態なのである。お互いに歩み寄る気はなく、単に言いたいことを言い合っているだけという意味では与野党の対決と同じような構図だ。

実際には学術界の側の実力も落ちているのだろうし官民協力もうまく進まなくなっている。あまりにも仲間内だけで周りを固めてしまったために新しいアイディアが入ってこなくなっているのだろう。

実際には三菱重工を中心に国策として進められたジェット機開発が頓挫したりしている。つまり日本の技術開発力はとても落ち込んでいる。ジャパンディスプレイも中国に身売りするのではという話があったが中国は見向きもしなかった。2019年には経理担当幹部が5億7000万円を着服し自殺したとみられている。ただこの話には続報がない。結局資金の流れがよくわかっておらず着服したのかどうかがよくわからないのだ。とにかく、通産省指導で官民協力して世界に打ち勝つというのはもはや完全に過去の話になりつつある。

学術界も政治も経済もそれぞれ過疎化した村のようになりつつある。日本は過去の資産にしがみつきつつ黄昏を待つ国に堕落した。もう誰もなんとかなるとは思っておらず、これが無関心の基礎になっている。SNSでは政治への関心が高まっているように見える。だが、どうにもならないものに時間はかけたくない。あとはなるようになるだろうという気分が蔓延している。

次に中国に対する焦りがあるのだろう。中国は共産党専制であり憲法による軍事技術開発の制限などもない。そもそも人口が全く違っているので日本が中国に抜かれることは明らかである。

おそらく、多くの「物言わぬ多数派」も同じような気持ちでいるはずである。国力が目に見えて落ちてゆく中、日本はアジアの中でもっとも優れた国だと思い続けたい。また、これまで見下してきた中国には頭を下げたくないというような気持ちがあるのだろう。

だったらそれを表に出したほうがいいのではないかと思った。自民党を応援する人の中には中国や日本の共産党に関する蔑視感情と焦りなどが入り混じった感情がある。これを表に出して「日本政府は中国に対抗するために軍事技術開発に反対する日本学術会議を成敗します」くらいのことを言っても良いはずである。

NHKで勇ましい発言をした柴山さんの元には放送直後から中国に対抗して「力強い日本を作って欲しい、共産党には負けないで欲しい」とする要望が届いているようだ。いくつか柴山さんの方から反応しているものがある。ただ具体的に何をするのかはさっぱりわからない。

ただ、菅政権が日本の没落を直視することはなさそうだ。

国会の冒頭で力強く温室効果ガスの削減を唄った。声のトーンだけを聞いているとものすごく思い切ったことをするのではないかと思い調べてみたところ2050年までに目標を達成するのだという。事実上の先送りである。ただ首相の宣言によりグリーンビジネスには参入しやすくなる。また野党の批判もかわすことができる。もはや菅政権も自分たちが日本の進路を変えられるなどとは思っていないのであろう。ただ明日への生き残りだけが彼らの関心なのである。

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