資本主義はおそらく全てアメリカ的混乱を引き起こす

カリフォルニア州で面白い住民投票が行われた。UBERなどで働いているドライバーを労働者にするのか個人事業主として扱うのかという議論である。アメリカ合衆国にはUBER以外にもこういうタクシーの代替サービスがあるようだ。結果的に彼らは個人事業主として扱われることになったそうである。ロイター通信が伝えている。




カリフォルニア州はリベラルな土地柄で知られる。リベラルは人権を擁護し社会保障費の充実を目指す。またリベラルは自由な気風を重んじるので起業家が起業しやすいように規制は少なくしたい。

UBERはここに難しい問題を突きつけた。タクシーが許認可で保護されているのは過激な競争が起こるとドライバーの雇用条件が悪くなりまた悪質なサービスも増えるからだろう。透明化されたオンライン型のサービスはおそらく悪質性の問題は解決した。

だが、労働者の権利を守ろうとすればビジネスとしての旨味がなくなる。起業を促すためには政府の規制は少ない方がいい。また重すぎる社会保障費は起業や事業継続の足かせになる。だからフリーランサーは温存したかったのである。

カリフォルニアではドライバー保護のために最高裁判所がドライバーを従業員として扱うようにという決定を下した。8月のことである。だがビジネスモデルの根幹に関わると反発した事業者側が反発していた。この司法の決定を民意で覆そうというのが今回の住民投票である。

事業者側は郊外でサービスが受けられなくなりますよという広告を出したようである。YouTubeにこんな広告がある。タクシーをインデペンデントのドライバーに置き換えるLyftはこのようなキャンペーンをやっている。「提案が通れば郊外などでサービスが受けられなくなるだろう」と訴えた。タクシーが許認可制になっているのは過剰な競争からタクシードライバーを守るためだが、規制が脅威になると言っている。

配車アプリのウーバー、リフト、食品配送アプリのドアダッシュ、インスタカート、ポストメイツは、今回の住民投票に総額2億0500万ドル以上の資金を投入。同州史上で最も多額の資金が投入された住民投票となった。

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事業者にとって便利に使い倒せるフリーランスの存在価値は大きい。そのためには広告費も惜しくない。また車を持つのが当たり前だったアメリカにおそらく車を持てない層がでてきていることもわかる。アメリカは企業にとって有利になり貧しい住民がフリーランサーに依存するという貧困化が起きているのである。

ただUberやLyftはライドシェアは環境に優しいとカリフォルニア人のリベラルマインドに訴えかける言い方をしているようだ。これなら車を持つ余裕がないと言わなくてもすむ。非公式のライドシェアリングは古くから行われている。ライドシェアしながらあまり周りに誇れなかったような人たちも堂々とサービスを享受できるのである。

結局アメリカ経済を成長させるためには安い労働力が必要であるということがわかる。カリフォルニア州はこれまでも多くのヒスパニック系の労働者を雇用してきた。朝日新聞が伝えるところによるとアメリカの労働者の5%が不法移民なのだそうだ。その数は1100万人であり800万人が働いているという。農業など半数の作業者が不法移民という産業もあるそうだ。

カリフォルニア州が不法移民に寛容な政策を採ってきたのはおそらく人権だけが問題ではないのだろう。もし人権が問題なのであれば彼らに市民権を与えればいいことだ。結局社会保障費の枠組みから外れ権利意識も持たない労働者がいた方が都合がいいわけである。おそらくUBERなどの新しい産業は不法移民ではなくフリーランサーにこの役割の一部を引受けさせようとしている。そしてそれに依存するのはUberなどに通勤の足を頼らざるを得ない一般市民だ。

カリフォルニア州を国に見立てるとその経済力はドイツの次でイギリスの上である。現在、トランプ大統領がアメリカの政治をめちゃくちゃにしているようにみえるのでカリフォルニアはアメリカ合衆国から離脱した方がいいのではないかと思う人も多い。カリフォルニアは優等生で環境にも人権にも優しいリベラルでラストベルトに足を引っ張られたくないのだ。

だが実際にはアメリカ中にいることで良い影響を受けている。また、カリフォルニア州だけでなくアメリカ経済は個人事業主や不法移民といった「枠外」の人たちによって支えられている。リベラルなどといっていられない人も大勢いるのである。

たとえカリフォルニア州がアメリカ合衆国を離脱してもこうした枠外の人たちは残ることになる。さらにカリフォルニア州はヒスパニック系の住人も多くか抱えており人種問題とも無縁ではない。おそらくトランプ大統領が消え去ってもカリフォルニア州がアメリカから独立したとしても同じような問題がカリフォルニア州の中で起こることになるだろう。

豊かなカリフォルニアの事例から、資本主義は誰の犠牲の上に成り立っているということがわかる。

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