非自発型ライトユーザー

前回はMen’s NON-NOのYouTubeチャンネルを見ながらライトユーザーについて考えた。ライトユーザーという言い方はちょっと違っているようにも思える。もう少し考えたい。




ここでいうライトユーザーとは、本当はそれに興味がないが「興味がない」とも言えないという人たちのことを指している。ファッションにはそれほど興味はないのだが毎日何かを着ないわけにもゆかない。その場合「最低限の努力で失敗しない」ことが重要になる。おそらく政治もそうだ。政治にはあまり興味もないが社会常識として最低限のことを知っていなければならない人は努力しないで政治について一通り語りたいと思うわけである。

背景にはおそらく社会的なプレッシャーがあるのだろう。日本社会は同調圧力が強く評価も減点方式である。

言いたいことはあるのだが専門的なことを言って突っ込まれるのを恐れた人が「私は政治の素人なのでわかりませんが」という言い訳を先に書いてくることがある。「プロの有権者」とか「プロの主権者」などいないので奇妙な話なのだが、深いことは考えたくないがバカにもされたくないという気持ちがあるのかもしれない。

背景には曖昧さもある。ファッションにしろ政治にしろ何が正しくて何が間違っているかというのは非常に曖昧でわかりにくい。実は何が正しいかという基準が人々の中にあるわけではなく空気によって決まる部分が大きい。

例えば総理大臣の解散権は憲法の曲解によって生まれている。設計上は議会への対抗措置であり内閣不信任決議の対抗策としてのみ許される。だがこれを知らない人は多く驚くほどいろいろな民間解釈がある。「総理大臣の専権事項」という解釈がなんとなくまかり通っている。

そもそもが曖昧なところに「とにかく一通りのことは知っていなくちゃ」ということになると非自発型のライトユーザーが生まれる。大抵、ライトユーザーはヘビーユーザーのいうことをおとなしく聞いている。日本人は特に「集団の空気に無条件に従う」という気持ちが強く思い切った発言ができないのだろう。

ライトユーザーというのはもともとゲームで使われた用語である。PlayStationなどのゲームコンソールはコアになりすぎてとてもついてゆけない。だがやはりゲームといえばコンソールでありスマホゲームは素人の暇つぶしとしか見なされてこなかった。ところが、このライトゲームが主流になるとコンソールゲームは「オタク趣味」として非主流化してしまう。さらに実はコンソールゲームもPCゲームから見れば「十分にライト」である。PCゲームをやるためには自分で高速のパソコンを組み立てる必要がある。ライトとヘビーの関係はこうして階層的になっている。

いったんメインユーザーのオタク化が起きると今度はそれを忌避したいという欲求も生まれる。最終的にライトが勝ちメインは過疎化するというのがおきまりのパターンだ。ヘビーユーザーがライトユーザーが持っているニーズを押しのけてしまうとライトユーザーは自分たちの理解に合わせて対象を再解釈してしまうのである。すると後継者がいなくなったヘビーユーザーの村はなくならないまでも縮小を始めるのである。

ライトユーザーはヘビーユーザーに追いつこうという気持ちはない。また数を頼んでヘビーユーザーを排除したりもしに。単に別のところに新しい村を作る。おそらくそのライトユーザーの中から新しいヘビーユーザーが生まれるとその他大勢はまた別のところに逃げるのだろう。欧米型のイノベーション理論の中にも破壊的イノベーションというコンセプトがある。おそらく破壊的イノベーションが起こる裏にもライトユーザーの存在があるのだろう。満たされない需要を持つライトユーザーのニーズを満たす製品やサービスが生まれるとそれが一気に古い製品やサービスを駆逐してしまうのである。

ヘビーユーザーが生き残るためには別のコンセプトが必要になりそうだ。例えばファンコミュニティを作って教祖やアイドルになるというのが一つの選択肢である。道を極める人がいるのだがそれをライトユーザーに押し付けるというようなことはしない。実際にコアになっているのは「所属欲求」なのだろう。

この所属欲求を利用した政治集団には例えば共産党・公明党・憲法9条擁護派などがある。がどれも老化してる。おそらく集団の内部は安定しているのだと思うが価値観の更新ができないのだろう。中には教祖がなくなることで潰れる集団もある。

ファッション雑誌にも同じような新陳代謝があり実はブランドも老化するようだ。ただしファッションブランドはカール・ラガーフェルドがシャネルを再構築したように新しい才能が現れてコミュニティ全体を再解釈するというようなことが起こるようである。ファッションの世界にはこうした再生請負人のような人がいるようだ。

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