老害が作る日本の分断とアメリカの分断は何が異なるのか

先日、ワクチンについて書いていて「このワクチンは若年層ほど打たないのだろうな」と思った。単純に若者の方が被害に会う可能性が低いからである。

ところが高齢者は高齢者で「ワクチンさえできればなんとかなる」と考えている人と「とにかく怖い」という人がいるようだ。Amazonでもパスルオキシメータは品薄だそうだが「入手しようと考えたこともない人」と「とにかく揃えられるものは揃えなければ」と戦々恐々している人がいるに違いない。ついに買うのを控えてくれという記事(朝日新聞)まで出ているが「そんなことが起きているのか」と実感がわかない人もいるはずだ。

Amazonでは雨後の筍のように怪しい中国の出品者が増えているようである。検索するとレビュー実績がない製品が大量にヒットする。必要な人が買うのは構わないが価格だけでなく「どこから買うか」も慎重に選んでもらいたい。

2020年春先のマスク騒ぎを思い出すが「自己責任」はこういう混乱をもたらす。




確かにテレビの情報で変異種の話などを聞くと怖くなってくる。「なぜもっと報道しないのか?」とも思う。つまり怖くなれば怖くなるほどテレビの情報に踊らされることになる。ところがYouTubeを見ていても新型コロナの話はほとんど出てこない。おそらく若者ほど関心を持たずしたがってYouTubeではコロナはあまり語られないのだ。情報格差と分断が進んでいるが、この分断はまだわかりやすい。

ネットは好きな情報ばかりを見るというエコーチェインバーについて揶揄する人は多い。だが公平なはずのテレビではもっとひどいことが起きている。皆自分の聞きたい話しか聞いていないうえに「自分だけが助かりたい」と拙速な行動に出る人が増えるからだ。社会にあまり期待をしておらず貢献もしなかった世代が身勝手に反応するのである。

アメリカでも分断が進んでいる。アメリカでは働いていない男性の半数が鎮痛薬を処方してもらっているという。この薬害(鎮痛剤オピオイドの過剰処方が引き起こしたとされるオピオイド禍)で亡くなる人が増えているという。他にも黒人や女性などの困窮が進んでいるそうだ。つまり、アメリカではうまくいっている人とうまくいっていない人の二極化が進んでいる。

アメリカ議会は共和党が追加支出に抑制的であると言われている。このため、バイデン政権は最低賃金制度を導入してまで格差を縮小させようとしているという話を聞いた。これは課税や関税と同じ効果を持つ。つまり市場の効率化は抑制されおそらく海外への生産拠点移転などの副作用が出るはずだ。それでも格差を埋めなければならないほどアメリカは二極化が進んでいるという判断があり、政治が動き出そうとしている。

かなりしんどい分断を経験したアメリカだが、それでも社会で痛みを共有してそれを乗り越えようという動きがある。これが日本にはないのだ。日本では慢性的な断片化が起きている。

オリンピックを開催したり観光業を再開して地方経済を助けてほしいと考える観光業の人もいる一方で、中国への門戸を開くことが国家にとって自殺行為であると考える人もいる。なぜか「汚染された」外国といえば中国という思い込みがあり、それが実際に政治を動かす。断片化の原因はどちらかというと「ウイルスについてどう身構えるか」とか「中国などの外国を脅威と考えるか」といったエビデンスのない主観だ。

こうした分断を統一するのがおそらくは政治の役割なのだろうが日本にはそういう政治家はいない。忘年会に総理大臣を呼びつけたあの幹事長も、10万円は俺の金だから庶民にはやらんと言わんばかりのあの財務大臣も、国民の命より自分の考えた旅行推進策やオリンピックが重要なあの総理も、おそらく総括なき時代を生きてきたのだ。

戦後第一世代は「先のあの戦争とはなんだったのか」ということを総括しないまま「自己責任」で生き延びた。そのため危機に当たって価値観を共有しようという気持ちにならなかったのだろう。自分たちがそれぞれ勝手に持っている身勝手な価値観を「日本の伝統だ」と言い張り例えば夫婦別姓や女性の自立というような新しい価値観を拒んできた。だからまとめるリーダーも草の根で危機に対応しようと訴えるフォロワーも出てこない。

河野太郎や小池百合子といったパフォーマンス型政治家はその産物にすぎないのかもしれない。小池百合子東京都知事は他人事のようにオリンピックを眺めており、河野太郎ワクチン担当大臣は「自分がヒーローになれるのではないか」とだけ考えているようだ。だがおそらくうまくゆかなかった時のことは考えておらず、その時には「あいつが悪い」とか「これがないからできない」と言い出すだろう。シルバー民主主義を最適化した政治の典型的な姿である。

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