「電話番号という見えない鎖」に縛られ続ける愚かな日本人

最近、巷で変なニュースが出回っている。格安携帯電話会社が広まらないのは乗り換えが面倒だからだというのである。これを解消するためには電話番号やメールアドレスの引き継ぎをスムーズにすべきだということになったようだ。




思い込みに支配された議論だと思う。

先日、スマホをNTTDoCoMoからLINEスマホに乗り換えた。LINEスマホの月額利用料金は1,300円である。iPhone6sは中古のものを10,000円で買ってきた。だがこの時点ではNTT DoCoMoは解約しなかった。半年運用して嫌だったらNTT DoCoMoを継続しようと思っていたからである。解約は店でやる必要がある。代理店のスタッフは電話機を取り上げようとしたが「義務ですか」と聞くと黙って下を向いた。もはや彼らにはやる気はない。日々の成績に追われる彼らにユーザー利便という言葉はないからである。もうNTT DoCoMoに義理立てする必要はない。電話機は今ワンセグチューナーとして利用している。

LINEの手続きはすぐに終わった。ネットで申し込むだけで店員と余計なやり取りをすることもなかった。解約の手続きは面倒かもしれないなとは思ったのだが、その心配はなかった。立派に電話として通用するからだ。お昼休みの12時につなぎにくくなるという声があるそうで、その時のためだけに接続しやすいキャリアを契約する人もでているそうである。

結局大した不具合はなかった。電話をあまり使わないせいもある。電話を使いたいなら10分間かけ放題プランなどを合わせてもよかった。結果的に電話番号は変わった。だが移行期間があったので電話番号を変えることに対しても問題は全く起こらなかった。半年もあれば「新しい番号も加わったから」と相手に伝えられるからである。当然ナンバーポータビリティの手数料も支払っていない。

携帯電話には色々な情報が乗っているのだがおそらく移行の手続きは今後必要なくなるだろうと思っている。iPhoneの情報は全てAppleIDに紐づいていてクラウド側で管理されているからである。電話番号が変わってもキャリアが変わってもAppleの電話さえ使っていればこの辺りはもう問題にならない。住所録も写真も入れ替えなくていい。

ついでに家族の電話もiPhone SE(初代)にしておいた。これは5,000円で見つけてきた。電池の持ちが良くないので携帯電話としては使いにくいのだが電池は5,000円で変えられるそうである。こちらには10分間かけ放題プランをつけた。2,300円程度だと思う。これもネットで申し込むと次の日にSIMカードが送られて来た。三大キャリアのようにしつこくセースルされることも店頭予約も必要はない。だから半日仕事などにはなりようがない。

既存の電話は残してある。2年縛りが来年の2月で終わるそうだ。電池の5,000円の出費が惜しいようだが新品でスマホを買うと最低でも20,000円くらいは支払わなければならないということをまだ認識していないようである。

ただ「もっといい携帯電話がほしい」と言うことになってもAppleであれば乗り換えてもらっても構わない。今だと最も安いAppleの電話はiPhone SEの第二世代で44,000円程度だったと思う。SIMを入れ替えてAppleIDを紐づければそれで移行操作は完了だ。

日本人は携帯電話は一人一台だという思い込みに縛られているせいで色々損をしていると思う。だから「乗り換える」と言う発想になってしまう。今までの慣れ親しんだ環境を全て捨てて新しい土地に移るのと同じだからそれは冒険だと思うだろう。でも現在のスマホは中古であればそれほど高くない。試してから乗り換えてもいいわけだ。半年くらいの時間を見て月々2,000円から2,500円くらい余計に支払う覚悟さえすれば実はそれほど面倒な作業にはならない。お試し気分でやればいいのである。

そう考えると武田総務大臣の発言の意図がよくわからなくなる。もしかしたら三大キャリアを守るための壮大な陰謀かもしれないとさえ思う。おそらく武田さんも総務省の役人も「携帯電話は一人一台である」という思い込みに縛られているのかもしれない。

キャリアの側もこの辺りのことがわかっているようでまずはサブブランドの大容量プランを値下げした。おそらく底辺の客だけ格安スマホに乗り換えてもらえばいいと思っているのだろう。あとは5Gをめぐる攻防である。実はこの辺りが議論になるべきなのだ。次世代の投資を誰がするのかという問題である。

iPhone12は「スマホは新しいのが出たら乗り換えなければならない」と思い込んでいる人たちに大人気のようだが、実は5G契約が必須になっている。これから5G投資を回収しなければならないので是が非でも囲い込みたいのだろう。NTT DoCoMoなどは4Gでも動くかもしれないが公式には検証しないという方針なのだそうだ。

おそらく三大キャリアは4Gの価格を維持したまま5G回線を開発するつもりだったのだろう。つまり情報に疎い人に説明なしで押し付けようとしているのである。

だが菅総理はこのスキームを知ってかしらずか壊しつつある。つまり次世代環境の開発は日本では起こりにくくなるだろう。5Gのスマホは明らかにLINEで十分事足りている日本のユーザーにはオーバースペックである。スマホもついにテレビの4K,8K競争と同じ道を辿り始めた。オーバースペックのまま巨大化が止められず恐竜のように死に絶える未来である。

もちろん国力を維持するために「国民総出で高い携帯電話料金を支払い続けるのだ」という一億総動員作戦があってもいい。ただおそらく巷の保守派の人もこと自分の携帯電話料金の事となればそんなことは言わないだろう。彼らが保守的な言動に出るのは他人に損を押し付けられる時だけだ

確かに家の電話が一家に一台だったころ複数の電話を持つのは贅沢だった。高い権利金を支払わなければならなかったからだ。だから高齢者を中心に電話番号と言うのは変わらないものだという信じ込みがある。だが時代は変わった。

現在では個人に到達するためには電話番号だけでなくメールアドレスLINEアカウントなど複数の手段がある。Appleの携帯電話にはAppleIDもありこれにメールアドレスが紐づいている。実は電話番号が変わることはそれほど大した問題ではない。

電話番号は変わって当たり前という常識が世間に浸透するにはどうすればいいのかと思ったのだが、ガソリンスタンドの例を思い出した。「セルフスタンドなど危なくて仕方がない」というのが世間の常識だったが、既存のスタンドがあまりにも色々なサービスを押し付けようとするので、気がつけばセルフが当たり前になってしまった。逆に政府が何もしない方が格安スマホの普及にはいいのかもしれない。また、スマホが高くても人々が払い続けているのはそれなりに余裕があるからなのかもしれない。必死になって探せば安いものはいくらでも見つかる。

いずれにせよ、携帯電話番号は今や見えない鎖となってユーザーを縛っている。このことに気が付いた人が一定数に達した時おそらくこの鎖は破られるであろう。だが、それは同時に次世代開発環境を誰も担わなくなるという未来である。テレビ受像機はその路線にハマった。今、携帯電話はそれを追随しつつある。反省しない日本人は同じところでなんどもなんども躓くのである。

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