安倍総理が議員運営員会での説明を終えた。「説明責任を果たした」と満足げだったようだがおそらくそう思っている人はあまり多くないと思う。修正した申告内容も把握していなかったようで最後まで周りが一生懸命に考えた「ボクが悪くないりゆう」を繰り返し述べていた。
安倍前総理の会見の全文を読むとわかることがある。
資金を一つのお財布にプールしていてそれを使っていたようのである。産経新聞の会見全文を読むと「いわば預金」と説明されている。
当該資金についてでありますが、真意につきましてはですね、私のいわば預金からおろしたものを、例えば食費、会合費、交通費、宿泊費、私的なものですね。私だけじゃなくて妻のものもそうなんですが、公租公課等も含めてそうした支出一般について事務所に請求書がまいります
産経新聞
例えて言えば「ボクたちのちょきんばこ」にいろんなお金を入れていたことになる。ものすごくずさんでいい加減な管理をしていたことになる。今回辞任した秘書は安倍晋太郎元外務大臣の若手応援団だったようだ。現在61才ということなので安倍晋太郎さんがなくなった1991年にはまだ20代だったことになる。中国新聞によると秘書の配川さんは高卒で農協に入ったそうだ。ほどなくして安倍晋太郎さんの秘書になったのだろう。会計など勉強していなくて当たり前である。おそらく政治倫理なども勉強していないのではないか。
配川さん中選挙区時代のカネまみれの選挙運動を「実地で学んだ」のだと思う。おそらくもっと専門知識のある秘書はいたのだろうが坊ちゃんである安倍晋三氏の元で番頭格に登り詰めてゆく。父親が若くしていなくなったことで抑えが効かなくなった若き安倍晋三先生がうるさい年配の秘書たちを遠ざけたということなのかもしれない。官邸でお気に入りの通産官僚らに囲まれていたところから地元事務所がどんな状態になっていたのかは何と無く想像できる気がした。
いずれにせよ、見つかった時点で説明して政治資金の修正をしておけば済んだはなしだ。NHKのニュースでは専門家が「この件だけ特別に秘書を立件する必要があったのか？」と言っていた。でもあまりにもおおごとになったので誰かに詰め腹を切らせるしかなくなった。汚い言い方ではあるが「自分のケツも拭けない」金持ちのボンボンが記者クラブと検察を巻きこんでケツを拭かせたことになる。その過程で安倍晋三さんはまた「ぼくたちの仲間」を切った。
安倍前総理は外交の天才と言われていた。マスコミも本や雑誌を売るために過剰にこうしたイメージを膨らませることに加担して来た。事務所の会計もまともに管理できない政治家さんと個人商店レベルの政治団体という「三流の政治風景」が「力強いリーダーシップを発揮した」ことになっていた茶番の８年間だった。
ただ、考えてみるとそれも仕方ないことなのかもしれない。日本にはマスコミ専攻がない。つまり学術的にマスメディアをバックアップする体制もコミュニティもないのである。たまたま会社に入った人がそれぞれの会社で教育を受けているだけだ。おそらく記事の書き方や取材の仕方は習うだろうが、政治倫理などの専門教育を受けていないであろうという点では配川元秘書と同じような状態なのだ。
だから彼らは、政権に近い検察関係者と賭け麻雀をして情報を融通してもらうことを「ジャーナリズム」と言っている。それを恥ずかしいとも見直すべきだとも思っていないようである。
安倍元総理は「宿題をやらなかった時に先生や母親にあんな顔をしたんだろうな」というような顔をして言い訳を繰り返してきた。思えばいつも周りから庇ってもらえる人生なのだろう。情けない元総理の説明責任という空虚な言葉を聞いていて、周りにいる彼らが守ったのは「ハリボテの一流国」というプライドだけなのかもしれないと感じた。背景にあるのは彼ら自身が依って立つ基盤の危うさである。
さらに検察が守ったものがある。これだけ「意識低い系」の事務所なのだから「僕らのお小遣い帳」に何が書かれているかわかったものではない。河井克行元法務大臣のケースでは期せずして農林水産大臣経験者の汚職事件が見つかってしまった。見つかったら調べないといけないのだが調べると官邸に睨まれる。
今回、検察は次のように説明しているそうである。
安倍氏側が本当に補填（ほてん）していたとみられる差額は707万円に上りますが担当副部長は「どのように補填していたか、また補填の原資については証拠の内容に関わるので回答は差し控えたい」と述べました。
安倍前首相公設第1秘書を略式命令 安倍氏は不起訴 東京地検
おそらくお金の流れは調べたのだろうがきっと見たくないと思ったのではないかと思った。掘ればいろいろでてくるのだろうが、おそらく検察は火中の栗を拾いたくなかったのであろう。あとは山口県の有権者とマスコミがどう判断するかなのかもしれない。