楽天モバイルはなぜ失敗したのか

今回は楽天モバイルがなぜ失敗したのかということを書く。結論から言うと現代の広告代理店の犠牲者になっているように思う。




先日、家電量販店に携帯電話を見にいった。テーマは「高齢者目線」である。

家電量販店では携帯電話端末の料金がわからなくなっている。各種割引が目立つ仕組みで直接比較をさせない仕組みになっているのである。さらに色々なタレントの顔写真が貼ってある。これをみて「ああ、このタレントさんはこのキャリアだったのか」と思った。テレビ番組を見ているとこれらがごちゃごちゃになっていて、最終的には携帯電話のどこかの会社のために誰かが「踊っている」ことしか印象に残らない。色々理屈はあるのだろうが、タレントを使った広告は全く役に立っていないと思う。単に広告代理店の売り上げが増えるだけだ。

家電量販店でもっとも煩わしいのが店頭販促員の存在だ。このために家電店を避けてアマゾンに流れている人は多いのではないだろうか。今回捕まったのは楽天モバイルだった。

楽天モバイルは比較的単純な料金設定になっている。20,000円くらいで端末(Sharpや富士通など国内メーカーもある)を買えばすぐに始められることになって。それはそれで魅力的なのだが楽天モバイルは外のキャリアを見ているとふらふらと近づいてきて「こちらの端末のROMは3ギガですがうちは4ギガですよ」などといってくる。情報を飽和させて決められないように攻撃してくるのだ。彼はマニュアル通りに喋っているのだろうが妨害効果しかない。

どうやら販促員の間でお客さんを回しあう紳士協定が結ばれているらしい。つまり担当を勝手に決めて囲い込もうとする。毎回違う担当がやってきて「公平を装いながら」も自分のところに誘導しようとする。その時よそのキャリアは絶対に攻めてこない。この時に情報を隠すのではなくたくさん与えて疲れさせる作戦をとるので結果的に家電量販店に通えば通うほどわけがわからなくなる。

これを回避するためにはレジに行って怒鳴ればいい。普段は客を回しあっている担当者が遠巻きに見守る中で家電量販店プロパーの社員が説明してくれる。プロパー社員はおそらくあまり能力がなく苦情係に飛ばされてきたよう人で何も説明できない。それを外から入っている担当者が遠巻きで眺めると言う仕組みになっているのだ。

おそらく大量広告で認知度をつけて店頭に誘導という流れを作ろうとしているのだが肝心の店頭では「集団サボタージュ」の仕組みが出来上がっている。本社のマーケティング社員がこれに気がつくことはないだろう。

どうしてこんなことになったのかをQuoraで聞いて見た。一人は広告代理店が高額の管理費を獲得するためにタレントをたくさん使いたがるからだろうといっていた。もう一人はハズキルーペを引き合いに出して同じようなメカニズムではないかと主張した。

確かにハズキルーペもたくさんのデータを出して相手の認知能力を疲れさせる手法を取っている。これを本能的にやっているのがすごいところである。最終的に相手が疲れたところで「ハズキルーペすごい」と言わせる。すると認知能力が麻痺した状態で「ハズキルーペすごいのかな?」と刷り込まれる。一種のサブリミナルである。

おそらく日本の広告がこう言う状態におちったのは社会が高齢化しているからだろう。認知能力が衰えた高齢者には認知攻撃が有効なのだ。

だが違いもある。ハズキルーペは買い切り商品でありさらにライバルがいない。携帯電話はそうではない。

第一に携帯電話は買い切り商品ではない。特に後発の楽天は自前回線につながらないという決定的な欠陥がある。auのローミングでしのいでいるそうだがこれが終わればかなり悲惨なことになるだろう。既存事業を買い取ったソフトバンクと違い楽天は自分で全部作らなければならない。Quoraで「楽天とソフトバンクの違い」を聞いたところこの点に着目する人がいた。ソフトバンクはもともと国鉄の通信網をもとに始まった会社が買収を繰り返して現在の状態になっている。あれはもとは税金なのだ。

次に現在ではいろいろな会社が同じようなことをいっている。ハズキルーペの広告が成り立つのはハズキルーペが一社しかないからである。認知が飽和している状態で話を聞いているのだから社名など残るはずもない。さらに店頭に行くと情報が足される。「もうこの人の言う通りでいいや」と思って決める人もいるだろうが、大抵の人は不快感しか残らず「今のままでいいや」と思うはずである。結局は大手キャリアが勝つ仕組みになってしまっているのだが、新規参入組はわざわざCM露出を増やしてこれに協力している。

楽天モバイルはおそらくユーザーが選択に疲れていると言うところには気が付いた。そのためプランは単純にして端末も買い切りにしたのだろう。ここまでは良かった。しかし本来は設備投資に注力しなければならない時期に情報飽和戦に巻き込まれてしまった。広告宣伝費を使い情報汚染に加担し店頭販売員まで駆使してユーザーの選択を妨害する。

では楽天モバイルはNTT DoCoMoのようなところで戦えばいいのか。おそらく設備がなく既存顧客を獲得していないと言う時点でこれは無理だろう。おそらく既存顧客は他のユーザーから相談を受けた時に自分のキャリアを勧めるわけでここから客を引き剥がすのは容易ではない。実は顧客もNTTDoCoMoなどの資産になっている。

おそらく楽天がやるべきことはまず設備投資だろう。次に10,000人くらいの高齢者をスポークスマンとして雇って新しい顧客層を作るべきだ。「楽天スマホ大学」を卒業した人たちをリクルータにすれば自然に広がって行くだろう。これはアムウェイなどが初めいまや日本全国で見られる手法である。健康食品や自然食品の店には暇を持て余した高齢者が押し寄せている。一度、都市近郊を視察してみるといい。

「ランクをつけて成績を競わせる」ようなことはしなくてもいい。賃金は必要だがあとは「生きがい」と「この人はスマホを知っている人だ」という名誉だけを与えれば十分に動いてくれるだろう。健康食品に見られるようなインフォマーシャルくらいはやってもいいかもしれないが家電店の販促員はなくしてもいい。彼らは役に立っていない。

ここまで書いていて、トランプ大統領がやったのはハズキルーペ式マーケティングだったんだなと感じた。トランプ大統領は飽和的に情報を出して政治的なメッセージを全て無効にし、その頭に「Good/Beautiful」などという単純な言葉を植え付けた。おそらく人は情報の選択に疲れると単純なソリューションを受け入れやすくなるのだろう。今でも信者がたくさんいる。だがあれもマスコミだけではなく集会が基本になっている。集団で生きがいを見つけた人たちが大勢いたに違いない。

携帯電話会社が失敗したのは全ての会社が「トランプ式マーケティング」の上っ面だけを展開しているからなのだろう。政治家には「民主主義はこの一線を越えたら終わり」という矜持があり結果的にトランプ大統領が成功する素地になっていた。だが携帯電話はみんなでそれをやっている。さらにトランプ大統領の集会がもたらす力は割と見逃されている。

退廃した日本の携帯市場のようなところは「なんでもアリ」になってしまうので業界全体として沈んで行くのだろう。結果的に新規参入組は10%程度のシェアしか取れていない。今のままでは菅総理がどんなに頑張っても広告代理店の単なるカモだろう。

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